第443話 【作戦終了】今後の課題と目標
※そこそこご不浄な話題に触れます。
※お食事中の方はご注意願います。
※いや先に食事すませて。
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そんなこんなで、水遊びにバーベキューにおひるねに川魚の掴み取りに鬼ごっこに木登りにキャンプにと、たのしいひとときを過ごしてきたおれたちだったが……『たのしいひととき』とは往々にして、あっという間に過ぎ去ってしまうもので。
気持ちよく晴れた翌朝を山のなかで迎えた我々は……名残惜しさを感じながらも、いそいそと撤収の準備へと取り掛かっていた。
ひと晩を休憩小屋で過ごしてもらい、また渓流プールをはじめとする施設の実証を行ってみた結果。
……まぁ正直わかりきってたことだが、『非常にすばらしいものである』との評価を満場一致で下すこととなった。
特に高い評価を得たのは、やはりプールと川魚の掴み取りだろう。肉食系わうにゃう義姉妹とその尻を追っかけてたラニちゃんからは、特によろこびの声が寄せられている。
川魚が無かったとしても、プライベートで(しかも水着で)存分に大はしゃぎ出来る環境は、控えめに言って最高である。
また休憩小屋においても、寝袋で問題なく一夜を過ごせる程度の居住性が備わっていたようだ。
尤もおれと初芽ちゃんはテント泊だったので、
……ただひとつ。
唯一のデメリットというか難点というか、割と致命的な欠点に目を向けるとするならば。
「…………おトイレだよなぁ」
「そっすね…………オレらは最悪穴掘って大自然に帰ればいいっすけど」
「こればっかりはねぇ……ラニちゃん大変お世話になりました」
「なんのなんの。モチはモチヤだよ」
「むずかしいのしってるね」
さすがに、電気や上下水道などのインフラまでは引いていないので……お手洗いを利用する際には、ラニちゃんにおうちまで【門】を開いてもらう(もしくは大自然に帰る)しか無いわけだ。
電気はポータブル電源を持ち込めばいいし、上水もポリタンクで持ち込めばいいのだが……問題なのは、下水。
食材や食器を洗ったり、あるいはお手々を洗ったりする屋外用シンクの排水は、穴を掘って石を敷き詰めて自然浸透処理でいいだろうけど……おトイレともなると当然、話は大きく変わってくる。
おれやモリアキだけだったら、ピット式トイレや撹拌式コンポストトイレでも問題ないのだけど……そこはほら、花も恥じらう乙女も利用するのだと考えると、さすがにそれで済ませるわけにもいくまい。
においとか、清潔さとか、使いやすさとか……そのへんをどうにかしてあげたいところだ。
「わかめさま! おかたづけが完了致しました!」
「ありがとう
「……勿体無き御言葉。……恐悦至極に御座います」
「同じく。恐縮に御座います」
「また遊びに来てくださいね!」
「……敷地警邏は……任せて」
とてもすごいロケーションを整えてくれた『おにわ部』の一同に別れを告げ、おれたちは獣道を辿っておうちへと引き返していく。
とはいえ実際はラニちゃんの【門】にお世話になれば一瞬で帰れるし、事実おんなのこたちは
……まぁ徒歩数分だしな。
実際に歩いて、周囲を確認してみて再認識したのが……排水処理の難易度の高さだ。
小屋用に浄化槽を設置しようにも車が入れる道が無く、ならばオウチの浄化槽まで配管を引っ張ろうにも排水勾配が足りてない。
しかしながら清潔で美しく健やかな使用感を提供するためには、水洗式のお手洗いであることはほぼ必須条件。いわゆる『ぼっとん』なヤツなんてもってのほかだ。
というわけで、八方塞がり。
どうしようもないか……と諦めかけていたそのとき。
この世界の常識に囚われない知識人が、その本領を遺憾無く発揮し始めた。
「だったらさ、【門】繋ぐ魔法道具つくってみちゃおっか?」
「「は?」」
「要するにさ、うんうんを別のところに飛ばしちゃえばいいんだろ? オウチのおトイレのほうに【門】の出口を作って、そこにだけ繋がる【門】の入り口を小屋のおトイレに用意すれば……」
「そんなのできるの!? 【門】の魔法道具なんて……」
「一ヵ所だけで一方通行なら、魔法式もそんなに複雑じゃない。ただ魔力消費がそれなりに激しいけど……そこはほら、供給の目処が立ってるし」
「おれが魔力供給すればいいんだよね。オッケー任せ」
「いやいやいや! それよりももっといい方法があってだね! 今まではただ垂れ流して捨てていた『上質な魔力素材』をね! 動力源とすればいいわけであってだね!」
「えっ、なになになになに!? そんなすごい魔力素材見つかったの!?」
なるほど確かに、小屋からの排水をおうちの浄化槽に転送してしまうことができれば、問題点は一気に解決するだろう。
しかも魔法道具によって転送魔法が自動化できれば、おれたちが居なくてもおトイレを使うことが出来るわけで……つまりはお客さん(※ただし知人に限る)に使ってもらうことも出来るようになる……かもしれない。
それになにより、【
この日本においては、青色猫型ロボットでお馴染みの『どこへでも行けそうな
それもまあ、当然だろう。なにせヒトを転送できるほどの魔法道具が現実のものとなれば、もう満員電車ともオサラバだ。
人々は通勤に便利な場所に部屋を借りる必要も無くなるだろうし、首都圏への人口一極化もたちどころに解消できる。
他にも……急患を一瞬で集中治療質へ運ぶことができたり、僻地の集落に生活物資を安価で大量に送れたり、とれたての美味しい海産物を直接厨房へと届けることができたり……考えたらキリがない。
デメリットである『消費魔力が多い』という点も、その『上質な魔力素材』とやらがあれば賄えるのだという。
ラニの口ぶりからすると今までは捨てていたものらしいので、今後はちゃんと捨てずにとっとかなきゃならないだろう。『それを捨てるなんてとんでもない』ってやつだ。
「いやぁ…………とっとくのはさ、ボクはさすがにやめた方がいいと思うよ」
「えっ、なんで? もったいなくない? ……っていうか、その魔力素材っていったいなん」
「おしっこ」
「……………………ごめん、なんて?」
「だからね、おしっこ。より厳密に言うと、ノワかボクか……あと多分だけどミルちゃんの、身体から排出される何らかの体液」
「……………………」
「……魔法道具のために……おしっこ、溜めとく?」
「やだ!!! 絶対に嫌!!!」
オーケーわかった、この魔力素材の話は無かったことにしよう。決して飛躍させてはいけない話だ。
まあしかし、つまりはおれが
この作戦の鍵を握るのは、なんといっても【門】の魔法道具だ。
これに目をつけた動機が『お手洗い』というのが若干申し訳ないが、何はともあれ非常に有用であることは疑いがない。
魔力供給源が
研究してもらう価値……あるかもしれないな。
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