第442話 【納涼作戦】躍動する身体



 お昼寝から目覚めた霧衣きりえちゃんとなつめちゃん、そしてちょっとだけ素直になった朽羅くちらちゃんは……見てるこっちが『ほっこり』する程に、川魚の掴み取りを楽しんでくれたようだ。



 普段はヒトとして生活している彼女たちだが……やはりその血には獣としての本能を、僅かとはいえ秘めているのだろうか。

 水中を縦横無尽に逃げ回る川魚を追い掛け、飛び込み、潜り、手を伸ばし……水着に包まれたその身体をせいいっぱい躍動させ、獲物を捕らえんと暴れまわる。


 ばっしゃんばっしゃんと盛大に水しぶきを巻き上げ、弾けんばかりの笑顔を振り撒いている美少女たち。

 この場の撮影を一身に背負ったラニちゃんは、カメラの防水性能と本人の飛翔能力を余すところ無く発揮し、臨場感溢れる映像(と躍動感溢れる胸やおしり)を狙っている。



 ジュニアサイズの競泳水着を身に纏ったなつめちゃんと、黄色ストライプのビキニに包まれた朽羅くちらちゃんのは……まぁ、将来に期待といったところだけど。

 清涼感のある眩しい白ビキニに包まれた、われらが霧衣きりえおねえちゃんの慎ましやかなふくらみは……元気いっぱいはしゃぎまわる彼女の動きをしっかりと反映し、そこに確かな躍動感を感じさせていたのだ。





「…………いいな」


「あぁ…………いい」



 おれたちおじさん二人は水辺の岩に腰掛け、爪先でぱしゃぱしゃと水を蹴飛ばしながら……

 この素晴らしい光景を目に焼き付けようと、微笑を装いながらもガッツリ凝視していた。








 ……さてさて。


 普段は大人しいあの子たちとて、やっぱりたまには羽目を外して大暴れしたいみたいで。

 それに加えて……すばしっこさと体力に定評のある烏天狗三人娘が、今日はこうしてオフモードということもあって。




「晩ごはんまでには帰っておいでー」


「はいっ! 承知致して御座います!」


「見ておれ好色兎め。どちらが上が身体に教えて遣ろうぞ」


「んふぅぅッ! 望むところに御座いまする! 小生コレでも神々見カガミの韋駄天と呼ばれて居りましたゆえ!」


(すばしっこい、ってことやろうな……)


(逃げ足が早い、ってことっすよね……)




 この山林を縄張りとする烏天狗三人娘と一緒に、盛大な『おにごっこ』を繰り広げたり。




「カカカカ! これならば決して遅れは取らぬ。兎に木登りが務まるはずもあるまい」


「ぐぬぬぬ……! ずるいで御座いまする! 小生も高みよりご主人どのを見下みおろし……いえ、見下みくだしてみとう御座いまする!」


「ダイユウさんヤっちゃって下さい」


「……承知し申した。……では兎の御嬢様よ、失礼を」


「えっ?? あの、大雄ダイユウど、のヒャァァァァアァアァアアアァアァァ!!?」


「おぉ……一足跳びとはな。さすがは山の民よ」




 駆けずり回ってテンション上がってきたなつめちゃんと朽羅くちらちゃんが、木登り対決(?)に興じてみたり。




「わかめどの、わかめどの。なにか手伝いは無いのか? 好色兎よりも我輩のほうが『いいこ』だということを思い知らせてやらねばならぬ」


「ご、ご主人どの! 小生に! 可愛らしい小生になにとぞご慈悲を! 小生はご主人どのの庇護がなければ生きていけぬ、儚くか弱くも可愛らしい少女に御座いますれば……」


「……役立たずであることは否定せぬのか。なんとふてぶてしい」


「えっへへへぇー」




 ひととおり山遊びを堪能し終え、休憩小屋前の大屋根下にて休憩していたおれに可愛らしくじゃれついてきたり。

 はー……さいこうかな。




 それにしても、山歩き用の重装備があるわけでもなく……むしろ水遊び用の軽装備にもかかわらず、こんなにアクティブに活動できるとは。神使っこのフィジカル半端ねえ。

 それに……あまりにも元気いっぱいに跳び跳ねるものだから、パーカーの裾から水着のおしりがちらちらと覗いちゃってるんですよね。


 水着だってわかっちゃいるんだけど、ああやって裾から『チラ』されちゃうととってもドキドキしてしまうのは、これはもう『おとこのさが』というやつであって。

 もう……ほんとかわいい。すきだが。




 そんな元気いっぱいのうちのこたちも、あれだけ遊び回ればやっぱりおなかが空くらしく。

 天繰てぐりさんが夕食のために炭をくべ始めたタイミングで、遊び疲れた幼年組は再びの休憩タイムへと突入していた。




「わかめさま、お待たせ致しておりまする。『のーと』を持って参りました」


「ありがと霧衣きりえちゃん。……重ねてごめんだけど、晩ごはん、モリアキの手伝いお願いしていい?」


「はいっ! お任せくださいませ!」


かわいい、すきありがとうね


「……っ、…………えへへぇ」


(今心の声めっちゃ出てたけど?)


(えっ、まじ?)



 白くてすべすべのおみ足と、白くチラチラ覗くビキニのおしり。いつもと違う装いで顔を赤らめてはにかんでみせる、可愛らしいみんなのおねえさん。

 お料理の分野における最終兵器である彼女をモリアキ(カレー担当)と天繰てぐりさん(魚の処理と串打ち担当)のフォローに回し。

 一方のおれは……休憩小屋内のテーブルに『のーと』を広げてカメラゴップロをケーブルで繋ぎ、ラニちゃんの頑張りの成果を吸い出していく。




「電気引いてないから、あんまり長時間はできないけど……」


「どれくらいならできるの? この……ポータブル電源?」


「見た感じ電池の残りが八割くらいだから…………パソコンのみに用途絞って、十五時間くらいかな?」


「…………充分じゃない?」


「………………だよねぇ」




 電源の憂いも、実質無くなったことですので。

 頼りになる仲間たちが、楽しい夕食の準備を進めてくれている中……おれは局長としてのやるべきことへと取り組んでいった。




「ご主人どの、ご主人どの! これは! もしやこの愛らしい姿は小生に御座いまするか! わはぁー、んへぇー! さすが小生まれ持った容姿に胡座をかかず、立ち振舞いもまた庇護欲そそる可憐な佇まいに御座いまする!」


「わかめどの、わかめどの、我輩の姿はどうであるか。ヒトとは素肌を目にすれば興奮するのであろ。我輩とて『かわいい』と呼ばれた雌を摸倣した姿であるゆえ、ヒトは『かわいい』者の素肌を見たと在らば興奮を掻き立てられる筈よな」


「アッ!!! ハイ!!! まったくもってとても非常にかわいいです!!!」


「えへへー」「んふふー」




 くっっそかわいいが!?


 いや集中だ。全力で集中だ。

 がんばれおれ。がんばれ!



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