第440話 【納涼作戦】寂しがりやの安寧
おれの腰にしがみついていた
烏天狗三人娘のそれぞれ尻と胸と脚を盗み見していたおれの嗅覚が、突如漂ってきた煙の臭いを機敏に捉えたのだ。
「あっ! もうそんな時間!? ごめんおれも手伝う」
「いえいえ、大丈夫っすよ。もう切ってあるやつなんで、網に乗せて焼くだけですし」
「ばっかお前、おれも火遊びしてぇんだよわかれよもーおまえよー」
「あっ、はい」
水着の上からパーカーを羽織った初芽ちゃんと、ぴっちりウェットスーツ姿の
テーブルの上には人数分の取り皿と紙コップ、タレや各種ソフトドリンクのペットボトルが立ち並び……そして片隅にはクーラーボックスから取り出されたばっかりの、カット済みお肉のパックが、山のように。
牛に豚に鶏に、バラにロースにタンにハラミに、果ては腸詰めに至るまで。
明らかにおれたちが持ってきたものより豪華になっている肉の山に、自然な流れて視線が
「……手前の『
「待って、今買ってきたんですか? 今買ってきたんですか!?」
「……えぇ。……麓の、
「買ってきたんですか!?
「……えぇ、まぁ」
「まぁまぁまぁ……オレらみたいに肌出てないですし」
「そりゃあ……そうだけど…………まぁいっか。ありがとうございます、
「……恐縮に御座います」
麓の……温泉街のお肉やさんには、近いうちにおわびとお礼とご挨拶にお伺いするとして。
とりあえずは、ひるのうたげだ。みんな大好きばーべきゅーだ。ボリューム満点になったお肉の山を攻略すべく、炭に火を移さなければならない。
「ほらほら兎のお嬢様、ちゃーんと目ぇ開けないと。岩ゴッツンコしちゃいますよー」
「……成長が見られない。白狗のお嬢様は別格として……猫のお嬢様のほうが、有望」
「言ってやるな
「ふぐゥゥゥゥゥ……!」
とりあえずコンロひとつ目は、初芽ちゃんたちのおかげで炭に火が移りつつあるようだ。結構なお手前で。
断りを入れてこの火種をひとつ拝借して、おれはふたつ目のコンロの火起こしに取りかかる。
火種の上に炭を乗せて、空気の通り道を考えながら
コンロ部分に限定して、【大気掌握】の魔法を行使。酸素濃度と空気の流れを理想的な形に整えてやれば……ほら、あっという間に炎が上がっていく。
炭に火が移ったならば、あとは火バサミで炭をならして
「……そろそろ呼ぶ?」
「そっすね。あと焼くだけですし」
「おっけー。みんなーごはんだよぉー!」
元気のよい歓声を上げ、ざばざばと水から上がった計六名の水着美少女にドキドキしながらも、おれはその興奮を隠すようにトングをカチカチカチカチ鳴らして平常心を心掛ける。
そうこうしてるうちに『のわめでぃあ』がわの三人娘はパーカーを羽織ってくれたので、(おみあしはバッチリ見えてるけど)幾らか破壊力は軽減できたので大丈夫そうだ。
ただ烏天狗三人娘は相変わらず、水も滴る旧スク美少女のままである。尻と乳と脚がとてもきけんですな。
まあ直視しなければ大丈夫だろう。直視したところで勃つモノも無いし大丈夫だろう。気にしたら敗けだ。
みんなに取り皿と割り箸を配り、テーブルの上にはラップを剥がしたお肉のトレイが並び、黄金ラベルの焼き肉のタレを紙ボウルに注ぎ……戦闘準備完了だ!
さあ……存分に喰らうがいい、皆の衆よ。
今こそ戦いのときである!!
「あねうえ、にくがまた焼けたぞ」
「うふふ。ありがとうございます、棗さま。一緒に頂きましょうか」
「んふー。是非もない。いただきます」
「はいっ。いただきます」
「兎のお嬢様は、何ていうか……本当にザコ……あっ、えっと…………残念ですねぇ」
「……ほんと。口だけ。……出来ないわけじゃ無いと思うんだけど」
「もう少し……謙虚さを身に付けた方が、他者への印象もマシになるかと。折角容姿は整って居りますに、立振舞いが
「んふゥゥゥゥゥ……ご指摘、有り難く存じまする……」
実際、とても美味しいのだろう。
……大丈夫かアレ。大丈夫だよな?
まあ軽く見た限りだが……マイナスの感情は抱いてなさそうだったので、大丈夫だろう。
あの涙も、単純におにく(とタレ)が泣くほど美味かったというのもあるのだろうが……どうやら『いっぱい構って貰えてる』『自分のことを考えて貰えてる』ことに対する、いわば感謝感激の念のあらわれのようだ。
「
「………………成程。確か此方に……御屋形様より預かり申した『あぼかど』なる果実が」
「んん!! 冗談に御座いまする! 可愛らしい冗談に御座いまする! 小生ちゃんと自分でおにくを用立ててご覧にいれますゆえ!」
まぁ、その『ありのまま』があまりにも目に余るようなら……そのときは
いたずらっ子の相手を重ねることで鍛えられた、このおれの『おしおき』技術……とくとご照覧あれ。
今宵のはぶらしは
(今なんかゾクッてしたんだけど)
(気のせいじゃない?)
(そっかぁ)
お仕置き仲間が増えるよ!
やったねラニちゃん!
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