第435話 【納涼計画】決戦用装備!!



 そんな気はしていた。どうせそんなことだろうと思った。やっぱラニちゃんはラニちゃんだった。


 しかしながら困ったことに、そういう需要というかご意見の数が、最近ちょっと無視できなさそうな程にまで増えてきてしまっているようで。……まぁ、渓流プール動画のせいだろうな。



 なんでもラニいわく『このままでは絶望の感情を抱いてしまう視聴者さんが出てきちゃうかもよ!?』とのことでして……なるほど、おれが撒いた種で悲しい気持ちになっちゃう視聴者さんがいるというのなら、このおれが責任とって鎮めてあげるべきなのだろう。

 ラニがそう言ってるんだから……【苗】の発芽メカニズムについておれより詳しいラニがそう声高に主張してるんだから、きっとそうなのだろう。そうに決まってる。もし適当なこと言ってるようなら下半身をメンソ◯ータムの壺に植えるだけだ。




 ……と、いうわけで。

 実際のとこ数字が狙えるのは間違い無いことなので、おれも覚悟を決めました。ようは健全に水着を披露すればいいわけだ。


 さしあたってはですね、現在わたくしたちはですね、総合スポーツ用品店『スポーツDEFO浪越南店』さんへとお邪魔しております。

 みんなでわいわいお買い物、たのしいね。若干三名ほど(見えない一名含む)は広々として品揃えも圧倒的な店内におくちあんぐりしてるけどね。かわいいね。




「それじゃ、オレはコンロとか見繕って来るんで……すんませんがギャルズのコーデお願いしますね、ミルさん」


「お任せ下さい。FAお代分はキチンと働かせて頂きますとも!」


「やー心強いっす。……現代の女子用衣料に関する常識って、ウチら致命的に欠落してるんすよね…………」


「でしょうね。若芽さんとか放っといたらスク水着てドヤってそうですし」


「ひどくない!?!!?」




 本日の最終目的は、まぁ水着を調達することなんだけど……どっちかっていうと、水着というよりは『水辺で遊ぶための衣類』と表現したほうが正しいかもしれない。

 というのも……いくら渓流プールで動画を撮るといったところで、そんな徹頭徹尾水着姿のおれたちの姿を映し続けるのは……なんか、その、ちょっと雰囲気になってしまいかねないからだ。


 なので動画を撮るにあたって、バックボーンとしてはあくまで『渓流あそび』を軸に据えていくつもりだ。家族連れでの水遊びというわけだな。じつに健全である。

 濡れても大丈夫な水着の上にラッシュガードやパーカーを着込み、いやらしく映らない程度に露出を下げた状態で水遊びや川遊びを楽しんだり、合間にはバーベキューとかファイアワークなんかを楽しんでみたり……そしてオマケ程度にパーカーを脱ぎ、水着での遊泳を披露してみたり。

 これくらいであれば、まだ健全だと言い張ることも出来るだろう。……いかがわしいイメージビデオにならずに済むだろう。



 なのでおれたち『ぎゃるず』の目的は、いかがわしくならないような水着、およびその上に着る水遊びウェアの調達だ。

 おれと霧衣きりえちゃんとなつめちゃんと朽羅くちらちゃん……当然みんながみんな水着なんて持って無いので、初めての水着選びとなるわけで。


 そんな大事な場面で助言を求められそうな人が居ないとなると、たぶんとっても大変なことになると考えられるので……保険として我らが『のわめでぃあ』特別顧問であり、アレが生えても全く揺るがないブッチギリの女子力を誇る、元女性の実在男の娘仮想配信者アンリアルキャスターミルク・イシェルさんに、お忙しい中ご協力いただいた次第でございます。わーぱちぱち。




「水着はぶっちゃけ皆さんの好みで選んでいいと思うんですけど、その上に着るものですね。自然の中で活動するってことを踏まえてちゃんと肌をガードしつつ、それでいて女の子らしい可愛らしさをアピールできて、それでいて脱ぎやすく直ぐに水遊び出来るような…………んんーー、このへんは道振ちふりさんのほうが詳しいかもなぁ」


「あ、あの……そこまで気合入れていただかなくても」


「そんな寒い時期でもないですし……やっぱりここはトップスだけ羽織るものプラスして、あえて脚は出しちゃってサンダルだけっていう作戦もアリなのでは? サラッとした肌触りの化繊アウターなら長袖でもそんなに暑くないでしょうし、せっかく皆さんの柔肌が堪能できるチャンスですもんね。アウターの丈を少し長めで……そうですね、オーバーサイズ気味にすればVラインも隠せるし、もしチラリしちゃっても水着なので致命打にはならないし。そうすればミニ丈と萌え袖でカワイイポイントもバッチリで」


「えっと、あの……ミルさん?」


「発育がいい子がやるとちょっと嫌味になっちゃいそうなコーデでも若芽さんたちなら皆小ちゃくて可愛らしいですし問題なさそうですね。上半身は重装備でダボッとしたボリュームを見せながら下半身は水着のみで生足をバッチリ見せてあげて上下のギャップとラフさがまたアウターの内側への期待も高めてくれそうですし。食事や休憩のときはアウター着込んでもらいながらたぶんあの子たちのことなので元気いっぱいはしゃぎ回ってくれちゃうでしょうし裾とか捲れ上がっちゃって下着に見える水着がチラチラのぞいてロリのおみあしが」


「ミルさん!? ちょっ……ミルさん!!?」


「あぁっ、すみません……つい欲望が」


「よくぼう!!?」


「あっ、いえ。気にしないで下さい」


「うん!?!!??」




 一部ほんのすこし怪しいところもあったけど……元・女性ならではの着眼点から、おれたち四人用のフルジップパーカー(ドライタッチ・UVカット)を提案してくれた。

 ようやく落ち着いてきた三人がそれぞれ好きな色のパーカーを選び、おれもかっこいいブルーを選択。

 軽く身体に当てる分にはサイズ感も大丈夫そうだったけど……やっぱり試着したほうが間違いないとのことなので、好みのカラーとサイズを手に取り『ぞろぞろ』と試着ブースへと移動していく。


 しかし……試着。そう、試着な。

 現代衣料を身に纏うおれとなつめちゃんと朽羅くちらちゃん(※体型がほぼ同じなつめちゃん(不満げ)から借りた)のはいいとして……問題は、例によってバッチリ和装でキメている(かわいい)霧衣きりえちゃんだ。

 たっぷりとした布地を蓄えている袖がある以上、パーカーに袖を通して試着することは出来ない。つまりは一旦お召し物を脱いでいただく必要があるわけだが……



「ぬ、ぬ、ぬっ、ぬっ……脱ぐのでございますか!? お、おう、おっ、おうちの! おうちのお外にございますよ!?」


「エッ、あっ、いえ、あの……べつに全部脱いでいただく必要は無くてですね、こちらのパーカーを試着するにあたって下着姿になっていただきまして」


「しっ、したぎ……!? わ、わ、わ、わかめさまっ、わたくし、したぎ、と、申されましても、あの、あのっ」



 おーっとぉそう来ましたかぁ! ハァーンなるほどね!!

 霧衣きりえちゃんはお風呂が絡むと羞恥心が軽率にブッ飛ぶ子だけど、普通に考えたらオウチ以外の場所で下着姿になるって相当な度胸を必要とすることなんだろうな。


 ましてや……彼女が常日頃から身に纏っているのは、きっちりと着付けられた和服である。そう簡単に脱いだり着たり出来るものではなさそうだし……って、そういえば!




「待って霧衣きりえちゃんまさかだけど……もしかして下着つけてないの!?」


((ぶふーーーーっ))


「えっと、えぇっと…………ぱ、『ぱんつ』、着けて……ございまする」


「…………あの、ブラ……あいや、えっと、その……お胸を支える下着のほうは?」


「………………襦袢、が……」


「オゥ」


「待ってください霧衣きりえさん……今度からブラ着けましょうか。和服用のブラも商品としてはあるハズなので……その辺は私の方からういちゃんに聞いときますんで…………胸は女の子にとって大切なとこなので、ちゃんと包んであげなきゃダメです……」


「えっ、あっ…………わ、わかりまして御座いまする……」


「若芽さんも、良いですね? 今度ういちゃ…………文郷ういかちゃんに時間取ってもらうので、霧衣ちゃんに和服ブラの着け方、ちゃんとお勉強させてあげてくださいね……」


「スマセン先生……ありがとうございます……」




 ……結局、しかたがないので身体に当てて大体の大きさをチェックして、それで確認を済ませることにした。気持ち大きめのサイズを選んでおけば、ピチパツで動きづらいなんてことにもならないだろう。

 そんなに何万円もするような商品でもないので……万が一サイズ感がダメな感じだったら、そのときは初芽ちゃんモリアキに着させるとして、改めてワンサイズ大きめのを買いに来ればいい。


 見た目は完璧な褐色エルフ少女だもんな、初芽ちゃんおじさんはな。存分にその身体を堪能さつえいさせてもらおうではないか。



 こうして憂いも断てたので、お買い物を続けよう。

 まだまだ買わなきゃいけないものはたくさん……って程でもないか、いくつかあるのだ。あまりモリアキを待たせないように、こっちもテキパキこなしていこうな。


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