第436話 【納涼計画】完全装備!!!



 さてさて。

 上着アウターを調達する時点でも、結構な大騒ぎをしてしまったわけだが……肝心なのはここから、むしろこっちが本番と言っても差し支えないだろう。


 ずばり……水着。

 とあるラニからの情報によると、なんでも最近われわれ『のわめでぃあ』に関する話題でよく上がるという、非常に注目を浴びている部分なのだとか。

 まぁ、わからなくは無いけど。ほんと好きだな、視聴者諸君よ。





「わかめどの、わかめどの。コレで良いのか? 言われた通り身に付けてみたのだが……ぱんつの上からで良かったのであろ?」


「ア゛ッ! がわいい!! そうだね、さすがに売り物だからね、下着着けたままじゃなきゃ試着はマズいみたい」


「ご、ッ……ご主人どの、ご主人どの! 小生の水着は如何にて御座いましょう! しっ、小生の愛らしさと魅力を、余すところなく誇示できているものと確信しておりまするが……」


「ン゛ンッ!! 待って、ふつうに可愛い……本当大人しくしてればめっちゃ可愛いよね朽羅くちらちゃん……ちょっと背伸びした感じのビキニがまた大胆な……」




 いち早く試着を終えて、おれの目の前へ我先にとお披露目しに来てくれた二人。

 ぱんつの上から水着を身に付けているので、やっぱり多少『ごわごわ』しているらしく、しきりに脚をもじもじと擦り合わせているようだが……そんないじらしい所作も相俟って、二人ともハチャメチャに可愛らしい。



 まだ女性としては未発達ながらもしなやかで整った身体に、水泳スクール用ワンピースタイプの水着を身につけたなつめちゃん。

 アスリートモデルの水着はVラインのカットがやや鋭めで、ダークブルーの水着の裾からイエローのぱんつが見えちゃってるけども……そこに目を瞑ったとしても、『すらっ』とした小さな身体と『きゅっ』と上がってるおしり、そして澄ましたお顔がとても誇らしげだ。


 一方こちらは、その(見た目だけは)愛らしい顔を『羞恥』で朱に染めた朽羅くちらちゃん。なつめちゃん同様に幼げな身体を包むのは……なんとびっくり布面積少なめのセパレートタイプ、俗にいう『ビキニ』ってやつだ。

 おへそが可愛らしいすべすべのおなかとくびれの乏しい腰回りを大胆に露出させた、随所にフリルがあしらわれたイエローストライプの可愛らしい水着。やっぱりちょっと恥ずかしい程度がのだろうか、羞恥の中には紛れもない『興奮』が見え隠れしている。




「ミルさん」


「なんでしょう若芽さん」


GJグッジョブです」


「恐縮です」




 女性用の水着試着室は、本来なら男子禁制らしい(まぁ当たり前か)のだが……ミルさんは気づいているのかいないのか澄ました顔で入ってきているので、まぁ細かいことは気にしないことにしよう。

 生まれもっての性別は女性だし、なんならおれなんかよりもずーっと女の子してるし……なにより見た目はどう見てもとびきり可愛い白ロリなのだ。美少女なのだ。つまりは何も問題ないのだ。へけ。



 そんな試着室の一角にて、美幼女二人の水着姿(試着)を堪能しているおれとミルさん。

 これら水着はミルさんが小さなレディ二人の要望を聞いて、それぞれにお薦めしてくれた水着らしく……うん、とっても似合ってますね。かわいいが。さすがミルさんいい仕事してますね、お目が高い。


 そうしてこうしてキャッキャしてるうちに、水着美少女で目の保養を行っていたおれたちの背後から、おずおずとカーテンが開かれる音が響き。



 大トリとして、われらが誇る最終てぇてぇカワイイ兵器が……満を持してご降臨あそばされた。





「「おほォーーーー!!」」


「わ……っ、わかめさまぁ……!!」




 ミルさんいわく本人のチョイスなのだという、気になる霧衣きりえちゃんのその水着は……なんとホルターネックタイプの白ビキニ。パレオもスカートもついていない、シンプルでオーソドックスな形状のものだ。

 いつぞや東京ベイエリアのリゾートホテルで披露してくれたときのものに近く、やっぱりとてもよく似合っている。サイズ感なんかもあのときの数値を呼び起こし、試着回数を重ねずともピッタリサイズのものを見繕うことができた。こっそりメモっててよかったすりーさいず。


 それにしても……あのときの堂々とした立ち振舞いとは、大きく異なる様子の霧衣ちゃん。やっぱり彼女の中で『おふろイコール安心できるところ』という図式が成立しているのだろう。

 入浴が絡んだあのときが、あくまで例外的対応だったのであり……それ以外ではこのように、それこそ『出先で着衣を脱いで下着姿になる』レベルの羞恥を感じちゃっているようだ。救いを求めるような視線の霧衣きりえちゃんめっちゃかわいいが。



「むぅぅぅぅ……小生も魅力的な肢体であると自負しておりまするが、こうしてまざまざと見せつけられてしまいますと……いやはや、これは確かに美しうございまする」


「うむ、やはりさすがはあねうえである。……むう、やはり惜しいことをした。我輩もあねうえのような身体つきの者を模して居れば、わかめどのにも存分に堪能して貰えたであろうに」


「ちょっと!?!? なにを!?!??」


「若芽さん何してるんですか!!? ナニさせてるんですか!?!!?」


「誤解です!! そのようなじじつはございません!!!」


「わかめ、さまぁ…………」


「ああっ!! ありがとうね霧衣きりえちゃん!! もう着替えちゃって大丈夫だよ!!」




 明らかに『ほっ』とした様子の霧衣きりえちゃんが着替えブースの中へと消え、そこへ『着付けを手伝おう』と競泳水着姿の美幼女が続き、更に『し、小生も!』と黄色ビキニの美幼女が続いていく。

 幸いなことに三人ともサイズは問題無さそうなので、先程の上着アウターと合わせてこれで決めてしまおう。



「いやぁー……いいもん見せてもらいましたわ」


「私もです。なんていうか……その……下品なんですが……フフ…………ぼ」


「はいストォーーップ!!!」




 あぶなげな会話が繰り広げられるおれたちの眼前で、霧衣きりえちゃんは無事に白ビキニを脱ぎ終えたようだ。床に落とされた水着がどう見ても下着にしか見えなくてドキドキしちゃったけども、これはさすがに仕方ないだろう。ぬぎたてってやつじゃん。

 あねうえへのご奉仕に目処がついた美幼女二人組(※ただし一緒にするとなつめちゃんがおこる)にも、そろそろ着替えるようにとの指示を出す。三人が着替え終わったらそれぞれに水着を持ってきてもらって、みんなでぞろぞろとお会計へ進めばいいわけだな。さすがに美少女のぬぎたて水着とか持たされちゃったらおれ鼻血千リットル吹いて三回転半ひねりしながら倒れる自信あるね!!


 というわけで、そろそろこちらがわの用事も終了だ。

 この後はとりあえず水着とアウターをお会計して、そのあとはモリアキに合流して、彼が選んでくれてるバーベキュー用具を一緒に吟味すれば……ほんじつのもくてきはすべてたっせいというわけだな!!




「ははは何を言ってるんですか若芽さんやだなあ」


「ははははは何がですかわたしは次の予定が迫ってますので急いでるんですが何でしょうかミルさん」


「ははははははは冗談はよしこちゃんですよ。もう一人水着選ばなきゃいけない美少女がいるじゃないですかやだなぁ」


「は…………はは、はははは…………ちょっとわたしおなかが腹痛で痛くなってきたので」


なつめちゃん確保!!」「にっ!!」


「ゥエエエエ嘘でしょ!? ちょっ、なつめちゃん!? 正気に戻って!! あとちゃんとホットパンツはいて!!」


「問題ない。ミルどのにはマグ……日頃より世話になっておるのでな、願いには応えねば」


「いまマグロっていった!? いまマグロっていった!! ちくしょう刺身で買収された!! おれのかわいいなつめちゃんが!! ウオオオオオン!!!」


「はいはい他のお客さんに迷惑なっちゃうからね~~観念して水着選びましょうね~~」





 ……その後。


 それぞれ自分の水着を選び終え、また普段の装いに戻った三人義姉妹によって……おれに似合う水着の品評会が始まったのだが。




 並み居る強豪をはね除け、栄冠を手にしたのは…………特別顧問であるミルさんが熱弁と共に推薦した、小中学校の授業なんかでよく用いられるタイプの水着。

 水中での安全性を高めるために目立ちやすい青紺色と白のラインが入れられ、伸縮性に富んだ化繊の最新紡織技術を余すところなく注ぎ込み、また昨今の情勢を鑑みて機能性にも配慮した逸品。



 それすなわち、学校指定スクール水着と呼称されるもの。


 ただし、おれの特異な来歴と心情を鑑みてくれたミルさんが推薦してくれたのは……上下セパレートタイプの新型であり、ボトムのほうはスパッツタイプのもの。シルエットだけで見れば、陸上競技用ユニフォームに見えなくもない。

 つまりは露出度もそれくらいで済むので……まぁ、うん。……それくらいなら、まぁ。



 女の子用の水着と聞いて、ほんとう一時はどうなることかと、たいへんなことになってしまうのではないかと思ったが…………思ってたよりもひどい水着じゃなくて、安心した。


 やっぱりミルさんはよき理解者だな。ありがたい。すきだが。







 しかしながら……たとえ下がスパッツタイプだったとしても、トップスと共に身体のラインがバッチリしっかり浮き出てしまうものなのだという、至極あたりまえなことをおれがやっと理解したのは……それから数日後、水遊び当日のことだった。


 やっぱ試着はたいせつだね。


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