第429話 【神前会談】野兎神使の悲劇
昨日と同じように
ただ昨日とは大きく異なっているのは……
反面、アラマツリさんは……うん、非常に疲れきったような表情だった。
「さて、まぁ……昨日ぶりなわけだけど。遠慮無く
「ありがとうございます。ちょーっと……いや、けっこう『イラッ』と来てたんで」
「そんなぁ!?」
先日のような
それはそうと、あの、お召し物も相変わらずラフな感じになっちゃってるんですけど……生粋の
……大丈夫ですか。そうですか。
「まぁ……わしに早く面見せに来なかったとか、ずいぶんと
「えっ、アッ、あっ……えっと」
「今後は、ちゃーんとわしとも
「…………恐縮です」
第一印象では、協力を取り付けることは難しいかと思われたヨミさまだったが……昨晩の『魔王』一派による侵攻作戦とそれに伴う
昨晩軽くお話を伺った限りでは、魔法道具関係の研究開発にかかわる人員をいくらか派遣してくれるらしい。
また奉納品や縁起物を製造する工場にも話を通してくれるらしいので、完成した魔法道具をある程度量産することも出来るだろう……とのこと。
防御用の結界装備は可能な限り増産しておきたいので、これは単純にとても助かる。
そして……それに加えて。
昨晩ちょっとした騒ぎが巻き起こる原因ともなったのが……次の、こっちだ。
「
「っ、…………承知、致しました」
「……まぁ、ぶっちゃけ昨晩もう出ちゃってるし。それに以前ならばいざ知らず、その首枷ある限りは……神域を出たところでわしとの縁が断たれるわけでもなし。……
「……はいっ。お言葉、確かに頂戴致しまする」
「というわけで、耳長の娘よ。
「っマ゜ぁ!?!???」
「そうですね……なんというか、なかなかに将来が楽しみな性癖だなぁ、と」
「なホぉあ!?!??」
ことの顛末を見守っていたアラマツリさんが疑問符を浮かべながら首を傾げるが……さすがにおれもそこまで落ちぶれてはいない。
彼には悪いが、
小さい子の儚い恋路を進んで邪魔して喜ぶほど、おれの性癖は歪んでいない。
ヨミさまの『嫁』という発言も、きっと喩えとか言葉のアヤとか……そういうアレソレに違いない。きっとそうだ。そうに決まってるし。
「……わしとしては、そなたが
「ちょア゛!!?」
「これ程の神力を秘めた
「どのへん!? ……じゃなくて!!!」
どストレートな『嫁』発言に、背後のなかよし義姉妹が若干剣呑な気配を帯びるが……しかしすぐに自制してくれたようだ。
おれのがんばりも、決して無駄じゃなかった。
「……
「い、一応は!? 一応とは如何なる見識に御座いまするか
「………………はぁ? お前が愛らしいのは見た目
「 、 」
(うわエッッグ……)
(あーかわいそうかわいい)
背景に『がーん』という効果音が見えてきそうな表情の
ヨミさまへと視線を向け、目で訴えると……さすが神様、それだけでおれの言いたいことを察してくれたようだ。
『
……まぁ、アラマツリさんも決して悪気があったわけじゃないのだろう。
ていうか多分ふつうに
「……手間を掛けるね、長耳の。……わしも立場上、下手な口出しは出来ないし。……思うところはあるだろうけど、
「…………大変なんですね、神様って」
「そうなんだよね。長耳のは余所者だからまだ良いけど……
「ですよね……さすがに、感情の持ち様を命令するのは……」
「解ってくれて、なにより。……まぁ、そなたらに手間は掛けさせないけど、少しだけ待って貰うし。
「!!?」
「今後なにかあれば、
「あっ……ありがとうございます。…………それでは、失礼します」
日本最大の神域を擁する
「さて、
「っ、…………はい」
「こういうことはね、本来ならわしもあまり言いたくは無いんだけど…………」
お説教されようとしているアラマツリさんを残し、おれたちはヨミさまのお部屋を後にした。
……こっちの様子も気になるが……おれたちが深入りするべきことじゃない。
今は……新しい同居人に寄り添い、親睦を深めることが先決だろう。
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