第423話 【深夜訪問】手のひらクルー
「えー…………っと? その、つまり……」
「クチラちゃんを……ノワに預けようと? クチラちゃん本人がノワのことを気に入るように、あえて襲撃に巻き込ませ、そしてノワに守らせた、ってこと?」
「だいたい合ってるね。まぁ『襲撃』とやらはどのみち避けられそうに無かったし? どうせ対処しなきゃならないなら、わしの計画に利用してしまおうっていう、ね。……実際のとこ、どう? かなり懐いてたみたいだし。もう
「ぅえ?
「うん、
「あぁー……」
詰所に到着して早々、
現在例のひときわ格式高い『ヨミさまのお部屋』に通されたのは、おれとラニと
数時間ぶりに再びお会いしたヨミさま――
彼女は、先刻の無愛想っぷりは何だったんだろうかと言いたくなるほどに……にこにこと上機嫌そうな
そのあまりにも見事な変わりっぷりに、おれもラニも
「わしはこれでも『
「あぁ、
「
「にュうッ!? わ、わ、わ、わかった! こころえた! ころろえ申した!」
((うわヨミさま目ェ怖っ!!))
こうして、ちゃーんとお話してくれるようになったヨミさまは……なるほどフツノさまが難色を示されていたように、少々難しい性根のお方のようだ。
あとなんていうか……怒ると目がこわい。
おかっぱに揃えた艶々の黒髪と、おそらくモリアキ的にストライクゾーンな感じの身体つきのヨミさま。
不真面目そうに寝っ転がっていた先程とは異なり、ちゃーんと上体を起こした着座姿勢で話を聞かせてくれているのだが……なにせお召し物のですね、何がとは言わないけど防御力がですね、とても緩やかと申しましょうか。
なにがとは申しませんが……とてもきれいな形をしております。モタマさまよりは控えめだろうか。
そんな感じの、ユルい雰囲気の神様かと思えば……自分が立てた計画――今回でいえば、
神様は基本的に自分本意で、良くも悪くも自分勝手な存在(※ただしモタマさまは除く)だと解ってはいたけど……ヨミさまの振舞いは、ともするとフツノさま以上に気ままなのかもしれない。
「さて、それで? わしの狙いは察してくれたと思ってるんだけど?」
「……
「ほう……そのこころは?」
「…………
「……ふぅん…………それで?」
「えっと……たぶん、モタマさまに預けた神力遠隔伝達の『首輪』かその複製品を、
「いいね。そこまで読めたなら……話は早い」
ただヨミさまが命令を下しただけでは、おそらく
もちろん立場上は従うしかないし、本人の意に反しておれのもとへと送られることになっただろうけど……しかしそれでは、色々と宜しくない。
慕っていたアラマツリさんから引き離されては、
アラマツリさんに折檻
叱れど、怒鳴れど、それらは彼女を
そんな非常に御し難い
……そういうことらしい。
「今頃……別室で
「ぇえぇ……ていうかむしろ、アラマツリさんにも目的話してなかったんですか……」
「…………え? っていうかそもそも、丁寧に説明する必要なんてないし。皆みたいに黙ってわしの言うこと聞いてればいいんだし。……だのに、あれは『なぜですか』とか『何を考えてますか』とか、根掘り葉掘りうるさかったし」
「うぅーん…………いやヨミちゃん、最初っから目的共有しとけば良かったと思うよ……」
「………………え、だって……わし神ぞ? わしの意見に逆らうとかありえなくない?」
「「ウゥーン」」
ある意味で神様らしい……ともするとフツノさま以上に高慢なところを垣間見せるヨミさま。
しかしながら、そんな他者を顧みない神様であっても……この国『日本』を長きにわたり守ってきた、まぎれもない最高神の一片なのであって。
「まぁ……わしの要求を呑んだ以上、身内と考えてやってもいいし。現状『神域』の外で自由に動ける柱は貴重だし、便利に使うためにも恩を売っておいて損はないし」
「えっ? あっ、えっと……どうも?」
「うん。……とりあえず、祭器を作るんでしょ?
「祭器……? あ、魔法道具みたいな?」
「人手が増えるのはシンプルに嬉しいね! セイセツさんも喜ぶよ! あのひといい歳だから……」
今までにお会いした神様以上に、高慢で自分勝手なところはあるけど……やっぱり異世界に侵略されつつあるこの国を心配してくれているというその一点では、力になってくれるということなのだろう。
「喜ばれるなら、悪い気はしないし。……とりあえず、わしが出せる『施し』は
「……今度は、追い返されませんよね?」
「身内相手なら、話は別だし。……
「よめ……ッ!?」「おほー!!」「ほう?」
腹の底の窺えない、掴みどころの無い神様ではあったけども……タイミングよく襲撃を仕掛けてきた
……まぁ、『嫁』発言は……この際あえて気にしないことにしても。
とりあえずは明日、改めてお会いするのが楽しみだ。
――――――――――――――――――――
「む!? いかん!!」
「な……何ですか? 今度は何事ですか?
「これはいかん……
「すみません、何を
「斯くなる上は……房中術に長ける者を
「若芽殿とは
「……………………」
「……………………」
「…………ならば、良いのか?」
「さぁ…………
「
「…………はぁ、左様に御座いますか。……それよりも
「ぐぬぬ」
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