第368話 【日曜大工】こころづよいめんばー!
ものごとに精通している、いわばプロと呼ばれるようなひとが手伝ってくれるだけで、こんなにも作業効率が跳ね上がるものなのだと……ちょっと恥ずかしながら、さすがにここまでとは想像していなかった。
おれの指示を正確に把握してくれ、なにをしようとしているのかを豊富な知識と経験から導き出し、取ってほしい行動を先回りして、指示を出す前に動いてくれている。
「……四枚目は、三枚目と直角で?」
「あっ、えーっと……はい。ちょうどカドの部分なので、ガッチリと」
「……承知致しました」
もちろんその手際も、大量に提げた工具類の扱い方も……なんというか、見事という他無い。
当たり前のように電動インパクトドライバーやクランプやハンマーを取りだし、立ち上げた壁パネルを端材で仮固定、しかるのちにものすごい速度でビス打ち固定していった。……速度だけじゃなく精度もヤッベェ。
「……御屋形様、壁枠組み上がりました」
「えっ!? もう!? ハッエ!!」
「……では、手前は一番から固定して参ります。立ち上げの際は御声掛け下さいませ」
「アッ、えっと……ハイ!」
そんな超人技術者ガールが手伝ってくれてるんだから、作業の方もものすごいペースで進んでいく。
あれよあれよという間に壁の骨組みが立ち上がっていき、立ち上がった壁どうしもガッチリ接合。『コ』の字型の囲い(の骨組)が完成した。
あとは梁を掛け、屋根を掛け、壁を張り、扉を付け……そして外壁材や屋根材等で仕上げをすれば、完成である。
この時点で、時刻はそろそろお昼。屋根を掛けるのはまた重労働になりそうなので、一旦ここまでにしておこう。
端材で壁を支えるアウトリガーや、壁と壁が動かないように固定する火打梁を仮設し、変形や破損がしなさそうな状態でいったん
いやぁ……
……それでですね、あの、
というか……本心を申しますと、『のわめでぃあ』おにわ部の名誉顧問として、今後もお力添えをいただくことは出来ませんでしょうか。
「……構いませぬ」
「エッ!? いいの!!?」
「……えぇ。……手前の腕が、御屋形様の御役に立てるので在れば」
「アッ、アッ……ありがとうございます!」
「キャラ強いもんなぁ、テグリちゃん」
ラニのいうとおり……色々と『濃い』メンツが揃ったおれたち『のわめでぃあ』の中でも、決して色褪せない強い個性を発揮できる
カメラには絶対映せない修行パートだけではなく、ちゃんとカメラに映せる(しかも許可ももらった!)DIYおたすけ要員として……その手腕を存分に振るっていただきたいものだ。
じゃあとりあえずは、また明日!
よろしくおねがいします!
「……其は構いませぬが……御屋形様」
「えっ? あっ、はい」
「……明日の午後は、体捌きの鍛練の予定に御座います。……お忘れなきよう」
「アッ!! は、ハイッ!! ももももちもちロンです!!」
(忘れてたなこれはな)
(ずびばぜんでぢだ)
……………………………………
はい、そんなわけでハチャメチャ美味しいお昼ごはん(おとうふのネギ味噌焼き定食)をいただき、時刻はもうすぐ十三時と三十分。
集合時間は十四時でお話しさせていただいているので、移動時間も鑑みてそろそろお迎えにお伺いしようと思う。
いやぁ……いくら『にじキャラ』さん事務所に直行できるようになっちゃったからって……日曜はだめでしょ、たぶん。
まあまあまあ、ねこちゃんたちに『かりかり』を振る舞いながらお散歩すれば、集合場所である『にじキャラ』さん事務所ビルなんてすぐだろう。
最近ほぼ毎日お世話になっている
「はい、にゃーにゃー。にゃーにゃ、はいはい、こんにちわね、にゃーにゃ」
(は? かわいいが?)
「はいはいはいよーしよしよし、ほら『かりかり』あるよ『かりかり』。にゃーにゃ、にゃんにゃー。んふふふふ……はぁ……かぁいい」
(おまえのほうが可愛いが?)
ラニの茶茶入れを意識して受け流しつつ、すっくと立ち上がって移動を開始する。
すると歩き始めたおれを追いかけるようにねこさんたちも移動を始め、つかずはなれずの距離を保ちながら着いてきてくれるみたいだ。
「にゃにゃー? 護衛してくれてるのかにゃあ? ありがとにゃー」
(待って、誰かいないの、やばいってこれ)
緑地公園内の遊歩道をぞろぞろと、ちょっとした大名行列のようにもなりつつあるおれたちだったが……しあわせな時間は無情にも終わりを告げる。
「いいこいいこ。また遊び来るからね。おつとめ頑張ってね。……はい『かりかり』。喧嘩しないでにゃー?」
(はぁ…………かわいかった。やばかった)
(そだねぇ、はー最高。ねこちゃんかわいいし……本当癒されるよねぇ)
(…………ウン、ソウダネ……)
ねこさんたちのおかげでやる気チャージも充分。歩道橋を渡り、横断歩道を渡り、一方通行の裏路地を進み、歩行者用の地下通路を通り、いつぞやうにさんとくろさんに連れてきてもらった百貨店の前を通り、世界的に有名なわんこの像の広場をかすめるように横切って……
はい、見えました。見えましたが。あの。
「……まぁ、これくらいなら……なんとか?」
(そうだね。ボクが思ってたよりは少なかったかな?)
「どんな恐ろしい予想立ててたのラニちゃん」
(そらモチロン最大人数よ)
本日の集合場所としてご連絡させていただいてた、『にじキャラ』事務所ビルのエントランス前。
そこには……一泊分のお泊まりセットとおぼしき荷物を携えた村崎うにさん、刀郷さん、ティーさま、ハデスさま……のほかに。
「ごめんホントゴメンのわっちゃん! ちょっと相談なんやけど!」
「おはようございます、うにさん。まぁこうなる予感はしてたので……大丈夫ですよ、これくらいなら」
……実はですね、昨日お約束させていただいたのは、前述の四名様なのですが……おふとんを合計十セットも提供して頂いたお礼というわけではないのですが、『キャパを越えない範囲でなら、もう何名かに声掛けてくださっても良いですよ』とお伝えしておいたんですね。
つまり、最大で十名様になることも覚悟していたのですが……
「んふふゥーおおきにぃー」
「あの……ごめんなさい、いきなりで」
「お世話になります!」
「すみません! お世話んなります!」
もう四名様を加えた、たいへん賑やかかつ見目麗しい美男美女の集団、合計八名の団体様をお迎えして。
一泊二日の超強行日程、滝音谷温泉の弾丸ツアーは……こうして幕を開けたのだった。
おれはこのとき……もっと彼らの装備に気を配っておくべきだった。
彼らのうちの何人かが、一泊二日の旅行にしてはちょっと過剰なサイズのカバンを用意していたということに。
お泊まりセットの他に……意味ありげな数台のノートパソコンと意味ありげな周辺機器を、ちゃっかり持ち込もうとしていたことに。
……この段階で、気づいておくべきだった。
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