第301話 【第四関門】ブルーとグリーン
白に近い淡いペールブルーのシャツと、ディープグリーンのロングスカート。シャツの丈はスカートから出されラフな雰囲気を醸し出しつつ、ライトベージュのロープベルトがアクセントを加えると共にお洒落さをプラス。
彩度は低めとはいえ、ブルーやグリーンなどの印象的なカラーを使っていながらも、アウターに羽織ったデニム地のジャケットのおかげで、総じて落ち着いた色合いのコーディネートだ。
おれのヘアカラーであるグリーンを採り入れて活かすため、スカートに同系色のディープグリーンを配しつつ、比較的近い色であるブルー系で上半身をコーディネート。ワンポイントで
現役の、若者である
……そんなの、嬉しいに決まっている。
「…………あー、クロ」
「まいど」
「これはグッジョブやわ」
「んふゥー。おおきに」
その出来映えのほどは……いつのまにかギャラリーとして集まっ(てしまっ)ていた店員さんや一般のお客さんの反応から見る限り、やはり間違い無いのだろう。
小さな背丈と奇抜な髪色なおれだったが、現代風のコーディネートのおかげで……なんということでしょう。小っちゃいのは相変わらずだけど、どこか大人っぽいお淑やかなお嬢さんふうの、なんとまあ愛らしい格好へと生まれ変わったのです!
その可愛らしさたるや……思わずスマホを取り出して撮りたくなってしまうほど、ってことなんだろうな。
高く評価して貰ってるって考えれば悪い気はしませんが……うん。無断で撮られるのはなぁ、宣伝になるとはいえなぁ……仕方ないとはいえなぁ。
「あのぉー、おねーさん。お店ん中で他人の撮影って……アレ大丈夫なん?」
「……はっ! す、すみません! お客様すみません、店内での無断撮影は禁止させて頂いております! 恐れ入りますが……」
……うん、惚れてまうわ。
そこまで表情に出してしまったわけじゃないと思うのだが……おれの表情から懸念していることを察し、早急に手を打ってくれた。
他ならぬ店員さんからの指摘によって、遠巻きにおれたちへとスマホカメラを向けていた一般の
お陰で……『木乃若芽ちゃん』の好感度を落とすことなく、こうして場を整えることができたわけだ。
やっぱり、進んでカントク役を引き受けてくれただけのことはある。視野の広さも面倒見の良さも、判断力も思いきりの良さも……伊達に有名
かっこいいぞ、うにさん。
「……うん、ええな。可愛い。はー可愛い。……なんなん? のわっちゃんファッションモデルでもやっとったん?」
「ぇえ……無いですよそんなの。うにさんだって緑髪ちんちくりんなファッションモデルとか聞いたこと無いでしょ」
「いやぁー……だって、なぁ? その割には何てぇーか……ポーズとか『撮られ慣れてる感』っていうか……まぁええか」
「あぁー…………」
前後左右の四面それぞれをぐるっと一周撮ってもらったり、調子にのっていろいろとポーズを決めてみたり……図らずも以前
とりあえず、わざわざ
……っとまぁ、おれのことはこのへんで良いだろう。
いよいよ大本命、
「それじゃあ……
「は、はいっ!」
先ほどのお店と同様、おれとお揃いでサイズ違いの一式コーディネート。グリーンとブルーをベースに置いた爽やかなイメージながら、彩度を落とすことで落ち着いた雰囲気に仕立てた逸品。
おれの髪色と合うように組み合わせてくれたカラーパターンだが、果たして
「「「おぉーー…………」」」
「え、えへへ……っ」
いや、普っ通にかわいいが。すきだが。
そもそもの話、うちの
「うち……今日来てよかったわ」
「そうやろぉ? ……いや、うちもここまでとは思わんかったけど……でもほら、クロもたまにはこうして【
「
「それ
今回の立役者おふたりの仲良さげなやり取りを聞きながら、可愛らしくも初々しくポーズを取る
というわけで、収録した映像もなかなかの量になったことだし、当初の目的は無事達成したことだし……そろそろ撮影を切り上げるタイミングだろう。
REINで一報入れてあるとはいえ、もともとは『ランチに行く』という体で飛び出してきたのだ。
……いや、そもそもはただの打ち合わせだったハズなんだけど……まぁ、いいか。
構想そのものは前々からあったのだが、図らずも突発的な撮影となってしまった、この収録。
かわいいが溢れる映像と、プロの手によるコーディネートと、
二人分の服を買うくらい……しめて六桁に届かんばかりの出費なんて、どうってことない。
えー……大田さん、お仕事ありませんか。
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