第270話 【共演終了】狂宴の気配
うにさんやミルさんが所属する配信者事務所『にじキャラ』には、年齢も性別も外見も容姿も、それどころか種族もサイズも多種多様な
同時期にデビューした
また、キャラクターとしても『近い』
たとえば……村崎うにさんやミルク・イシェルさんたち第Ⅳ期生は、水棲系生物がモチーフの【
チームマネージャー(のひとり)である八代さんには、おれもミーティング等で度々お世話になっているな。
また同様に、トールア・R・ティーリット様やハデス様たち、第Ⅰ期生で結成されるチームは【
こちらには『エルフの王女様』や『冥界の王』や、ほかにも『勇者』や『聖女』や『宮廷魔法使い』、果ては『邪龍』やら『上級悪魔』などなど……たいへん
一方で、
おれが申し出た『恩返し』の提案に対して、うにさんから要求された『
上記のうち【
―――
艶やかな黒髪と青銀色に煌めく瞳をもち、黒と銀の和服に身を包んだ……
例によって、おれはこれまでご一緒させてもらったことがないお方(※あたりまえ)だ。そもそもうにさんやミルさんとは異なり、くろさんはそこまで積極的にゲーム配信を行うほうでは無いのだという。
いや、べつにゲーム配信をやらないわけではないのだが……サンドボックスやクラフト系をまったりと取り組む、いわゆる『のんびり系』『ライトプレイヤー』といった感じの
その代わりに振るわれる武器、彼女の十八番とでも言えるものが……何を隠そう、『おうた配信』である。
ここは大手事務所である『にじキャラ』ならではの、事業所所属
彼女の属する『にじキャラ』さんは、この国の楽曲著作権管理団体と商用利用の正式契約を交わしているため、事業所所属の演者……まあ要するに
その歌声がですね……これがね、ほんっとすごいんですよ。
音程の安定感が半端なくて、揺さぶられるような複雑な音階でも全くブレなくて、入りも抜けもバチっとキマッてて、柔らかい声色から硬く重い声色まで表現の幅がものすっごく広くて……見るからに得意そうな演歌はもちろん、容姿とは裏腹にポップなアニソンもそつなく歌い上げ、果てはビブラートをふんだんに効かせたバラードや、歌詞全部が英語で綴られた洋楽ロックやヒップホップだって歌いこなす。
そのたぐいまれな歌唱力を買われ、同様に歌が得意な『にじキャラ』所属者でユニットを結成……今春メジャーデビューが予定されているほどの人気者だ。
こんな身体と境遇に陥った甲斐もあり、おうたがとても好きになったおれこと若芽ちゃんだが……くろちゃんの天より与えられし歌唱力は、付け焼き刃であるおれの
そんな『歌唱力のオバケ』であるくろさん――当然おれの憧れの
もちろん嬉しくもある反面……不安や萎縮が全く無いかと訊かれれば、言い切るのは少し難しい。
「…………ご迷惑じゃ、ないですか? 今お忙しいでしょう? くろさん……」
『いやぁー……いつも通り『のほほーん』ってしとるよ? ……だってまぁ、クロだし』
『昨日なんかも、夕方ぼくのとこにいきなり通話かかってきて。何事かと思ったら……んんっ。……『なぁ、にるにる。うち晩メシなに食ったらええと思う?』って。……知りませんよそんなの』
『あ~よく言う~。てか相変わらずめっちゃモノマネ
『…………明日本人に直接聴取を行います』
……まぁ、普段なにかとのんびりした言動が特徴のくろさんなのだが……身近な方々の口から飛び出てきたエピソードには、びっくりした反面『ちょっと
部外者が知り得ない身内の情報を、おれなんかに知らせてしまっても良いのだろうか、と疑問に思ったりもしたのだが……うにさんたちの声色から察するに、おれに『くろさんに対する抵抗感を払拭してほしい』という目的があってのことだろう。
また同時に『おれの口はそんなに軽くない、信用に値する人物だ』ということを認めてくれた、ということでもあり……それは率直にいって、とっても嬉しい。
ミルさんもうにさんも、そしてことの推移を見守っているマネージャー
その上で、今が大事な時期であるはずの
『まぁ、
「えっ!? いや……えっ!?」
「おぉーすごい。……え、それって『にじキャラ』さんが組織として?」
『まぁ……そうですね。……先程申しましたように、他チーム内でも若芽様を狙っている空気がありまして』
『ずばり言ってしまうと、ティー様と
『あとハデ
『そういうことです。ですのでまぁ、例によって……他チームに取られる前に、もう一丁
『そこでのわっちゃんが『何でも』とか言うからなぁ。こりゃぁお言葉に甘えるっきゃ無ぇなって思ったわけ』
『ちなみにうにさんが断られたら、ぼくも重ねて要求するつもりでした』
「…………ヒョエェェ」
そ、そんな……そんなことで、おれの『恩返し』権を使ってしまって良いのか。
……まぁ、ほかの『にじキャラ』
しかし実際のところ、この『
出自こそ
そんなテレビに出るような、話題沸騰の『芸能人』とおれが、光栄にも共演させて貰える。
わが『のわめでぃあ』の宣伝効果は……計り知れない。
「そ、そこまで……そこまで言われたら……」
『『『言われたら……?』』』
しかし……それが先方からの、おれが断りづらい『恩返し』に突け込んでまでも叶えたい『お願い』だというのなら。
おれが恩恵を教授する一方で……『にじキャラ』さんも、第Ⅳ期生【
おれが……何かの役に立てるというのなら。
「び、微力ながら、がんばりますので…………よろしくお願いしますッ!」
『ヨッシャァァァ!!』『おぉーーー』
『ッッし!! ……感謝します、若芽様!』
通話越しながら喜びを露にする『にじキャラ』お三方の反応を耳にして……やっぱり彼らの厚意と、そして好機を無駄にしないためにも、しっかりしなきゃなと気合が入る。
特に
まぁ、そんな感じで……思ってもみなかった大チャンスに、どきどきとわくわくが高まった
『ではそういうわけで、
「わかりました。えっと……来週の火から木くらいなら、いつでも大丈夫です」
『ありがとうございます。でしたら……そうですね。二十一日の火曜日に、お手数ですが弊社事務所へ……旅費はお支払い致しますので、
「えっ!?」
『おおー! ええやんええやん、あたしも行こ! ついでにミルもおいでや! 忘年会も新年会も来んかったやろ?』
『えっ!?!?』
『それではせっかくですし……
「『えっっ!?!?!?』」
『よっしゃ宴やな! テンション上がってきた! あたし個室借りれる店探しとくわ!』
「『ちょっ!!?!!』」
「(爆笑)」「(おろおろ)」
……いや、でも……うん……東京かぁ。正直楽しそうではあるよなぁ。
考え方によっては……おれにとってもミルさんにとっても、これはいい機会なのかもしれない……な。
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