第257話 【在宅勤務】のわめ会議



 少々突発的ではあったが……動画一本分の撮影を終わらせた、いいお天気の昼下がり。

 おれたち『のわめでぃあ』の三人はおうちに戻り、リビング(床座ベース)でくつろぎながら意見を交わしていた。

 …………そのうちおっきいソファと、テーブルとかもほしいな。リビングらしい家具そろえたい。



 というわけで(?)第二回目となる『のわめでぃあ』首脳陣みーてぃんぐだ。……まぁ首脳陣イコール演者なんだけど。

 


「のわめでぃあの企画案! かんがえよう!」


「おー!」


「お、おーっ!」




 ライブ配信だけでなく動画投稿を行うおれにとっては、視聴者さんたちを飽きさせてしまわないように、常におもしろい動画を供給し続ける必要がある。

 おれ一人ではさすがにネタ切れも早いだろうが、今やわがのわめでぃあには優秀な助手がふたり(モリアキも勝手に頭数に入れれば三人)もいるのだ。

 実際、先程撮影を終えた『一時間耐久環境音動画【おうちの裏の小川】編』なんかも、元々はラニの発案である。先駆者の環境音動画を拝見した限りでは、あれはあれでなかなか目の付けどころがすばらしいと思った。



「というわけで、ラニちゃん! 前回に引き続きいい案はありませんか!」


「うーん…………あんまり方向性が被ると良くないよね?」


「Oh……すばらしいプロ意識。名実ともに立派なアシスタントだわ」


「さすがでございます! シラタニ様!」


「でっしょー」



 現在製作が確定しているのは……視聴者さんからの投票で可決された、和服美少女着飾り計画『きりえクローゼット(with自爆ノワ)』がある。

 ほかにも定番企画として、新拠点の広々キッチンを活かしたお料理企画『若芽のおはなしクッキング』、道行くひとの昼食にご一緒するメシテロ企画『昼飯メシ、ご一緒してもイイですか?』、かわいい箱入り霧衣きりえちゃんにいろんな新体験をさせて愛でる『和装美少女の初体験』シリーズ……このあたりの定期的な投稿を計画している。

 そこに加えて、新作といえる環境音動画。こちらも何種類か展開が出来そうなので、第一段の反響次第で今後の展開も考えようと思う。


 ……っとまあ、このあたりが『現在の』のわめでぃあの武器になるわけだ。

 この並びに加える新たなる武器、つまりは『これからの』のわめでぃあの強みを考えていくのが、今回のミーティングの目的だ。



「これらと被ってないジャンル…………やっぱ旅行系?」


「りょ、りょこう!」


「おお……キリちゃんは旅行すき?」


「はいっ! いろんな景色を眺めてみとうございまする!」


「そだねぇー、せっかく良い移動拠点あるんだし」


「せっかくならあのクルマ活かしたいよね。タジミさんも喜ぶだろうし」


「そうだよねぇー……」




 実際に泊まってみてわかったが、あの移動拠点キャンピングカーの使い勝手はなかなかのものだった。……ていうかぶっちゃけ、非常に良い感じだ。


 おれと霧衣きりえちゃんは両方とも小柄なので、横に二人並んでもセカンドシートのベンチに収まるのだ。更に小柄で宙に浮けるラニに至っては、なおのこと。

 おれの使っているカメラゴップロマイクTR-07Xも小型で取り回しに優れる機材なので、キャンピングカー車内のリビングスペースでも問題なく撮影することができるわけだ。

 フリートーク部分を出先で撮ることも出来るので、撮影できる企画の幅も大いに広がるだろう。


 というわけで……方向性としては、全国各地へ足を伸ばしての旅番組。そこへおれたちならではのプラスアルファのセールスポイントを加えれば……視聴者さんたちに、いっぱい喜んでもらえる……とおもう!




「じゃあさ、じゃあさ? やっぱゴハンに注力すればウケると思うんだ、ボクは!」


「わっ、わたくしも! わたくしも……いろんなお料理を経験しとうございまする!」


「いやぁ……やっぱメシテロだよね、わかる。じゃあとりあえず方向性としては……旅先でおいしいお料理を堪能するっていう作戦で」



 首脳陣三名(一名モリアキ不在)の満場一致で、大まかな方向性は定まった。ホワイトボード代わりのA3用紙に大きく『りょこう』『うまいもん』と書きなぐり、ではつぎはどうやって特徴を付けていくかを考える。

 そう……ひといきに『おいしいごはん』とはいっても、全国各地の市区町村には、それこそ数えきれぬほどの飲食店、星の数(というと大袈裟かもしれないが)のお料理が存在するのだ。

 それら全てを取り上げることは、残念ながら出来なさそうなので……つまりはおれたちが訪れるお店・取り上げるお料理を、何らかの基準で選ばなければならない。


 その判断基準……取捨選択の基準を、どう設定すべきなのか。そこを詰めるため、ミーティングは更に熱を帯びていく。




「やっぱさ、詳しいヒトに聞くべきだって。そこのヒトがよく行くお店なら、つまりはめっちゃおいしいってことじゃん?」


「な、なるほど! 名案にございまする、シラタニ様!」


「アッ、えっと、あの…………ウーン」


「……?? 若芽様?」


「えっと……うん。そうね、わかる。わかるよ。…………わかるん、だけど……」





 少々雲行きが怪しくなってきたが、しかしどうしようもない。実際その手段がきわめて信頼性が高いというのは、おれも視聴しているときから感じていたことだ。


 旅先で、行く先々の現地にお住まいの方に、よく行くお店を教えてもらい……『せっかくここに来たなら、これを食べなさい』と教えてもらう企画。




「丸パクリは…………やっぱダメだよなぁぁ……」


「「………………???」」




 タイトルが似てる、とかじゃなく……そのまんまだもんな。

 さすがに……それはあかんか。どうにか別の手段を講じなければならないだろう。



 ……いや、めっちゃ良い企画なんだよなぁ、あれ。




――――――――――――――――――――




せーっかニュッピャー! せーっかくねー!

せーっかーくホホメニャホニャフー!


せーっかムップャー! せーっかくねー!

フニャヤヤポンメー! ワンダフォーデー!


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