第258話 【在宅勤務】続・のわめ会議
いや……実際のところ、非常にそそられる企画なのは間違いない。
みんなだいすきなグルメ、しかも地元で話題の人気店へとほぼ確実に辿り着けるとあれば、その土地の魅力を伝える大きな手助けとなるだろう。
しかし……非常に、非常に残念なことに。
その企画は既に……地上波テレビで大人気放送中なのだ。
「べつに良いんじゃないの? クイズ番組とかワイドショーとか、わりと似たり寄ったりじゃん」
「ンググ……そうかもしれないけど! でも『たぶん大丈夫』で実際大丈夫じゃなかったら…………たいへんなことになるし」
「?? え、そうなの?」
「そう、だと、おもう…………コンプライアンス? だか、放送倫理? だか……そういう企画案とかは、アイディアとして考えた人に権利があるから……あんまりパクるのは良くない、んじゃないかな。…………あとおれ、ヒムラさんに嫌われたくないし」
「んー? …………なるほどねぇ。きまじめ、っていうか」
「『まねっこ』は……良くない、のでございますね……」
「んぅ……その『まねっこ』でお金儲けしようとしてるなら、なおのこと……ね」
おれたちのこの活動も、いつ終わるとも知れない戦いなのだ。あまり波風を立てたくないし、波風が立ちそうな要因は極力排していきたいと考えている。特にテレビ業界が絡むと……えっと、色々と面倒なことになりそうなので。
正直なところ、今までに取り上げてきた企画あれこれも『危ない』ものがいくつかあった自覚は……ある。
企画タイトルも少々ピントをぼかした感じにして誤魔化しているので……だからこそ既存の番組を丸パクリしてしまいそうなこの企画に、今こうして二の足を踏んでいるわけだ。
「じゃあさ、じゃあさ? おすすめしてもらうモノを別のに変えれば良いんじゃない?」
「別のモノ……って?」
「いやぁ、たとえば……こっちの世界にもさ、見晴らしの良い崖とか、万病に効く薬草の群生地とか、旧時代の遺構とか、巨龍の亡骸とか、そういう『旅人がこぞって目指す名所』みたいなの……あるんだろ?」
「あぁー『観光名所』ってやつか!」
「そうそう! たぶんそれだ!」
なるほど……『食べる』だけに絞らずに、それ以外の『見る』『遊ぶ』などといったジャンルにも裾野を広げ、おすすめされた内容を体験する。
その地ならではのオススメを現地の方に教えていただき、ときには名所にいって絶景を眺めたり、名物アクティビティに挑戦してみたり、名物料理や知るひとぞ知る料理を堪能したり……同じ企画でもいろんなモノを取り上げることができるので、飽きられにくいと思う。
…………うん、いいかもしれない。
これなら……ちょっと危ういかもしれないけど、丸パクリにはならないだろう。
その方向で考えてみよう……と思っていたところで。
予想外の方向から、思ってもみなかった名案が届けられた。
「あの…………若芽様?」
「ん? どしたの
「……えっと……つぶやいたー、の……ほろあー? さんに、おすすめしていただくのは……いかがでしょうか?」
「………………………………はっ!!」
SNSサービス『つぶやいたー』とは……自分がフォローしているユーザーが気ままにつぶやいた発言を見ることができる、比較的『ユルい』SNSである。
またこの『つぶやいたー』には便利な機能がいくつもあるのだが……それらのうち、おれが思い浮かべた二つの機能がある。
ひとつは……特定の文字列を『タグ』として利用し、その『タグ』を含む発言を任意の範囲(自分のフォロワー内、または全ユーザー内)で一括表示させるもの。
つまりは『せっかくレジャー(※仮)』とかいうタグをつくって、それをおれの
もうひとつは、その『タグ』検索で引っ掛かったつぶやきの中から『現在位置の近く』でつぶやかれたもののみをピックアップできる、というもの。
要するに……行った先々で検索すれば、現地の『オススメ観光地』情報を入手することができる……ということなのだ!
「どうかな! これなら楽しそうじゃない!?」
「おぉぉ…………そんな機能が……」
「は……はいてく…………でございまする」
「……うん、良いなこれ。つぶやいたーでも盛り上がってもらえそうだし。それに……現地ニキネキも積極的に絡んでくれそうだし、少しでもコミュニケーションできたらおれもうれしいし!」
「はいはいはい! ボク賛成!!」
「あっ、わっ、わっ、わたくしも! ……でございます!」
よし……あらためて満場一致だ。
企画の骨格として既存の案を
い、いや……これくらいなら、おそらくはインスパイア企画として通用するはずだ。
というわけで、おれたち『のわめでぃあ』がお送りする『旅行企画』、その大筋がめでたく決まった。
題して……のわめでぃあの『せっかくとりっぷ』だ!!
…………ダメかな!!?!?
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