第240話 【試行運用】やさしい指摘(喜)
おれは……滅茶苦茶可愛い、女の子。
おれと同類だが、まだおれたちに染まっていない、第三者に近い立場であるミルさんからの正直な評価。
ぶっちゃけ今まで何度か言われたことのある評価だったが、面と向かって改めて言われると……表現しづらいが、ちょっと『ん゛ッ』てなってしまう。
しかし……女の子。正直なところ、おれ自身自覚しているつもりだったのだが。
なにせ身体的特徴からごろっと変わってしまったのだ。目に見えて整った容姿に加えて、脚の間はすっかり寂しさを増し、腰は控えめながらしっかり括れ、胸には微かとはいえしっかりと脂肪を蓄え。
他ならぬ自分の身体がこうも変わってしまったのだ。おれが女の子になってしまったということくらい、理解しているつもりだ。
「ぼくが…………いえ、ぼくを始めとする周りの面々が指摘したいのは、そういうことでは無くてですね」
「えっ!?」
「考えてみてください。……非現実的に可愛い女の子、しかもめっちゃタイプな子が、ことあるごとに接近してくる。一緒に旅行に行き、一緒にごはんを食べ、ついには一緒の部屋で……密着しそうな距離で『一緒に寝ましょう』と言い出してくる。…………どう思います?」
「………………やばいっすね」
「でしょう」
しつこいくらいに表明しているが……おれは今現在でも、こんなエルフの女の子の身体であっても、心は相変わらず男のままだ。
なので……今ミルさんが出した例が、健全な一般男子に対してどれほどの破壊力を秘めているのか、よーくわかる。なんてったって男だからな。
その理論がそのまま今のモリアキに当てはまるのだとしたら、確かにおれの言動は良くなかったのだろう。
そもそもこの容姿はおれとモリアキの好みをふんだんに盛り込んだ設定なのだ。そんな『おれ(たち)の考えた最強に可愛い美少女(エルフ)』が距離感ゼロで近付いてきたり、イタズラ半分にパンツ見せてきたりしたら…………いや、ふつうに考えたら理性トぶだろ。何してんだおれ。そしてモリアキあいつなんなん鋼の意思か。もしかしてち○こ付いてないのか。やっぱ神なのか。
「とにかく。お二人の仲が良いのは、非常に喜ばしいことだとは思いますが…………心はどうであれ、身体は男女の間柄なんです。ふとした切っ掛けで
「ま、まちがい……」
「
「…………同じ関係じゃ……いられない」
おれとモリアキの関係は……最初は、大学での先輩・後輩の間柄だった。その後就職を機に別々の道に進み、しかし共通の趣味を通じて交流を続けていた。年二回の祭典には一緒に遠征に出掛けたりもしていたし、趣味仲間と旅行に行ったりも何度かあった。
数年前にはモリアキに誘われ同時期に転職し、しかしモリアキが『神』として覚醒したことで一足先に退職し、それからしばらく後に『計画』が浮上し、その『魂』役に専念するためにおれが退職し……そこからいろんなことがあって、今に至る。
家族以外で、今現在でも関係が続いている人の中では間違いなく濃い関係の……ともするとおれのこの
それが
……そうだ。ミルさんの言ったとおり……おれの身体は、
これまでは
まあ、なにも『金輪際彼と関わるな』と言われているわけではないのだ。適切な距離感を測ればいいだけ。密着したり過度なスキンシップを図ったりしなければ問題ない。
少しだけ……ほんの少しだけ寂しい気はするが、そこは仕方ない。その寂しさは……ラニや
「ありがとう、ございます。……ミルさん」
「……いえ。差し出がましい真似を」
「いえいえいえ! こっちこそ……身内だったからこそ、気づかなかった指摘だったので。……ありがとうございます」
「わ、わたくしには……きっと、到底下せぬご指摘でございました……」
おれはモリアキといろんな『楽しいこと』をしたい欲はあるが、しかしそれらはモリアキに迷惑を掛けてでも満たしたいものではない。おれが
この居心地の良い空間を台無しにしてしまわないためにも、気を付けるべきところは気を付ける。
それが……
……がんばろう。
――――――――――――――――――――
「…………んー……大丈夫そうだね。ちゃんと纏まったみたい」
「……そっすか。…………ミルさんには……感謝しなきゃっすね」
「女性ならではの着眼点なのかもね。……ごめんモリアキ氏、ボクも深く考えてなかった。キミたちの関係性が変わって当然の、重大すぎる事件だったろうに」
「仕方ないっすよ。白谷さんは以前のオレらを知らんでしょう? ……まぁ、そこまで劇的に変わるわけでもないですし」
「うん……男同士の関係、ねぇ。…………率直に言ってどうなの? ノワの容姿、めっちゃ好みなんだろ? 男同士の関係、続けられそう?」
「いやぁ、さすがに大丈夫っすよ。いうてあの外見年齢でしょ? 可愛いなぁとは思いますけど、せいぜいが『親戚の子』って感じっすかね。…………それに中身も先輩ですし、そんな失礼な目じゃ見れないっすよ」
「あぁ…………まぁ、安心した。ボクとしても、キミたちの仲良さげな雰囲気は好きだからね」
「嬉しいこと言ってくれますね。……じゃあまあ、そろそろ戻りますか。あんま不自然にならんように」
「ふふふ……そだね。ボクはこの世界に詳しくないから、
「あー、了解っす。……お気遣いありがとうございます、白谷さん」
――――――――――――――――――――
オラッどうだっ
じぶんの立場ちゃんと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます