第190話 【休日満喫】初めてのはんばーがー



 前回、引っ越しのときの買い出しで訪れた際に打ち込んであった【座標指針マーカー】……それは厳密に言うと『地下駐車場の隅っこに停車していたモリアキの車の中』の座標だったわけだが、結論から言えば今回も問題なく利用することが出来た。


 仮にここの駐車マスに他の車が停まっていたらアウトだったのだろうが……本当に空いていてよかった。車内で記録したから多少高さY軸が上がっており、そのため出現地点からほんの数十センチ落下する形となったが、この程度なら問題なく着地することが出来た。

 ……とはいえ、この駐車マスがいつでも空いているわけじゃないのだ。もっとアクセスしやすい位置に【座標指針マーカー】を打ち直しておこう。

 自宅から五秒でシオンモールに来れるとか、便利なんて言うレベルじゃない。絶対に手放せない。



「あそこのオウチ、買い物がクッソ不便なのがほぼ唯一の難点だからね……! このメリットは捨てられない!」


「わ、若芽様! 若芽様! 食料の類いの買い出しもさせていただきたく存じまする!」


「そだね、ついでに買っちゃおっか。でも重たくなるだろうし……先にごはんたべて、タブレット見て、それからでいい? おれも手伝うから」


「わっはっは、もちろんボクも手伝うとも。キリちゃんのお料理ボクも好きだし、荷物持ちとあらば【蔵】とボクの出番でしょ」


「は……はいっ。宜しくお願い致しまする」





 というわけで。まずは軽く腹ごしらえを済ませるべく、おれたちはとりあえず飲食店街へと向かう。もともと勢いに任せて言い出したことなのだが……せっかくなので『ハンバーガー』を楽しませてあげたい。

 ……念のため、愛用のゴップロ小型カメラも持ち込んである。お店がわの許可さえ得られれば、いつでもおっ始められる状況なのだ。



「問題は……赤のMにするか、緑のMにするか。は選べない、ってのが難しいとこよな」


「?? 赤と……緑、でございますか?」


(ぇえ、何そのキツネかタヌキかみたいな)


「あながち間違いじゃなさそうなのが、また。……霧衣きりえちゃん、赤と緑とどっちがいい? 直感で」


「直感……で、では…………『緑』で」







 ということでやってきました。こちらはシオンモール浪越なみこしみなみ、一階の飲食店街です。

 毎度お騒がせしております。魔法情報局『のわめでぃあ』局長、卵かけごはんは混ぜない派の木乃若芽きのわかめです。へぃりぃ。


 先日の収録の際に大変気に掛けていただき、公開後も大反響(※予定)の『和装お嬢さま初体験』シリーズですが……なんとなんとご好評(※捏造)につき、早くも第二段をお送りさせて頂こうと思います。

 われわれニホンジンにとっては馴染みの深いモノ・コトですが……同じ日本生まれの日本育ちでも、箱入りのお嬢さんが人生初めてそれに触れたとき、いったいどんな反応を見せてくれるのか。本日も視聴者さんに『かわいいKAWAII』の奔流を、存分にお見舞いしていこうと思います。



「本日霧衣きりえちゃんに体験していただくのはァー……? こちら! 『MocBURGERモックバーガー』さんです! いぇーい!」


「えっと、あの…………いぇーい!」


(恥ずかしさ拭いきれない『いぇーい』かわいいかよ)


(それな)



 今回もなんとか無事に撮影許可をいただき、まずはお店の入り口前でオープニング部分を録る。正直めっちゃ目立ってるが、背に腹は代えられない。

 他に出入りするお客さんの邪魔にならないように、そしてお顔をうつしてしまわないように……お店のロゴや店構えはしっかりおさえておきつつ、少し端っこに避けてパパっと済ませる。こんなもんやろ。

 週末のお昼時とあって、さすがになかなか混んでいる店内ではあったが……端っこのほうのボックス席を幸いにも押さえてもらえたので、おれたちはぺこぺこしながら店内を進んでいき、霧衣きりえちゃんに座っててもらう。


 本来であればメニューの前であれこれ一緒に悩みながら決めたかったのだが、今回はあまりのんびりしていられない。お店にとっても稼ぎ時なのに、回転率を下げるのは宜しくない。なので、今回はおれのセレクトに任せてもらうことにする。

 バーガーを四つとサイドメニューを三点、ドリンクは……せっかく店内なので、スープを二種類選択。ちょっと申し訳なさを感じながら『バーガーぜんぶ四つ切りで』とお願いしたところ、大変いい笑顔で快諾してくれた。ありがてぇ。



 お金を支払い、プラスチックの番号プレートを受け取り、霧衣きりえちゃんの待つボックス席へと戻る。店内をぐるりと見回してみると、おしゃれな店内はやはり結構な混み具合。


 緑色Mの字のハンバーガー屋さんは、どちらかというとクオリティにパラメータを割り振った感じのイメージだ。

 日本生まれのハンバーガー屋さんなので、日本人好みの味覚をよーく理解してくれている。何を隠そうあのテリヤキ風味のバーガーを生み出し、またバンズの代わりにおにぎりで挟んだバーガーを売り出したのも、こちらが先なのだ。

 正直コスパが良いとは言いがたいが、材料すべてに産地が明示された素材を使用し国産野菜にこだわるなど、安全性と品質にはとことんこだわっている。


 ……などといったお話を、お料理が届くまでの間霧衣きりえちゃんに説明していく。

 しかし実際、彼女は『はんばーがー』なる料理を食べたことがなかったらしいので、おれの説明を受けてもいまいちピンと来てないようだった。かわいいからヨシ。





「というわけで! 届きました! ワーイ!」


「わぁーい!」


(アッかわいい)


(ほんまそれ)



 店内飲食の場合はバーガーがよく見えるように、片側をオープンな感じで包装してくれている。

 そのため……赤や緑や黄色などが織り交ざった大変おいしそうな表情が、一目でよく見えるのだ。



「バーガーが『こだわりハンバーグサンド』『モックチーズバーガー』『フィッシュフライバンズ』と『海鮮かき揚げライスバーガー』。サイドメニューが定番の『フライドポテト』と『オニオンフライ』に『モックチキン』。そしてスープが『ミネストローネ』と『クラムチャウダー』。……へへっ、とてもおいしそうですね」


「は……はいっ。おいしそうすぎて……おなかが減って参りました」


(いいなぁーーーー!)



 バーガー類は注文の通り、食べやすく包丁で四等分してくれてある。おまけに持ち帰り用に紙ボウルと紙袋も用意してもらったので、完全におれたちのおなかの容量を察されてしまっている。

 ちくしょう、本当に気の利く店員さんだ。お名前聞いとけばよかった。



 というわけで。


 今日も今日とて撤退戦の準備も整えられたおれたちは、もはやなんの憂いもなく……安心しておいしいお料理へと取り掛かるのだった。


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