第188話 【仕込途中】視聴者還元せーる?
録音開始ボタンを押して、お名前とメッセージを吹き込んで、録音終了ボタンを押して、名前をつけて保存。
一呼吸おいたらまた録音開始ボタンを押して、お名前とメッセージを吹き込んで、録音終了ボタンを押して、名前をつけて保存。
「『ネネウ』さん、こんにちわ。
「こんにちわ、
録音終了ボタンを押して、名前をつけて保存して、フォルダに纏めて、ファイル数とリストを照らし合わせて確認して…………
「失礼いたします、若芽様。お茶をお持ち致しました。……
「ほへ、大丈夫大丈夫。ありがと。……黄スパチャのひとは『太郎左衛門』さんで最後だから。あとは赤スパチャのひと……十人くらいかな? そんだけだよ」
「ノワがんばるなあ……全員ぶんでしょ? あのリストにあったひと」
「そだよぉー。でもまぁ、声だけだからね。そんなんでもないよ」
昨日のライブ配信にて頂戴した――以前のおれの月給を軽くぶっちぎる規模にまで育った――『スパチャ』の山に対し……おれは還元施策の一環として、ユーザーネーム入りのお礼メッセージを送ろうと決めた。
おれが普段使わせて貰っている
メッセージには文章の他、ちょっとしたファイルを添付できるようになっている。画像を添付されることが多いだろうその機能を、今回は
おれたちが昨日晴れて導入に至った『スパチャ』とは、その付与金額に応じて三段階に色分けされている。
付与金額が
それ以上、
そして赤色は……なんと
一目でだいたいの金額が解るようカラー分けがされているため、これのおかげでパッと見でも『ヤバさ』を判別しやすくなっている。
それぞれのカラーをとって『青スパチャ』『赤スパチャ』などと呼称され……要するに『黄スパチャ』や『赤スパチャ』が連投されると、おれの中の『申し訳なさゲージ』が跳ね上がるということである。
ちなみにこの色分けの仕様は、あくまでおれが普段お世話になっている『
話は逸れたが、ユーザーへのダイレクトメッセージ添付作戦についてだ。
今回送ろうとしているのはオフィシャルな商品としての音声データではなく、お世辞にも『きれい』とは言いがたい……場合によっては環境音やリップノイズとか入っちゃってる可能性もある、完全素人録りのおれの肉声である。そもそも
千人や万人に送ることにでもなれば難儀するかもしれないが……百そこらだったら、一人ひとりにメッセージを送ることくらい問題ない。
……というわけで、昨夜の放送から一夜あけた本日は土曜日。
おれは
ちょうど作業がひと段落したところで、
「ちょうどよかった。二人とも、ちょっとお願いあるんだけど……いい?」
「いいよ!」「はい。なんでしょう」
「おぉ。……えっとね、今から録る赤スパチャのひとのお礼メッセね……二人にも声入れてほしいんだけど、だめ?」
「ノワが言ってたみたいに『だれだれさん、ありがとう!』みたいのでいいの?」
「そうそう。お一人あたりおれと、ふたりのうちどっちかで大丈夫だと思う」
「わたくしは問題ございませぬ。お手伝いいたします」
「ボクももちろん大丈夫。何でも言ってね!」
「きゅん」
あーもう……ふたりとも、すき。
優しげな笑顔で微笑みかけられてしまっちゃったら……おれのココロはもうイチコロだよ。これはやっべぇわ。
かわいらしくて心強いわれらが『のわめでぃあ』構成員の、ありがたい力添えを得たことで……おれは赤スパチャの方々用お礼メッセージを、当初思い描いていた通りの内容で、あっという間に用意し終えることができた。
「…………と、いうわけで。録音のほうも片付いたので……せっかくだし、おれたちも『ミーティング』やってみようと思う」
「「おぉー…………」」
一月十一日土曜日、時刻はまもなく十一時といったところです。……おぉ、
今週の月曜日にお披露目を済ませ(ついでに源平合戦でボッコボコにされて)、そして昨日金曜日の定例配信を迎えて……いぬみみ和装美少女新人れぽーたーの
なので。このあたりでひとつ、企画を立てるほうにも参画してもらおうか……などと考えてみたわけで。
「本日の議題は、われわれ『のわめでぃあ』で新しくやってみたいこと、もしくは作ってみたい動画について。大前提として『一人でも多くのひとに見てもらい、見た人をポジティブな気持ちにさせる』ことを念頭に、おもしろそうな企画をどんどん発表していってください! はいじゃあラニから!」
「ふォえぇ!?」
「ひゃわわわわ」
突然の指名に珍しく狼狽するラニと、自らの行く末を察して可愛らしく慌てる
そういうときは大抵モリアキを巻き込むのが常なのだが、彼だってそう際限無くいい案が涌き出てくるわけでもないだろう。新しい風を呼び込めるのなら、それは是非とも呼び込むべきだ。
なんだか『ついで』のような形で始まったミーティングだけど、今後の展開を左右する(かもしれない)大切な場でもある。是非ともいい意見を聞かせてほしい。
「んんん……そだねぇ、正直いくつかあるにはあるんだ」
「おおー! 聞きたい聞きたい!」
おれたち『のわめでぃあ』の、頼れるアシスタントさんは……そう勿体つけると、可愛らしくはにかみながら語りだした。
おれはとりあえず……ペンとスケッチブック(アイデア纏める用)を取り出したのだった。
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