第187話 【配信終了】とてもやばいですわね
※ 本作品における名称等は非実在のフィクションです。
※ 実在する人名・サービス名・機能・仕様等とは異なります。
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ひとつは、投稿動画に設定することができる『広告動画』。いろんな企業の商品やサービスや、ときにはイベントやコンサートなんかをアピールする……そのままテレビでいうコマーシャルのようなものだ。
また『広告動画』設定の際には広告動画の挿入頻度を増やしたり、スキップ不可能(=強制的に広告動画全てを視聴させる)に設定することで、より広告料のレートを上げることも出来るのだが……肝心の動画を視聴する際にペースを乱されることになるので、視聴者がわにとっては鬱陶しいと捉えられてしまう恐れも、まぁ当然あったりする。そりゃそうだよな。
ちなみにおれはというと、とりあえず『冒頭一回のみ・五秒後スキップ可能』に設定しておいた。割とメジャーで無難な設定だろう。
そして……もう一本の、大きな柱。
それこそが今回から『のわめでぃあ』が導入し、先程おれのなかでちょっとした騒ぎになるところだったシステム……俗にいうところの『投げ銭』こと『スーパーチャージ』、『スパチャ』等と呼ばれる制度だ。
こちらはなんと……リアルタイムで配信を視聴中の視聴者さんからライブ配信の提供者へ、直接
名実ともに『投げ銭』なのである。
配信中に投稿するコメントに『スパチャ』を添付し、メッセージと共に任意の金額を送ることができるシステム。この『スパチャ』の乗ったコメントは派手な色で飾られリストにも残るので、激励やツッコミやイジりなど、多様な使われ方をされることもしばしば。
もちろん手数料等として幾らかマージンは回収されるが……それでもざっくり六割から七割程度は、
しかしながら『にじキャラ』などの企業所属
そう…………モチベーションにですね……非常に大きく影響するんですよ。
「……ノワ? なに見てんの?」
「あのねぇ……これねぇ…………今日のスパチャ一覧」
「ほえ、『スパチャ』……な、なんか数字書いてあるけど……これ、もしかして」
「…………うん、そう。……こっちが件数で、これが平均額で、金額ごとの分布グラフがこれで………………こっちが合計金額」
「わあー。…………引っ越しのときさ、けっこう出費したって言ってたよね。……もしかして、返ってきた?」
「………………そうみたい。……うう、ちょっと『申し訳ない』が過ぎちゃうよぉ」
いやもちろん、嬉しいことには変わり無い。当然だ。
おれたちの放送に価値を感じてくれているひとが居るからこそ、こうしてこの金額に表れているわけで。
このスパチャの一件一件は、おれたちへの期待そのものに他ならないからだ。
だから『申し訳ない』からといって……受け取ってしまった以上は、当然返すことなど出来ない。それに実際突き返されてしまっては、返された側としても複雑な心境だろう。
であれば、せっかくの形ある厚意……是非とも有効に、ありがたく使わせて貰うべきだ。
おれが今感じている『申し訳ない』の気持ちをバネに、返金とは別の形で視聴者さんに還元する。それこそが、おれたちの取るべき選択のはずだ。
現金な話だが(お金の話題だけに)……『お金』は非常に便利なもので、いろんなものに『変える』ことができる。
より高価で高性能な機材を更新したり、視聴者さんにより楽しんでもらえるようなゲームを購入したり、気軽には行けないような体験を代わりにレポートしたり……などといったことは勿論として。
そのほかにも……他の人の『時間』を買い、おれが抱えているタスクを委託してしまったり。するとおれが視聴者さんたちに『お礼』を企てるための『時間』を確保することができ……より色濃いリターンを返すことができるのだ。
モリアキとも相談したのだが……じつは動画編集作業を一部、外部に委託しようと考えている。おれの取れる時間を増やすのが目的だ。
おれたちは全国あちこちで動画を撮り続けること、あるいはライブ放送を行うことに、ひたすらに専念する。撮影した動画を外部業者さんにどんどん編集してもらい、おれは完成した動画を受け取ってチェックして(場合によっては修正依頼を掛けて)投稿するだけ。
動画一本あたり、集中モードでも六時間は下らない編集時間を、まるまる別の用途に充てることが出来る。お金があれば、それも充分に可能なのだ。
この道を選んだのはおれ自身なので、今さら後悔はしていない。……していないが、養われっぱなしというのもさすがに格好悪いと思ってしまうし、どうせ養ってもらってるなら常に感謝の気持ちは忘れないようにしたいとも思う。
収益化プログラムのお陰で、収入のほうはなんとかなりそうだ。
収入がなんとかなるのなら、編集を外注すれば時間が手に入る。
時間に余裕ができるのなら、ちょっとくらい無茶できるだろう。
「若芽様、シラタニ様。お風呂が沸いてございまする。どうぞお先にお入り下さいませ」
「あっ!
「そだね。……うん。ありがとキリちゃん」
……まあ、そいうわけで。おれにスパチャを送ってくれた全てのひとへ、まずは感謝のお礼作戦。隙間時間をうまく見つけて、少しずつこまめに行動に移していこう。
題して『スパチャのお礼メッセージをおれの声で送ろう』作戦。その内容はずばり、作戦名見たまんまだ。十秒そこらのお礼の言葉、動画ではなく音声のみであれば、そこまで煩雑なものでは無いだろう。
えへへ。なんだか楽しみになってきた。
……喜んでくれるかな。
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