第160話 【準備段階】まだあわあわあわあわ
昼めしついでの突発的な撮影ではあったが、とりあえずお店で確保できる分の映像は、これで無事撮影できたと思う。
とはいえおれたちの
店員さんをコールし、せいいっぱい申し訳なさそうな顔をつくって『ピザ持ち帰っちゃ……ダメですか?』と打診したところ……店員のお姉さんはめっちゃいい笑顔で快諾、持ち帰り用の専用ボックスに移し替えてくれた。
……まぁ、ふつうにテイクアウト対応メニューだもんね。
本当は食べきれないことが解ってたなら、最初から持ち帰りで注文した方が良かったんだろうけど……そこはまぁ、つまりは並べた
おれは一人申し訳なさを感じながら、背景に花が咲いてそうなしあわせスマイルを振り撒く
それじゃあモリアキと連絡を取ろうかとスマホを取り出したところで……帽子にお店ロゴのバッチを付けた、一人の年配店員さんに呼び止められた。
……まって、これはもしかして
「わ、わたしなんかで……いいんですか? いえ、嫌とかそういうんじゃ無いです、むしろ光栄です。光栄、なんですけど……
ええ……
まぁおれは確かに、
超絶大人気
おれもいつかはあの高みまで『届く』と言わずとも『近づきたい』とは思っているので、写真撮影の申し出なんていうのは……ぶっちゃけ、とてもうれしい。
だがやっぱり『本当におれなんかで良いのか』『おれなんかの写真撮って得するのか』という疑問が拭いきれないのも、正直なところ事実なのだが。
「……はい! ありがとうございました! ……すみません、お騒がせしました」
お店の看板の前で、店員さんたちと並んで写真を撮ってもらう。数台のスマホ(うち一つはおれの)での写真撮影、他のお客さんの邪魔にならないように手早く行わねばならない。
……おれの価値に疑問を感じたことも事実なのだが、それでもバッチ付きの店員さん(ネームプレートにはなんと『店長』と記されていた)をはじめ店員の皆さんが実際に喜んでくれていることも、またれっきとした事実なのだ。
ならばおれは、おれのことを好んでくれる人たちが喜んでくれるよう頑張るまでだ。
今はまだ何の価値もないこの写真が、数年後か数十年後かわからないけど価値あるものとなるように……大人気
「ふふ。良い顔してるね、ノワ」
「? ……ほえ? そうお?」
「気合充分、ってとこかな? なんか引き締まったみたい」
「……うん。おれがしっかりしなきゃなって。……めっちゃいい顔しちゃってる
「キリちゃん? …………あー、これ大丈夫?」
「いやぁー…………だからこそ、おれがしっかりしないと……ね」
アルコール類など一滴も摂取していないのに、まるで酩酊しているかのように夢見心地な顔をした白髪和服美少女……おれの服の袖をきゅっと握ってちょこちょこと付いてくるその姿は、ぶっちゃけ非常に愛らしい。
どこかふわふわした足取りで、ぽわぽわした雰囲気ながらもちゃんとおれについてくる
白髪+和服+美少女+至福顔……とあっては正直無理もないなぁとは思うけど、このままだとモリアキと合流するのは難しいかもしれない。
とりあえず対策を練るにしても連絡を取るにしても、一旦腰を落ち着けたいところだ。
周囲の目線を避けるようにトイレ近くの自販機コーナーへと場所を移し、しあわせスマイルの
……試みようと、していたのだが。
「……ノワ? どしたの?」
「っ! ぁ……あぁ、ごめんごめん。……直接電話しちゃうか」
「…………??」
なかなか見かけないこの通知は……おれがあらかじめメーラーで設定しておいた、ある特定のメール受信を知らせるためのもの。
「……もすもす? モリアキ? 遅くなってごめんね、今どんな感じ? ………うん………うん、…………うん。………………うん。ありがとね。……了解。屋上ね」
「お…………屋上?」
「白谷さんもいっしょ。
「…………まぁ、道中説明してもらえばいっか。行くんだね?」
「うん。……
「…………ふュ、」
おぉ、やっと帰ってきたか。
呆然自失していた自覚はあるのか、顔を赤らめて恥ずかしがる
幸いなことに……休憩に使っていた自販機コーナー(というかトイレ)のすぐ隣に、駐車場へ行けるエレベーターがあった。とりあえずボタンを押してエレベーター
開かれたのは……
普段はほぼほぼ
おれが認識するなり言葉を失った、気になるその件名は……ずばり『配信者様向け販促企画のご依頼に関して』。
差出人は『(株)三納オートサービス』とある。字面から予測するに、どうやら自動車関係の会社らしい。
つまりはこれは……どう考えても『企業案件の依頼』というやつなのでは無かろうか。
…………………………え?
………………まじ?
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