第145話 【収録完了】言質とりました
およそ二時間にわたる配信だったが……ここでひとつ、視聴者さんには内緒だった驚愕の事実がある。
……というのもほかではない。なんと今回の配信では始終、この
いやま、そこまで特別な事態っていうわけじゃないんだけどね。お客さんというのもなんのことはない、狗耳白髪和服美少女こと
自室の無い彼女にとっての暫定プライベートゾーンである、リビングスペースの片隅……幸いというか配信用定点カメラからは死角になる位置でクッションの上にきちっと座り、おれたちの配信の様子を見学してもらっていた。
いちおう念のため【
「……えっと、ごめんね。長いこと不便させて」
「め、滅相もございませぬ! 斯様な現場に居合わせたことなどございませぬゆえ、わたくしも大変得難い経験でございました」
「キリちゃんキリちゃん、どうだった? ノワの
「勿論にございまする!
「え、えへへ……こそばゆい」
素直で純粋でとても真っ直ぐな
迷惑だったんじゃないか、というおれの懸念に対して『むしろ興味深い経験をさせて貰った』と返してくれた彼女。空気を読んだとかおれに配慮してくれたとかそういうのじゃなくて、心の底から楽しんでくれていた……ということらしい。
それは正直なところ、とてもうれしい。
素直な感想を貰えることも、ストレートに褒められることも……暖かい声援はそのままやる気に繋がってくるのだ。
それにしても。彼女が興味を持ってくれたのは、とてもありがたいことだ。
なればこそ、おれのこの本業の楽しさをもっと彼女と共有できれば……なおのこと嬉しいのだが。
「じゃあさ、キリちゃんも出てみる? 動画とか配信とか」
「え!?」
「あっいいかも! わが『のわめでぃあ』では演者募集中なので!」
「ひゃい!?」
「キャラも立ってて良いんじゃない? 清純派和服美少女!」
「あ、あの!?」
お、おぉ……ラニちゃんやりおる。
正直おれもひそかに『いつどうやって切り出そうか』と狙っていたことだが、ラニがあっさりと切り込んでいった。
……この子の行動力と度胸は本当すごいと思う。伊達に勇者を勤め上げちゃいないということか。
最近は意外と
敵に回すととても厄介だが……味方であるというのなら、それはとても心強い。
「し、しかし……わたくしのような未熟者が、若芽様のお仕事の邪魔をするなど……」
「うーん……じゃあさ? リョウエイさんとかに聞いてみようよ」
「あっ、いいね! どっちみちあのお屋敷について、詳しい話聞きに行きたかったし……明日あたり行って、そのときに許可とってみる?」
「あ、あの! わたくしは……その……」
「いや、もちろん
「……わたくしは、しかし」
「キリちゃんがノワを助けてくれるなら、すっごく安心なんだけどなぁ。……ボクは身体が
「…………っ!」
(ナイスフォローですよ白谷さん)
(フフ、お安いご用ですよ若芽さん)
彼女が本心から嫌がっているのなら、当然すぐに引き下がるつもりだけれど……しかし演出の幅を広げるためにも、新たなファン層を開拓するためにも、そしておれたちの癒しのためにも、
手助けが得られるなら非常にありがたい、迷惑なところなんて何も無い。これは何一つ偽りの無い、おれとラニの共通認識である。
とはいえ実際のところ、勝算が割と高かったからこそ切り出した提案なのだが……やっぱり彼女はおれたちの思った通り、とても思いやりのある良い子のようだ。
「……でっ、では…………龍影様の御許しが得られた暁には……」
「…………には?」
「っ、……わ、わたくしも…………その……演者、として……お力添え、させて頂きたく……」
((――――計画通り))
めでたく本人の
新居についての提案と要望も含めて、重要な議題が盛りだくさんだ。
あまり夜更かしも良くないし、
おれたちはてきぱきと明日の予定を詰め、せかせかと眠る準備に移った。
……のだが。
おふろを巡ってまたひと波乱あったので、自戒も込めて記録しておこうと思う。
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