第142話 【背水配信】完全勝利S
つらく……けわしい戦いだった。
何度もくじけそうになったし、正直『もうだめだ』と思ったことも幾度となくあった。
それでも……それでもおれは、ついにやりとげたのだ。
因縁の相手である(※ステージ1の)ボスを撃破し、ついに(※ステージ1の)ノーコンティニュークリアを達成したのだ!!
「や、やった……やった! やった、みてみてラニ!! たおした!!」
「えっ、アッ、えっと……はい。うん、おめでとうノワ」
「えへへー……ありがとラニ。視聴者さんもありがとう! どおだったわたしの勇姿。ちゃんと見ててくれました?」
『えーっと……うん』『お、おめでとう』『【審議中】』『つよつよわかめちゃんだ』『余裕だったな(ふるえ)』『あの、休憩時間は……』『確かにノーコンだけどさぁ……』『いやこれステージ1で死ぬ方が難し』『わあのわちゃんすごい(棒読み)』
「宣言通りノーコンクリア、有言実行の優秀な美少女エルフです! もーっとほめてくれてもいいんですよ! ふふん」
およそ一時間近く前……視聴者さんの前で高らかに宣言した『ノーコンティニューでクリアしてやります!』の言葉通り、一度もゲームオーバーになることなく(※ステージ1の)クリアまでこぎ着けることができた。
チャプターの合間とか、行動コマンドの選択時とか、敵キャラのセリフのときとか……敵が行動しないタイミングで
おめでとう、おれ。ありがとう、おれ。
「あっ、消費カロリーとか疲労度とか出るんだ……えーすごい、脈拍まで測れるの? めっちゃハイテクじゃないですか」
「えーっと……うん。まぁ、ズルはしてないので……審議の結果『オッケー』ってことになりました」
「な、何ですか審議って。だれがどう見ても完膚なきまでにわたしの華麗な完全勝利じゃないですか!」
「………………あ、うん。そうね。じゃあこの調子でもうちょっと頑張ってみよっか。視聴者さんもノワのつよつよなとこ見たいって」
「ヒュッ」
えっと、あの……確かに『完膚なきまでの華麗な完全勝利』というのは、正直少し盛りすぎたかもしれない。
少なくとも小休憩を挟みまくったので『華麗』では無いだろうし、自キャラのライフポイントもギリッギリだったので『完全勝利』では無いだろう。
つまりは……えっと、ごめんなさい。調子乗りました。
「でもまぁ、頑張ったんじゃない? ちょっと……いや、なかなかに時間掛かっちゃうのが難点だけど、でもクソザ…………運動が苦手なノワにしては、よくやり遂げたと思うよ。まだステージ1だけど」
「ねえいまクソザコって言ったよね?」
「えーっと……『継続はチカラなり』って言うくらいだし、今日はだいぶ時間押しちゃったけど、今後も定期的に続けてみよ? 今日みたいに雑談小休憩挟みながらなら、クソザ…………ノワでも頑張れるでしょ?」
「いまクソザコって言ったよね?」
「ノワの頑張ってる姿(と苦しんでる顔)、もっと多くの視聴者さんに見てもらおうよ。……ほら、視聴者のみんなも応援したいって。ノワの前向きな姿勢(と苦悶の表情)にみんな元気付けられてるんだよ」
「いま小声でなにか言ってたよね?」
『キノセイダヨ』『クソザコ笑うわ』『わかめちゃんのいいとこ見てみたい』『シリーズ化しよう』『くそざこがんばれ』『何も言てないあるよ』『せめてストーリー全クリしよ』『ラニちゃんいい性格してんな……』『アシスタントに完全に食われてんじゃねーかwww』
どうやら視聴者さんたちも、概ねラニと同意見らしい。
実際のところ……いわゆる『ゲーム実況配信』というものは、非常に取っ掛かりやすかったりする。
前もって撮影した動画を編集して公開する、という手順を踏むとなると、撮影にも編集にもなかなか多くの時間と手間がかかる。
その分テンポよく纏められたレベルの高い動画が投稿でき、かつ失敗も生じづらいというのはメリットではあるのだが……さすがに連日のように投稿し続けるとなると、それに掛かる手間は尋常じゃない。
一方で、今回のような『実況配信』では……環境を整えたり配信するための準備はもちろん必要だが、映像を撮り貯めたり事前に編集したりする必要は無く、極端な話『やろう』と思ったらすぐに開始できる。
おまけに
リアルタイムでコメントのやり取りが行える生配信ならば、ひとりぼっちよりかは幾分楽しくゲームに取り組めるだろう。
いままで通り各種ジャンルの
ましてや……おれが悶え、苦しむ
おれは、この魔法情報局『のわめでぃあ』の局長だ。
視聴者さんを喜ばせるためなら……おれが苦しむ程度、
「……じゃあ、そうですね。…………がんばって、つづけてみます」
「!! よく言った! 偉いぞノワ!!」
「ふ、ふん。……視聴者さんもわたしの勇姿、しっかり見ててくださいね。今度はちゃんと、前もって告知しますから」
「そうだね……せめて前の日には告知したいね……」
ゲーム実況配信の定例化宣言と、事前告知の徹底。それに沸く視聴者さんのコメントを受け、まんざらでもない表情を浮かべながら……
おれはどうにか今回の継続プレイ要請を
危ないところだった。
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