第90話 【配信準備】頼りになるアシスタント
およそ一週間ぶりとなる生配信……身体いじめに終始した前回を大きく上回るほどに、盛り込むべき内容は膨大だ。細部はこの身体のアドリブ
白谷さんの【門】を通って一瞬で帰宅を果たしたおれは、明日の配信の台本を纏めるべくいつものように
「待って待って待って。ノワノワ、その格好のまま作業するの?」
「ん? その格好…………あー」
「シワとかなったらマズいよ。ちゃんと畳むか、ハンガーに掛けといて。浄化とかはボクが済ませるから」
「ありがとうたすかる。絶対洗濯機で洗っちゃマズいやつでしょこれ……」
着るのはまだちょっとぎこちないので、シロちゃんに手伝って貰いたいところだが……脱ぐ分には何も問題無い。
各所の括り紐をほどいて千早と袴を脱いでハンガーに掛け、小袖と襦袢も脱いで同様に掛けておく。……パンツは別に脱がなくて良いだろう。紐じゃなきゃいけないなんて指定は無いだろうし、白を指定されたとしても何枚かある。
部屋着であるモコモコあったかパジャマに袖と脚を通し、今度こそ作業机へと着座する。衣服よし。
それではあらためて……作業開始だ。
なんてったって大切な相棒、
デスク横の保冷庫からファイト一発なドリンクを一つ取り出して『ぐいっ』と
「気負いすぎないようにね、ノワ」
「んえ? やー大丈夫。おれは頑張れるよ」
「……キミがそう言うなら、今は止めないけど…………これだけは覚えておいて。キミはひと
「…………ん。……自覚はあるよ」
ほんの先日。飲まず食わず脇目も振らず、およそ六時間ぶっ通しで
あのときは白谷さん(の設定したおふろアラーム)によって我に返ったが……その途端に封印していた生理現象が、『待ってました』とばかりに立て続けに騒ぎ出したのだ。
それこそ、もう少し我慢して作業を続けていたら……
この『動画編集にかかわる動作をひたすらに最適化する』
「一つのことに集中できるのは長所でもあるけど……キミの場合は、その加減が極端に過ぎる。……ボクから見て『やばそう』って感じたら、そのときは
「……うん。すごいね、マネージャーさんだ」
「当然。ボクは頼りになるアシスタント妖精だからね」
「心強いけど……おれの胸なんて揉んでも楽しくないでしょ。そんなに好き?」
「勿論。ノワの身体は全部好き」
「…………えっちだなぁ、白谷さんは」
……なので、そんなときに白谷さんの助力はとてもありがたい。ちょっとえっちなところもあるけど、そこはご愛嬌だ。
おれ自身が作業にのめり込んでしまっても、おれの体調をマネジメントしてくれる白谷さんが適宜ペース配分や休憩を指示してくれる。
おれは自身の心配をせずに最大効率で作業に取り組めるし、精神的被害を被ることも避けられるのだ。
可愛くて、賢くて、とても頼りになる。
本当に得がたい、大切な相棒だ。……ちょっとえっちだけど。
「とりあえずは明日の段取りだね。二十一時スタートで二時間の予定だから、その百二十分の割振りを考えなきゃいけない。白谷さんのお披露目と紹介と、年末年始の更新スケジュールの公開と……巫女さんアルバイトの報告と、鶴城さんのPRも盛り込まないと」
「おうたも入れないとだよ。ノワのおうた大人気だったじゃん。民謡アカペラなら準備も要らないんだろ? 毎回ひとつずつ定番化してみても良いんじゃない?」
「あー…………ありかも。でもまあ、あくまで前回同様『そこまで言うなら……しかたありませんね!』な感じで。わかめちゃんの
「モリアキ氏にサクラ頼んどこうよ。……まぁ尤も、仕込むまでもなくオネダリされると思うけどね」
「んへへへ。だったら嬉しいなぁ。……でもま、念のため頼んどこう。モリアキきっと見てくれるだろうし」
「そうだね。彼はそういう子だ」
やっぱり、白谷さんは頼りになる。おれが見落としがちなところを、しっかりばっちりフォローしてくれる。
ひとりぼっちで原稿を考えているときよりも、良い考えがどんどん出てくる。三人寄ればなんとやら……まぁおれたちは二人なんだけど、それでも効果は目ざましい。おかげで作業の進みが明らかに早いのだ。
おれはキーボードをだかだかと打ちならし、それらを文書データとして纏めていく。おれたちの目的のためにも、そして白谷さんのためにも……明日の配信はなおのこと張り切って臨まなければ。
この身体の集中技能を遺憾なく発揮した原稿作りは、なんと早々に完了してしまった。
これ幸いとそのまま
この進捗ペース…………すごいよぉ!
さすがアシスタント妖精さんン!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます