不良

「やってられねぇ」あたしはそう言って教室を飛び出した。

「待てよ! どこへ行くんだ」と聞こえたけど、あたしは無視してドアを思い切り閉めた。

 どいつもこいつも、いちいちうっせぇんだよ。真面目にやれとか、やる気あるのかとか、お前らはあたしの親か? 髪を染めるなとか、ネイルをやめろとか、スカートの丈が短いとか、先コーに関係ねーし。

 家に帰ったら帰ったでババァが「新しい学校にはもう慣れた?」と毎日聞いてくる。マジでウゼェ。慣れるわけねーじゃん。

 こんなはずじゃなかった。頑張って勉強して私立の中学に入ったのに、そこはあたしが思い描いた場所ではなかった。でもそれは誰のせいでもない、違うそうじゃない悪いのはあたし一人。本当は自分でも分かっている。

 あたしは校舎裏の非常階段に腰を下ろして紫煙をくゆらせた。

「タバコは体に毒ですよ」

「誰?」あたしは声のする方に目を向けた。

 そこに立っていたのは委員長の後藤正樹。あたしは心の中でガリ勉メガネと呼んでいる。

「探しましたよ」そう言って、あたしの横に座った。

「アンタ、あたしのこと怖くないの?」

「怖い? 僕はそんなこと思ったことないですよ。それにみんな戻ってくるのを待ってますよ」

「ありえねーし」

「本当ですよ。だって、……」


「先生がいないと僕たち授業を受けられないでしょ」


 

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