第6話 ゴミ設定【キノコ胞子】【根枯らし蟲】

「あの、どうかされたんですか?」


 騒ぎに僕が駆けつけると、対応していたネーネさんが困り顔で答えてくれたけ。


「あ、ルーク君。それがね、さっき納品に預けられてた毛皮や薬草類がカビが生えてて……どうもイタズラキノコの胞子を浴びたのが原因だって、ザムさんがご立腹で」


 どうやら怒鳴り込んできたのは解体師のキリキ・ザムさんと言うお方。

 ネーネさんは『ザムさん』と呼んでいるらしい。


「僕、カビならなんとかできるかもしれません」


「さっきのお掃除は見事だったものね、でも壁と毛皮、薬草ときたらただ擦って落とすわけにもいかないの。それができたら苦労しないのよ?」


「実は、部屋のお掃除は僕のスキルで解決したんです、力で拭き取ってません」


「まぁ、それは本当? それじゃあなんとかなるかもしれないわね。ザムさーん! 強力な助っ人を連れてきました」


「あぁん? 誰じゃおまいは。見ない顔だな?」


 大きな体躯、その巨体から見下ろされる視線は威圧的で、絵本で読んだ皆殺しベアーと類似していた。


「ヒッ」


「こーら、せっかくルーク君が手伝ってくれるって言ってるんですから、怖がらせちゃダメですよ!」


「なんじゃ、ってネーネ嬢ちゃんか」


 すごい、あんなにおっかない人に勇敢に立ち向かって行けるなんて。

 僕も勇気を出さなくっちゃ!


「あの、ルークと言います。もしかしたら僕のスキルがお役に立てると思って、お話だけでも聞けたらと思って参りました」


「話もなんも、この胞子を被ったらお手上げよ。一斉にカビがワラワラと生えて使いモンにならなくなるんじゃ」


「でも、そのカビさえ消えればどうにかなるんですね?」


「坊主、何をするつもりじゃ」


「この子のスキルはゴミ拾い。指定したゴミを拾うことに特化したスキルなんですって。フロアの年季の入った壁や床は見違える様に綺麗になったわ。これはルーク君のおかげなの。ね、どうせ捨てちゃうんだったらダメで元々。ルーク君に任せてあげてくれない?」


「ぬ、ぬぅ。分かったわい、ネーネ嬢ちゃんに頼まれちゃあ断れんからの。坊主、やってみろ」


「お預かりします!」


 僕は大きな毛皮を預かり、ゴミ拾いを作動させる。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

  ☠️汚染された毛皮

  <状態異常>

  錆【対応可能】

  カビ【対応可能】

  キノコ胞子【☆18.00で取得可能】


  【スコア☆5.00】

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛


「カビだけじゃなく錆もありますね」


「……分かるのか?」


「そう言うスキルなので」


「ザムさん、毛皮って錆るんですか?」


「普通は錆ない。だが、こいつは魔核持ち。そいつが錆ついちまってるんだろう。それを一目で見抜いた。こいつは期待できそうじゃ」


「今の僕ではカビと錆までしか対応できません。胞子の方は、済みませんが……」


「何を言っとるか! それが取れるだけで蘇るんじゃぞ? それにイタズラキノコの被害に怯えずに済む素材が坊主のおかげで増えてくるんだ。喜びこそすれ、貶す理由なんかありゃせんわい。ささ、どんとやっとくれい」


「それでは行きます」


 シュワ……

 スゥ……


 時間にして数秒もかからず、毛皮は本来の美しさを取り戻した。


 そして同時にやったのも良かったのだろう、スコアが一気に11.00まで上がった。毛皮がたった一枚でだ。


 これは何枚かやれば、イタズラキノコの胞子まで取れちゃうかもしれない。


「出来ました」


「なんと、もうか?」


「胞子の方ですが、もう何個か毛皮を任せてくれたら完全除去出来そうですが如何でしょうか?」


「そりゃ願ってもないことだ! ネーネ嬢ちゃん、この坊主は掘り出しもんだぞ、大切に扱うんじゃぞ?」


「勿論です!」


 その日はザムさんの元で夕方近くまでお手伝いした。

 本来の報酬を上回るお駄賃をもらってしまったのだけど良かったのかな?


 でもお陰で、新しいゴミを除去できる様になったし、いいか。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 <指定ゴミ>

 埃、錆、油汚れ、カビ、キノコ胞子

 根からし蟲

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 根枯らし蟲は薬草にくっついてた小さな蟲だ。これを取ったらみるみるうちに本来の青さを取り戻したみたい。


 お陰で薬草の査定に立ち会うお仕事まで貰っちゃった。


 その事を兄さんに話したら「良かったな、認めてもらって」と自分のことの様に泣いて喜んでくれた。


 僕も兄さんの役に立てて良かった。

 いつかもっと役に立てる様になったら冒険に連れてってね?

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