第5話 ゴミ設定【油汚れ】【錆】【カビ】

「なるほど、スコアですか。それは盲点でした」


 ギルドでミキリーさんやストックさんと落ち合うと、僕と兄さんは宿での出来事を共有した。


 そこで出てきた懸念が、ゴミならなんでも拾えるものじゃない。

 スコアによっては拾えないということが判明する。


 ストックさんの持ち込んだアイテムは錆ついたワンドや虫食いの激しいスタッフだった。


 僕の『ゴミ拾い』でこれらを修復できたら、ちょっとした小遣い稼ぎになったのにと落ち込んでいた。


 虫食いは☆15

 錆は☆3

 油汚れは☆2だ。


「油汚れならギリギリ間に合いますけど」


「本当かい?」


「やってみますか?」


「よろしく頼むよ」


「じゃあ、お預かりします」


 ストックさんからワンドをお借りして、頭の中でゴミ拾いの選択肢に油汚れを選択すると……


 シュワッ


 あっという間に油ぎったワンドの先端がサビだけになった。


 ピピピ、とスコアも上がる。なんとたったの一回で☆1.00。


 一晩部屋で過ごして埃を拾った時よりスコアの伸びがいい。これは驚きだった。


「終わりました」


「本当に取れてるね。後は錆さえなんとかなれば良いけど」


「それでしたら、後二回ほど油汚れを取れば錆もいけるかもです」


「え、すごいね。油汚れの回収スコアは高いんだ?」


「埃の8倍くらいですかね」


「まるでヒリング草とポイズ菜だね」


 僕の例えに、ミキリーさんが昨日の事をあげつらうように笑う。


 兄さんはそれを聞いて苦い顔をした。


 兄さん達の武器から油汚れを拭き取り、☆が3.00になったのを確認してからゴミの選択肢に錆も付与してもう一度握ると。


 スッ


 あれだけワンドにびっしりついていた青錆も綺麗さっぱり取れてしまった。

 なんとこれだけで新品同様になったらしい。

 兄さんは修繕費が浮いたと大喜びしていた。


 僕も回収できるゴミを増やせて満足だ。



 ┏━━━━━━━━━━┓

  <スコア>

  ★0.00

  ☆5.00

 <指定ゴミ>

  埃、油汚れ、錆

 ┗━━━━━━━━━━┛



「これならクエスト先も多少絞れるな」


「でも鍛冶屋のオッサンにバレたら殺されない?」


「バレなきゃいーんだよ、バレなきゃ」


「僕のスキル、鍛治屋さんに迷惑なんですか?」


 さっきの今で急に不安になると、ストックさんが「そんな事ありませんよ」と宥めてくる。


「私達がルーク君に頼りすぎてしまう場合、本来仕事をお任せしていた鍛冶屋さんには仕事が入らなくなってしまう。ミキリー様はそれが巡り巡って私達に襲いかかると危惧しているんです」


「それは、考えもつきませんでした。僕がスキルを使いすぎると、他の人の仕事を奪ってしまう可能性があったんですね」


「ああ、もう弟は繊細なんだから気をつけてくれよ。まぁなんだ、そうやってなんでも抱え込みすぎるな。ミキリーの話は喩えだ。絶対にそうなるって話じゃない。でもスキルばかりに頼ってるとそうなる未来も無きにしもあらず。要は使い方を間違えなければいいんだ」


 兄さんに言われ、僕はハッとする。


「兄さんもその事で苦労したの?」


「何度も殺されかけた。でも平謝りして今がある。ルーク、お前にはオレと同じ経験をしてほしくない。分かるな?」


「ありがとう、兄さん。僕頑張るよ」


「おう、がんばれ」


 兄さん達とギルドで分かれ、僕はクエストのギルド内清掃を任された。


 新しくカビを指定範囲に選択していく。

 錆と油汚れは意識的に外した。


 それがバレたら大目玉だからね。

 一度採取する汚れを取得して仕舞えば、あとは洗濯することでゴミ拾いができてしまうのだ。


 掃除が終わった事を伝えたら「もう終わったの?」と喜ばれた。


 あまりにも早く終わったので手持ち無沙汰になってしまった。


 そこへギルド受付に怒鳴るような声が降りかかる。


 どうやら解体施設に持ち込まれた素材のほとんどがカビて使い物にならないと言う不測の事態だったようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る