第4話 お前さ、やっぱり、アイツの事がすきなんだろ?
「まあ、日常系だし、普通の内容の方がいいのか? それとも、新しい要素を加えた方がいいのかな?」
普段から漫画を読むことがあり、日常系といえば色々な作品が頭に浮かんでくる。
基本的に、女の子らを中心に物語が展開されていく内容である。
今風的に、そういった話がいいのかもしれない。
そのアイデアとなると何がいいのか。
あまりにもた他作品と似すぎていてもよくないと思う。
勉強机前の椅子に座ったまま、翔は長考し続けていた。
「まあ、どこかの店屋で、物語の女の子らが働くといった内容でもいいかも?」
以前、そういうジャンルの漫画を見たことがある。
それをベースに、真似ないように話を作れば何とかなるかもしれない。
パッと思いついた事を、勉強机に置かれた白紙の用紙に、勢いよくシャープペンで箇条書き程度に書き出していく。
「これで十分かな」
翔はキリのいいところまで書いて、背伸びをした。翔は椅子から立ち上がると、ベッドまで移動し、仰向けになる。
「はあぁ、疲れたぁ……」
翔は部屋の天井を見ながら腹をさすった。
「……お腹が減ってきたな。そう言えば、冷蔵庫になんかあったっけ?」
翔はベッドから起き上がり、部屋を後に階段を下ってキッチンへ向かう。
冷蔵庫を確認するが、特に何もなかった。
今日は両親が仕事の都合上で不在である。
昨日の残り物も、今日家に帰ってから食べてしまっていた。
そんなに多く残っていたわけでもなく、今になって腹が減ってきていたのだ。
「腹が痛くなってくるほど空腹が凄いんだけど、やっぱ、コンビニにでも行くか」
翔の自宅近く、徒歩三分のところには二四時間営業のコンビニがある。
現在、夜の九時四五分を軽く過ぎた頃合い。
すぐに行って、すぐに帰ってくれば問題ないと思い、急いで外用の服に着替え、玄関で靴を履いて外に出た。
二四時間も営業しているコンビニがあれば、何かあった時に助かるというものだ。
コンビニの夜の明かりに惹きつけられるように、翔は駆け足になる。
店内に入ろうとした時――
「お前、なんでこんなところに」
翔は入り口から出てきた人から急に話しかけられた。
突然な出来事にドキッとしたが、よくよく見てみると同じ学校に通っていた
五月雨先輩は紺色のジャージ姿に、金髪ロングヘアで、初見の人だと怖く感じる人もいるかもしれない。
少し大人びた雰囲気を醸し出していて、怖いが、恰好いい系の印象が強い女の人だ。
先輩と言えど、普段から学校で関わりのある人ではなかった。紫先輩と同学年で一番仲の良い感じの人であり、以前、紫先輩との繋がりで少しだけ話したことがある程度だった。
「五月雨先輩はなぜここに? 買い物ですか?」
「私は、ちょっとな。バイトの都合で、今日だけこのコンビニにヘルプに入ってた感じ」
「バイト? でも、今は十時に近いですし、バイトしてはいけない時間な気がしますけど」
「そんなこと気にするなって。元々、私の両親が、このコンビニの系列店を経営していてさ。それで頼み込まれたんだよ。というか、お前だって、この時間帯に外に出てたらダメだろ」
「そ、そうですね。家から近かったので、すぐに戻れば大丈夫だと思ったので」
「この近くの家に住んでるのか。まあ、いいや、バイトの件は絶対に言うなよ。私との約束な」
「は、はい」
「それと、これをやるから」
先輩からおにぎりを二つ貰った。
「それ、廃棄する予定だったんだ。さっき賄いで貰ってさ。私一人じゃ食べきれないし。それに、腹が減ってそうな顔をしているしさ」
「今、凄く腹が減ってたので助かります。でも、五月雨先輩の分は?」
「これ。こんだけあるんだ」
先輩が手に持っているコンビニ袋の中には、弁当二つとサンドウィッチが二つも入っている。他にも飲み物などもあった。
「やっぱり、おにぎりじゃなくて弁当にする?」
「いいです。そんなに奢ってもらっても申し訳ないので」
「貰った奴だし、全部でもいいんだけどさ。私は普段からコンビニの余りものを食べてるから味も何となくわかるし」
先輩は見た目的には一見怖そうな感じがするが、話してみると意外と優しい感じの人だ。
「ここにずっといると、色々問題あるだろ? 別のところに行かないか?」
「そうですね」
二人はコンビニから離れることにした。
翔は、実質タダで食べ物にありつけたのだ。
腹の気分も良くなり、夜の風を感じながら歩き出した。
「何か悩んでいる事ってある?」
コンビニから少し離れた住宅街の夜道を一緒に歩いていると、五月雨先輩から問われた。
「そこまで悩みはないですけど」
「図書部って、廃部になるとか噂で聞いてさ。困ってるのかなって」
先輩は翔の方を見て、心配そうな顔を浮かべていた。
「その件に関して大丈夫だと思うんですけど」
「そうか?」
「はい。一応、紫先輩が対策を考えられていますし」
「何とかなりそうなのか。だったらいいんだけど。詩乃って、あまり私に相談してくれないんだよね。私が図書部でないってのも理由かもしれないけどさ。詩乃って、人をさけてるところあるじゃん」
友達なのに、少し距離を置かれている感じがして、先輩的には、それが悩みに繋がっているようだった。
「そうですね。あまり他人と会話しているところ見ないですし。でも、部活中は普通に話しますけどね。この前の昼休みの時だって、図書部の仕事が無いのに一人でやってきて、ヘッドホンで音楽を聴いて本を読んでいましたし」
翔は紫先輩のことについて、知っている事を淡々と話す。
「お前ってさ、色々見てんだな」
「え?」
「だって、そこまで詩乃の事を観察してるって事はさ。もしかして、気になってるとか?」
「え……なんて言いますか、色々な経緯があって、先輩の方から誘われて付き合うことになったんですけど」
「そうなのか? でも、詩乃の方からって珍しいな。何かあったのか?」
「い、いいえ。多分、何となくだと」
おっぱいを触り、その責任を果たすために付き合うに至ったとは流石に言えなかった。翔は適度な言葉で紛らわしておいたのだ。
「付き合うってことはさ。やっぱ、どっかにデートに行くんだろ? どこか決めてるのか?」
「まだ、その決めている途中だったんですけど。紫先輩は、どういう場所が好きなんでしょうかね?」
「それは、多分、本屋かな? あとは、静かな場所で雰囲気がいいところとか。詩乃って、あまり趣味の話もしないしさ。深くはわからないけど、大体、そんな感じだと思うよ」
「そうなんですね」
「でも、詩乃が嫌がることはするなよ」
「は、はい。わかってます」
そう言われると、ますます紫先輩と付き合うに至った経緯を話せなくなる。
翔は先輩に相談にのってもらいながら、夜道を歩き続けるのだった。
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