第2話 これからどうすればいいんだろ……

「廃部⁉ ど、どういう事なんですか! でも、図書部って、香奈ちゃんのお陰で何とか改善できたって。この前、紫先輩言ってましたよね?」


 湯浅充希ゆあさ/みつきは椅子から立ち上がり、テーブルの反対側の席に座っている先輩へ問いかけていた。


「それは、そうなんだけどね。ちょっと、この前の部長会議で色々あったのよ。本の貸し出し件数だけでは実績に繋がらないって」

「そんなぁ。私、この部活以外に行けるところが無いのに」


 充希はガッカリしていた。

 彼女は席に座り直すが、ショックを隠せない様子だ。


「では、どうすればいいのですか?」


 充希の右隣席に座っている香奈が、紫先輩に問う。


「実績を積む事らしいの」

「実績ですか? でも、どういう風にでしょうか。図書部としての活動はちゃんとしていますし。以前、生徒会長が、ここに来た時、評価していたと思うんですが」


 谷代香奈やしろ/かなは納得がいっていないようだ。

 彼女は本が好きで、この図書部に今年の四月から所属し始めたのである。


 香奈は入部してから真剣に部活として取り組んできたのだ。彼女こそが一番、図書部としての業績を高めてきた。


 だからこそ、彼女は自分の中で受け入れられずにいたのだ。


「そうなんだけど。ちょっとね、生徒会長の中で方針が変わったみたい。部活である以上、学校に貢献しないといけないわけで」

「学校に貢献できる実績ですか……」


 香奈は悩んでいた。


 テーブルの周りに座っている四人全員が無言になり、図書館自体に沈黙が訪れる。




「ねえ、あなたには何か提案ある?」

「え、俺ですか?」

「そうよ。さっきから何も発言していないじゃない」

「そ、そうですね」


 何がいいんだろ……。


 突然、右隣にいる紫先輩から問われても、すぐに良い案が頭に思い浮かぶわけでもなく、唸ってしまうのだった。


「何もないの?」

「いいえ、そういうわけではなく……」


 刹那、紫詩乃むらさき/しの先輩のおっぱいが視界に入った。


 制服越しでも、その爆乳さが際立っている。


 さっき、揉んでしまったが、片手だけでは十分に揉むことができていなかった。


 それほどに、先輩はデカい。


 どれくらいのカップ数であるかは定かではないが、未だに手の平に残る感触が、翔の性癖を刺激するのだった。


 いや、今はおっぱいの事じゃなくて。


「おっ」

「なに?」

「い、いいえ、そうじゃなくてですね。実績なら、どこかにシナリオを送ってみるとかはどうですかね?」


 鈴木翔すずき/しょうは勢い任せで提案した。


「シナリオ?」

「はい」


 紫先輩は悩んだ後、それもいいかもしれないと、言葉を漏らしていた。


「シナリオなら……今、シナリオの応募を受け付けているサイトがあったと思うので、そこに応募するのはどうでしょうか? 確かですね、来週の金曜日までが締め切りだったはずです」


 香奈は席に座ったまま、テーブルの上にあったタブレットで、応募サイトのHPを開いていた。


「これです」


 香奈は席から立ち、見やすいところに置く。


 他の三人も立ち上がり、そのタブレットの画面を覗き込むように見やる。


「短編コンテストね。こういうのがあるのね。短編シナリオの他に、短歌や、俳句、広告で使うキャッチコピーの受付もしているのね」

「そうですね。どうですか、紫先輩」


 彼女は腕組をして悩む。


「それしかないかもね。手短に実績を積むなら」


 やれることがあるならば積極的に参加した方がいい。

 先輩の中で、そのような結論に至ったようだ。


「紫先輩は物語を書いたことがあるんですかね?」


 翔は一応、聞いておいた。

 先輩は普段から小説を読んでいるところを、図書館で見たことがある。

 業務のない昼休みの時間帯も図書館にやってきて、ヘッドホンで音楽を聴きながら読書しているのだ。


「ええ、あるわ。昔から趣味だったし」

「そうなんですね。だとしたら、何とかなりそうですね」


 翔自身も、昔、小説を書いていた。

 充希も、後輩の香奈も、普段から本を読んでいるのだ。

 だから、多分、大丈夫だと翔は思った。




「それで、どんなジャンルを書くの? サイトを見る限り、なんでもいいって」

「それは、これから皆で決めればいいよ」


 疑問に感じていた充希に反応するように、先輩が仕切り出す。


「一応、聞いておくけど何がいい?」

「私は、エッチな作品とか」

「それはダメ。それで実績を掴んでも、生徒会から色々と言われると思うし」

「えー、いいと思うんですけどね」


 充希は言い提案なんだけどなぁといわんばかりの態度で席に座っていた。


「でしたら、紫先輩はどんなジャンルがいいと思うんですか?」

「それは、まあ、普通の作風で、日常系でもいいと思ってるけど」


 充希の問いかけに、先輩は考えながら話す。


「日常系? んー、それでもいいけど、普通すぎないですか?」

「普通でも別にいいと思うけど。短い作品しか応募できないなら、比較的わかりやすい感じにしないとね」

「そうですね。そうしましょう」


 後輩の香奈はそれでいいと頷いていた。


 あと残るは一人、翔だけだ。


「俺もそれでいいと思います」

「では、一応、ジャンルは日常系ということで決まりで。後、内容に関しては、明日までに決めてくるように。一応、課題にしておくから」


 紫先輩は三人の姿を確認し、それぞれの表情を確認しているようだった。


「わかりました」

「じゃ、明日から頑張りましょうか。私、少し用事があるので、これで終わりなら帰りますね」


 充希はテーブルの本を通学用のバッグにしまうと、席から立ち上がる。


「私は、もう少し本の貸し出しのデータを見てから帰ります」


 充希は図書館の外へ。

 香奈は、図書館のカウンターへ向かって行く。

 香奈はパソコンの前でマウスを弄り始めていた。


「でも、遅くまではいないようにね。私らはもう帰るから、あとの事は頼むから」

「はい」


 香奈はパソコンの前で、あとの事は任せてくださいと言い、再び作業を続けていた。


「私らって、俺も含まれてるんですか?」

「そうよ。それに、後で話をするっていったでしょ?」

「そ、そうですね」


 紫先輩は、おっぱいを揉まれた事を忘れていない。

 むしろ、絶対に忘れる事はないだろう。


 翔は帰る準備ができた瞬間、先輩に手を引っ張られ、学校から立ち去ることになったのだ。

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