第13話 驚異的な成長

名前:

種族:ヘビーリザード

年齢:

状態:通常

LV:9

 

HP:177/177

SP:20/20


スキル:『火球』、『噛みつき』



名前:

種族:ブラックウルフ

年齢:

状態:通常

LV:11

 

HP:201/201

SP:5/5


スキル:『鉤爪』、『嗅覚探知』



 春重の視界には、二体の魔物のステータスが表示されていた。

 どちらも初見の魔物であるが、今の二人なら十分討伐できるレベルである。


「阿須崎さん、手前の狼を俺が引きつけるから、奥のトカゲを頼む」


「はい……!」


 春重は両手剣を構え、ブラックウルフへと突っ込む。

 その両手剣、ブラックルーラーには『両手剣補正+2』というパッシブスキルが備わっている。これには『両手剣』スキルのレベルが二つ向上するという効果がある。



名前:山本春重

種族:人間

年齢:38

状態:通常

LV:19

 

HP:384/384

SP:549/549


スキル:『万物支配ワールドテイム』『鑑定』『精神耐性』『ナイフ(LV4)』『緊急回避(LV4)』『索敵(LV3)』『闘志』『直感』『両手剣(LV3)』



 いつの間にか手に入れていた『直感』スキル。そして補正を得てレベル3になった両手剣スキル。これらを組み合わせることで、春重はブラックウルフに対する理想的な一撃を導き出した。


「ふッ!」


 息を吐きながら、春重は剣を振るう。黒い一閃が宙を駆け抜け、回避行動を取ろうとしたブラックウルフの体を、深々と斬り裂いた。

 鮮血が舞い、そのままブラックウルフは崩れ落ちる。

 

 それをきっかけに、ヘビーリザードは春重をもっとも大きな脅威と認識した。意識が自分から外れた瞬間。真琴はこの瞬間を待っていた。


「……そこ!」


 引き絞った弓から放たれる、鋭い矢。

 スキルレベルで得た補正によって、岩をも穿つ威力を持つその矢は、即座にヘビーリザードの脳天を貫いた。

 ヘビーリザードは一歩も動けぬまま、伏せるようにして絶命する。


「一撃か……凄まじいな」


 モンスターの脳天に突き刺さった矢を見ながら、春重は感心する。


「山本さんの剣もすごかったですよ。今日初めて使ったんですよね?」


「ああ。この剣自体のスキルのおかげだよ」


 よっこいしょと言いながら、春重はブラックルーラーを背中に納める。


「いいですね、武器にスキルがついてるの。羨ましいです」


「そういう阿須崎さんも、補正なしで『弓術』レベル4って、結構すごいと思うんだけど」


「もともと弓道をやってたからなのか、探索者になったときには、すでにレベル3だったんですよね」


「へぇ……そういうこともあるのか」


 初期スキルは探索者ごとにランダムだが、本人がこれまで培ってきた経験によっては、スキル発現に大きな影響が出ることが分かっている。

 真琴のように弓道をやっていた者は『弓術』スキルが目覚めやすく、剣道をやっていた者は『両手剣』や『片手剣』に目覚めやすい。さらにはもともとの練度によって初期値が上がることもあり、最大でレベル5が確認

されていた。


「頼もしいな。今の調子で頼む」


「こちらこそ。前衛はお任せします」


 二人とも、コンディションは最高だった。

 足並みを揃え、二人はさらに奥へと進んでいく。



 ヘビーリザードは皮、ブラックウルフは爪をドロップする。

 どちらも素材としては大したものではないが、それでも一つ五百円程度には換金できる。合計で四十匹も倒せば、二人とも一万円の収入が見込める。

 ダンジョン化によって物価が上がり、日給一万円というのはなかなか厳しい収入だが、ならばその分多く倒せばいいだけのこと。


「よっこいしょっと」


 小慣れてきた春重が、ブラックウルフの胴体を両断する。死体はすぐに粒子になり、漆黒の爪だけが残った。

 これまでに二人が倒したモンスターの数は、六十匹を越えていた。一人あたり一万五千円の収入である。


 ――――順調だな。


 ここまで一切苦戦することなく探索を進められている。

 油断は禁物。そんなことは百も承知だが、すでに二人はこの階層を鼻歌でも歌いながら素通りできるくらいには、大きな成長を遂げていた。



名前:山本春重

種族:人間

年齢:38

状態:通常

LV:25

所属:NO NAME

 

HP:544/544

SP:782/782


スキル:『万物支配ワールドテイム』『鑑定』『精神耐性』『ナイフ(LV4)』『緊急回避(LV5)』『索敵(LV4)』『闘志』『直感』『両手剣(LV5)』



 レベルが上がれば上がるほど、身体能力も向上する。

 それとスキルの成長も相まって、彼らの実力はすでに三十階層を余裕で制覇できるほどの段階に到達していた。


「よし、そろそろ階層を進めようか」


「……はい」


 弓を背中に納めながら、真琴は前を行く春重の背中を見る。


 ――――おかしい。


 自分の体に起きている変化に対して、真琴はただ困惑していた。



名前:阿須崎あすざき 真琴まこと

種族:人間

年齢:18

状態:通常

LV:23

所属:NO NAME

 

HP:487/487

SP:511/511


スキル:『弓術(LV6)』『緊急回避(LV2)』『危険感知(LV3)』『索敵(LV3)』『集中』『装填速度上昇』



 レベル15のときから、真琴はレベルの伸び悩みを感じていた。次のレベルに上がるための必要経験値が、爆発的に増えた感覚があったのだ。

 しかし、この階層での戦闘を経てレベルが8も上がっている。

 敵のレベルが上がり、狩りの効率も上がったとはいえ、ここまで一気に成長するのは不自然でしかない。

 真琴自身が特別なスキルを覚えた様子はない。つまり、理由は春重にあると考えられる。

 すべての理由は、彼が索敵用として配置しているスライム三兄弟にあった。詳しい計算式は省略するが、彼らがいるだけで、春重たちの得る経験値には2.5倍もの倍率がかかっている。

 計算上、ソロで倒したときよりも多くの経験値を手に入れているのだが、二人はそんなこと知る由もない。

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