「道」の話
あと
僕と共通の趣味を持つ友人に加賀、田辺、葉山という3人がいる。
ある時にその趣味の大型イベントが北海道で開催されるという話を聞き、彼ら3人と自分も含めた4人でイベントに参加する事にした。どうせ行くならと2泊3日で観光地を回ろうという話になり、それならレンタカーを借り陸路から東北経由でフェリーで北海道に上陸しようという事になった。
そんな旅行の初日。
レンタカーで仙台、盛岡に立ち寄ってグルメを堪能し、苫小牧行きのフェリーに乗るため青森の八戸へと向かっていた。
助手席に加賀、後部座席に田辺と葉山が座り、翌日のイベントの話をあーだこーだと喋りながら僕は運転をしていた。
高速道路をよく使う人ならわかると思うが、夏場に高速を走っているとフロントガラスに虫がぶつかり白いあとが残る。この日も走っているとフロントガラスに虫のあとがつき、そのたびに何度もウォッシャー液を出しながらワイパーを動かしていた。
辺りが少しずつ暗くなってきた頃、助手席の加賀がしばらく何も話していない事に気付いた。助手席を見ると、加賀は膝を抱えて震えている。
「どうした?車酔い?」
加賀は何も答えずに震えている。
「もうすぐパーキングだから休憩しようか?」
だが加賀は返事をせず、ブツブツと何かを呟いている。
「くる。くる。なんかくる。くる。」
来る?何が?疑問が浮かんだその瞬間、
ブワッ
車内を強風が抜けたような感覚があり、髪が揺れた。窓は開いていないのに。
今のは何だったんだ?加賀は大丈夫か?と助手席を見ると、気を失ったように眠っていた。ルームミラーで後部座席の2人を見ると同じように髪が乱れている。
「今、なんか風、吹いたよな?」
「うん」
2人は頷いた。やはり同じように風が吹き抜けたような感覚はあったようだった。
何が起きたのか気になり、一旦次のパーキングに入り車を停めた。おかしな事はないか外に出て車を見ていると、車内にいる時は気付かなかったが、フロントガラスに白いあとが付いていた。虫よりもかなり大きいあと、直径30cmくらいあった。何か大きな丸い物がぶつかったように。
「どうしたの?」
目を覚ましたのか、加賀が降りてきた。
「お前、大丈夫なのか?様子がおかしかったけど」
「え、何かあった?」
気を失うまでの一連の事を何ひとつ覚えていない。そこで何があったのか説明したのだが、やはりピンとはきていないようだった。「くる」と言った事も覚えていなかった。
あの時、加賀が「くる」と言ってたものが何かはわからないが、きっとその丸い『あと』だったのだろう。車内を通り過ぎていった風もその『あと』なのだろう。だが、この丸い『あと』をつけた物の正体は、結局わからなかった。
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