近所のおじさん

ファミレスでご飯を食べていると長い間会ってなかった友人に声をかけられた。


久しぶり、と懐かしい思いで雑談したあと、「最近こんな事があったんだ」と不思議な話をしてくれた。


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いつも道で会うと挨拶してくれる近所のおじさんがいる。「こんにちは」というと「こんにちは」と返してくれるそうだ。


その日も互いに「こんにちは」と挨拶を交わしたのだが、ある事を思い出した。


「あ、おじさんこの前死んだんだった」


数日前におじさんのお葬式があり、友人もご焼香をしたらしい。だが今日もいつものように歩いて挨拶を交わす、どうやら自分が亡くなった事に気付いてないのでは、と思ったそうだ。


ある日、挨拶をした後におじさんと少し世間話をした。


「そういえば葬式の時も奥さん泣いてましたよ、そんな悲しませるなんてダメですよ」


「最近、葬式なんかあったかい?」


話の流れでついついおじさんの葬式の話をしてしまった。これは仕方ないと、友人はおじさんがもう死んでいる事を伝えてしまった。


「え?俺ってもう死んでるの?」


その瞬間、おじさんの身体に異変が起こった。身体の周りに黒い影のようなものがいくつか現れた。それは手のようだった。


「なんだ、これ!?」


するとその黒い手がおじさんの身体を掴み始めた。黒い手はおじさんの身体を引っ張り、その箇所が少しずつ欠けていき空洞のようになった。


「たすけて!たすけ…て…くれ……」


いくつも身体に穴のあいたおじさんは、その断末魔を最後に消えて無くなった。それから道でおじさんと会う事はなくなったそうだ。

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話が終わると「じゃあ、またな」と友人は去っていった。


なんだあいつ、久しぶりに会ったのに喋るだけ喋って帰って行きやがって、そう思っていると「あれ?」とある事を思い出した。


「あいつ大学の時に死んだんじゃなかった?」


その友人自身も幽霊だったのだ。



それからそのファミレスに行くと、時々その友人がいることがある。少し雑談した後、毎回最後におじさんの幽霊の話をして去っていく。


もしかして友人は自分が幽霊だと気付かれたいのだろうか。だが、もう死んでる事を伝えるとおじさんのように友人も黒い手に連れて行かれるかもしれないと思い、死んでいる事を伝えられないでいる。

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