白いモヤ

昔住んでいた家は築数十年の年代物の家で、昔ながらの和風建築だった。家のちょうど中央あたりに畳の居間があり、そこからいくつかの部屋が襖で仕切られ、居間から直接行き来できるようになっていた。割と広い家だったので姉や弟1人1人の部屋はあったが、居間の居心地がいいため両親や祖父母、弟など家族はみんな寝る時以外はその居間ですごしていた。


その日、家には自分と弟の2人しかいなかったが、2人ともいつものように居間でくつろいでいた。ゴロゴロとしているとふと、隣の部屋の襖が開いている事に気付いた。


確かに閉めたはずなのに


そう思ったが襖を閉めるためにわざわざ立ち上がるのも面倒で、でも少し気になって何気なくその部屋の方を見ていた。


「ん?」


違和感を覚えた。

襖の隙間から見える隣の部屋、真っ暗な部屋の奥に2つ棚があるのだが、その棚と棚の間に何かが見える。白いモヤのようなもの。見間違いだろうかと目をこするが、やはりモヤが見えていた。


何か煙の出るようなものがあるんだろうか、目をこらしてみるとそれはただのモヤではなく、模様のような物があるのがわかった。


更に目をこらす。

少しずつ形が見えてきた。


……白い……顔………?



バチン!



次の瞬間大きな音が鳴り、部屋が真っ暗になった。


ドクンドクンドクンドクン


突然の事に心音が速くなる。頭が混乱していた。何が起きた?落ち着け。そう心の中で唱え、深く呼吸をして整える。何度か深呼吸をして少し落ち着いてきた所で、暗闇から弟の声がした。


「ブレーカー落ちたのかな、ちょっと見てくるよ」


「おー頼む」


返事をしてから、さっきの白い顔について考えていた。


あの顔はいったい誰なんだ?何者なのか?どうやって家に入り込んだ?そもそもあれは人なのか?この世のものではないのでは?いろいろ頭を巡らせたが答えは出なかった。


「やっぱりブレーカーだ、いま直すわ」


弟の声が聞こえてきた。そしてすぐに電気が点いた。



目の前にさっきの白い顔があった。



「うわぁっ!」


思わず叫んで、後ずさりをした。


「どうした、兄貴!?」


「かお……」と言いかけてキョロキョロと周りを見たが、もうその白い顔はなかった。

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