第7話 発達障害に会社員なんてムリ?!

無事に大学を卒業したものの、私の進路はまるで決まっていなかった。

大学四年生の夏、周りの皆が就活しているから、とりあえずやっておくか…という浅はかな動機で、試しに一社だけ受けてみたが、何も考えていないも同然の私は当たり前のようにアッサリ落ちた。


就職に関しては、ハナから諦めていた。なんなら子供の頃から諦めていた。

人から言われたことを理解できない、人が当たり前に出来ることが出来ない自分には、社会的な責任の課される「会社員」なんて無理だろうと思った。

決められた枠からはみ出てはいけない、社会に適応しなければいけない。所謂世の「会社員」にはそんなイメージを抱いていたので、日頃から能力の凸凹ゆえに「はみ出しまくり」の自分にはとても無理だと思わざるを得なかった。


しかし学校を卒業した以上はどうにかして食い繋がなければいけないので、とりあえずアルバイトを二つ掛け持ちすることにした。

そのうちの一つが、たまたま友達の紹介で得た、デザイナーのアシスタントという仕事だった。


不思議なことにアルバイトというだけで、いきなり「あなた正社員です」と言われるよりは随分と気楽な感じがした(掛け持ちしていることも気楽な要因だったかもしれない)。

気付いたら一年ほど働いていたが、その頃にはすっかりデザインの仕事が楽しくなっていて(というかあまり「仕事をしている」感覚がなかった)、アルバイトだの社員だのという雇用形態云々は最早どうでもよくなっていた。


しかしもし最初に「正社員」として採用されていたら、その肩書きのイメージに囚われて、自分のコンプレックスにまで意識が向いてしまっていたと思う(それくらい「正社員」の響きは、社会的に威厳があるというイメージを植え付けるもので、圧倒される、恐ろしいもので、自分には到底無理だと思わされるものだった)。

自分の場合は最初に「アルバイト」としてキャリアをスタートしたことで、気負いすぎずに働きながら自然にデザインという仕事の楽しさを知れたので、結果的に良かったのだなと思う。


その後転職をして初めて「正社員」として雇用されることになるのだが、この転職先で大きな挫折と絶望を味わうことになる。

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