第2話 勇者の君臨

「ネイロ!!」


焼けた村の中、私は叫び続けていた。

唐突に消えたネイロ、

そして、唐突に起きる村の崩壊。


それには何かしらの因果関係があるのかもしれない。


もう家は見えない。

焼けて倒れた。


何でこんなことになったんだろう。

周りには悲鳴をあげる村のみんな。


私自身も泣き叫びたいが、何故か冷静になってしまうのだ。

もう息をするのが苦痛に感じてくる。


光がありすぎてもういらない。


もう眠い。


寝ていいかな?


その時、まだ全焼はしてないネイロの家の中にネイロを発見した。


ネイロの側には火が迫っている。

親も焼き死んだ私の唯一の希望が目の前で消え果てている。 


今だ。


身体の痛みを忘れて、走るんだ。


ネイロとは昔から一緒だった。

何をする時もほぼずっといる。

そんな関係に私は満足していた。


この時がなくなるのは嫌。


自分には魔術がある。

ネイロにはない魔術が。


ならば、私がネイロの為にやるしかないじゃない。


「今、私に勇気を!」


光の魔術で体を操り、人が出せない力を使え!


目の前の障害物なんて忘れてしまえ!


その時、私の手元に光の剣が現れた。


目の前の障害物を全て砕いて、ネイロの元に着く。


「今、来たよ」


ネイロは驚いた形相でこちらを向く。

その時にはもう意識なんて無かった。





















目が覚めると見たことのない天井。

周りを見回すとネイロがいた。


「ネイロ、ここは?」


「ここは、隣村の民家だよ。

           助けてくれたんだ。」


「よかった。、

大丈夫だった?」


「うん、すぐに隣村の兵がこっちにやってきて、」


「そうだったんだ。」


この会話でもう

知ってるけど、

知ってるけど、

村の皆は死んだ事が理解できた。


「この後はどうしよう?」


「あの時、家から金貨を集めていたんだ。」


そう言って布袋を見せてくれるネイロ。


「魔物でも倒して生計を立てるしかないね。」


「うん、がんばろ。僕は剣技なら君に匹敵するから」


「そうね。」


私はこの時、決意した。


私の村を襲った災厄の主を無くそうと。


ネイロと一緒に幸せを築いていこうと。





これが、勇者の君臨だ。



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