第5話 無事に夫婦へ
石橋くん、いや、司くんと再び付き合い始めて1年。医師として働いていた病院をやめることになった。彼と結婚して海外へ行くからだ。
プロポーズは、高校の頃に付き合い始めた日にしてもらった。高校時代に付き合っていた想い出も一緒にプロポーズをしたかったのだ、と。シーズン中にも関わらずその為に帰国してくれたのだ。極秘帰国だったらしく、司くんの部屋だった。レストランとか夜景がきれいな所ではなくてごめん、と謝られたけれど、私にとってはプロポーズがすごく嬉しかったので場所はどこでも良かった。そう伝えたら、良かった、と言って涙目になっていた。
やめるときは、同僚、先輩後輩だけでなく、患者さんやそのご家族にも、お祝いの言葉と感謝の言葉をもらった。嬉しくて、寂しくて、泣いてしまったけれど、最後には笑顔でお別れが出来た。
そして。引っ越し前日。最後に家で、両親と3人で夕飯を食べた。お父さんは、すごく美味しいお酒を用意してくれて、お母さんは、私の大好きなおかずをいっぱいつくってくれた。海外に行くから、今までみたいに連休だから実家に帰るということができない。つまり、今までみたいに気軽に親に会えなくなるのだ。今、それをすごく実感した。司くんについていく。そう決めたのは私。でも。大好きなお父さんとお母さんに会えなくなるのはすごく悲しい。そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。お母さんがこう言ってくれた。
「真菜。結婚して司くんと生きていく。だからといって親に頼ってはいけない、ということはないの。いつでも連絡してきなさい。私たちも時間がとれたら石橋さんたちと一緒に司くんの試合観に行こうと思ってるし」
「ああ。そうだな。たまにはビデオ通話もいいだろう」
「うん。うん。ありがとう」
「それから、真菜。何かあったら司くんに言いなさい。我慢してしまう癖があるからな。そしてどうしても無理だったら、限界まで我慢せずに帰ってきなさい」
「そうね。体を崩すことはしないで」
そう言って私を抱き締めてくれた。
その夜。何十年ぶりか。3人で川の字になって寝たのだった。
翌日。空港には司くんのご両親と私の両親がいた。司くんがお願いしたらしくマスコミの人たちはいなかった。
寂しくて悲しくて私は泣いてしまったけれど、みんなが温かい言葉をかけてくれて、また泣いてしまった。
そして。
「またね」
そう言って私と司くんは、4人とバグをした後、飛行機に乗り込んだのだった。
海外で生きていけるのか。英語力の不安はもちろん、司くんのチームメイトや彼らのご家族と良い関係を築いていけるのか。色々と不安なことはあるけれど、隣に司くんがいて、日本に心強い味方が4人もいる。それだけで、なんとかなるような気がした。
「真菜。俺を選んでくれてありがとう。不安なこといっぱいあると思うし、寂しい思いもさせちゃうかもしれないけど。でも。俺はお前を絶対に幸せにするから。愛しているよ」
「うん! 司くんを支えられるように頑張るね。私も愛しているよ」
これから先何があっても司くんのそばを離れないよ。その思いを込めて司くんの腕に抱きついた。
君を諦められるわけないでしょ しがと @Shigato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます