第51話
一途すぎる母さんと超絶母さんラブの父さんの息子だぞ!?そんな俺が二股なんてするわけないだろ!
「そう?してないならいいんだけど」
「俺は母さんたちと一緒で一途なんだよ」
「宮野さん一筋ってことかしら?」
「だから付き合ってねぇって」
何回やるんだよ、このやり取り。
俺には、志藤先生という心に決めた人がいるんだ。ま、肝心の志藤先生には振られてるんだけど。
去年の真面目な時期の俺が告白して駄目だったから、いわゆる脈なしというやつだな。
「恋愛は今のうちにしておいたほうが良いわよ?大人になってからだと苦労するって聞くから」
「アドバイス感謝するよ、それはいいから帰ってくれ」
「薄情な息子ね、と言いたいけど女の子二人を待たせてるものね。また今度、様子を見に来るわ」
「ああ。今度は事前に連絡をくれ」
はぁ、流石に思春期の息子に構い過ぎじゃないか?と思う。そんな構い過ぎ母さんを見送ってから家に入り鍵を閉めて二人がいるリビングに行く。
リビングでは美少女二人が仲良く談笑しているところだった。
遮るのは悪いと思ったが、談笑中の二人が俺に気付いた。
「……二人とも待たせて悪かった」
「いえ、こちらが連絡も無しにいきなり来たのが悪いので……こちらこそすみません。家族の時間を邪魔してしまって」
律儀に頭を下げる一ノ瀬さん。
「謝らなくていいって。いきなり来たことは気にしてないし、俺の母さんのことは全く気にしないでいいから」
「そ、そうですか……。神崎君がそう言ってくれると気持ちが楽になります」
頭を上げ微笑む一ノ瀬さん。っと、後ろのキッチンのほうから声が掛かる。
「そうそう、神ちゃんは悪くないよー。……はいどうぞ」
そう言って宮野さんがお茶を出してくれた。そして俺の前の椅子に座る宮野さん。
「ありがとう」
「今日の神ちゃんは感謝してばっかりだねぇ」
「とてもいい事ではないですか。感謝は大切です」
確かに感謝は大切なんだけど、それよりも気になることがありまして。宮野さん、君は何で家の茶葉の保管場所を知ってるんですかね?……怖いから聞かないけど。
お茶を飲んで少し落ち着いたし、本題に入ろう。
「……それで一ノ瀬さん、話って?」
「はい。話というのは生徒会選挙の後の事についてです」
選挙の後?何か行事でもあったっけ?行事だとしたら、準備と片付けを手伝えとかかな。
「先生との契約……というより約束としては神崎君の生徒会での奉仕活動は明後日の選挙までという風になっていました」
「えっ?そうなの!?」
初耳である。驚きのあまり、さっきまでの落ち着きがどっかに行ってしまった。あと「なってました」ということは変わったのか。また何も知らないうちに事が進んでるな。
「はい。ですが選挙関連の事でバタバタしていたこともあり、生徒会としての活動がほとんどになっていましたよね?」
「そうだな」
「それでなのかはわかりませんが、奉仕活動の期間を冬休みに入るまで、に延ばす話が出ているんです」
約二か月の延長か。いくら何でも延ばしすぎじゃないか?一週間延ばすとかならわかるけど……奉仕活動の件は田中先生が関わってるしなぁ。田中先生は自分がした約束は絶対守る人だ。そんな人が、たとえ他先生からそういう提案があったとしても延長を許すなんてありえない。
「一ついいかな」
「どうぞ」
「それ、先生から出た話?」
「いいえ……」
やっぱり。ということは、こんな提案をして且つその提案を田中先生に通すことが出来る人物はただ一人。
「生徒会長からです」
そう、一雫ただ一人である。
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