第49話

 「お前みたいなやつが天野さんに相応しいわけ無いだろ!!」


 「グッハァ」


 またまた、クリティカル。俺のライフはゼロに。


 神崎 DOWN。

 WINNER 名も知らぬ生徒。


 「「そうだそうだ」」


 周りの取り巻きのような生徒からも、追い打ちをかけられる。オーバーキルってやつだ。


 「天野さんは騙されている。こいつは悪い噂しか無いクソ野郎なんだ!」


 おいおい、酷いな。面識がない相手にそんな事を言うなんて。……反論はできないけど。


 「知っていますよ。神崎君がどうしようもない人だってことは」


 「だったら何で!!」


 食い気味に怒る相手に対し、天野さんはふっと微笑んでそしてわざとらしく俺に身を寄せ言った。


 「私は、私を信じていますから」と。


 俺は天野さんに腕を掴まれて連れられていく。名前も知らない生徒だが、下校していく他生徒に今の場面を見られていたことは気の毒に思った。


 天野さんに連れられてある程度学校から離れたところで、天野さんが俺の腕を離す。


 「ごめん。いきなり引っ張ったりして」


 「いいよ、おかげで助かった」


 まさか、女の子に助けられる日が来るとは……。   

 いや、いつものことだな。最近は特に助けられてばっかりだ。


 「それより、何を話してたんだ?」


 「聞いても気分が悪くなるだけだと思うよ?」


 「そう言われると余計に気になる」


 カラカラと自転車が音を鳴らす。天野さんの話を聞きながら帰路をたどる。この関係が明後日には終わるのかと思うと、ほんの少しだけ淋しくなった。




 会議室にて。


 「ある程度絞れましたな」


 「ええ。とはいえ、それでも去年までよりは多いですけど」


 校長と教頭が今日の審査のことを話していた。


 審査については演説を見た先生方の総意で合否を決めている。ここで落ちてしまった生徒は、明後日の本番には参加できないという決まりだ。もちろん立候補者全員その事を事前に知っている。


 「教頭は誰が当選すると考えている?」


 コーヒーを飲み、書類に目を落としながら会話をする二人。


 「今の生徒会のメンバーそのままだと予想はしてる。他の生徒も見どころはあるが、厳しいと」


 「なるほど。概ね私も同じ意見だ」


 「しかし……二年の天野さんはわからない」


 「神崎君がいるからか?」


 「ええ。どうして今の彼を代理人に選んだのか私にはわからない」


 「今日の演説は問題なかった。たとえ周りからの評価が悪くてもそこまで影響はないだろう」


 「どうだか」


 「……まるで、当選してほしくないような言い方をするな?」


 「その気持ちがないわけではない。……神崎君は、ここで失敗をしたら戻りそうな気がするのでな」


 「一年の時のような模範生にか……」


 「私個人としては、そうなってくれたほうが得になるという気持ちがあるのでな」


 「私にもその気持はある。それを否定はできん」


 お互いに神崎の過去の優等生っぷりを知っているばかりに、その様な気持ちを少しは抱いてしまう。


 「ふぅ。今回の我々は生徒を応援することが仕事のはずなのだがな……」


 校長の哀愁に満ちた呟きは、誰にも届くことなく消えていった。






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 ヤンデレ姉妹どうにか今日中に投稿します。

 

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