第45話

 授業が終わった。瞬間、ガタガタガタと椅子を引く音がする。先生もびっくりしている様子だ。目が点になっている。


 「ど、どうした?もう授業は終わるが号令はまだだぞ?」


 「「「「「はい」」」」」


 何でハモってるんだよ!仲良しか。


 「おぉ、元気だな。ま、まぁいい。よし号令」


 号令が掛かりちゃんと授業が終わった。その後、俺は速やかに教室から逃げようとした。が、失敗に終わった。出入口を塞がれ、後ろから絞めらて拘束された。そしてクラスの人気者、赤石を筆頭に男子が詰め寄ってくる。


 「神崎。聞かせてもらおうか」


 「「「「「「「聞かせてもらおうか」」」」」」


 君たち何か増えてない?あと、赤石そんな威圧感のあるキャラだったっけ?


 「な、なにを?」


 一応惚けておく。これでもしかしたら、億が一の確率で逃げられるかもしれない。


 ドゴッ


 鈍い音が俺の耳元で鳴った。そう、あの温厚そうな赤石が床を殴った……のではなく取り巻きの一人が殴ったのだ床を。


 「聞きたいことは一つ、天野さんか?一ノ瀬さんか?」


 「「「「「「「「「「答えろ!!」」」」」」」」」」


 また増えた?!


 「ちょっと、待ってくれ」


 「待たない。答えろ」


 「誤解なんだ」


 「誤解などない」


 取り付く島もない……か。

 ならば、奥の手だ。


 「俺は………実は……林が好きなんだ!!」


 「…………」


 「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」


 教室中の空気が凍ったのかと思う程の静かな沈黙は、男子たちの大きな驚きの声によって破られた。


 「「「「「「「「「「「はっ?!」」」」」」」」」」」


 「はぁ?!」


 「わーお」


 クックック。意外にも上手くいきそうだぞ、これは。……あと、最後にちゃっかり腐女子(宮野さん)も反応するな!


 「な、何を言ってやがる神崎!てめぇ」


 「ホントのことさ、林。俺はずっとお前が」


 「うおぇぇぇぇ!!まじでキモイからそれ以上先を言うな。わかったか?!多様性なんて知ったこっちゃねぇ。もし、言うならてめぇの息の根をトメテヤル」


 「そんなこと言われても、これは真実の」


 「……それ以上その口を開くなぁぁあ!!!」


 ゴッ、と林のほとんど本気のグーパンが顔面にヒットして俺の意識は闇の底に沈んだ。




 「はっ」


 真っ白な天井………知らない天井だ。ここは一体?


 「そんなテンプレなことはしなくていいから。どう?意識はっきりしてる?」


 「ええ、ピンピンしてますよ」


 「そう、これは?」


 そう言って俺に見えるように、志藤先生が人差し指を立てる。


 「先生の恋人の数ですか……」


 「そう、元気みたいで結構」


 ああ。先生が離れていってしまった……。残念。


 あ~くそ。林の奴結構本気で殴りやがって。まだ頬が痛え。それにしても、あの後どうなったのかは非常に気になる。標的を俺から林へと林が自発的に逸らしてくれたから、どう対応したのか後でしっかり聞かないと。


 「神崎君。次の授業から参加できそう?」

 

 「今何時間目ですか」


 「三時間目」


 「じゃあ、いやですね」


 「わかった。教科担当に参加すると伝えておくね」


 「意地悪ですねぇ」


 「知ってるでしょ?」


 「そういうところも大好きです!結婚しましょう」


 「セクハラで訴えれないかなぁ……」


 「はっはっは。それされたら勝ち目無いからダメ」


 「隙あらば先生にため口を使わない。それに神崎君は恋人いるんでしょ?」


 先生も知っている……だと。やっぱり噂はどこまで広がっているかわからんな。


 「デマですよ。俺は独り身ですし、先生ラブなので」


 「今からでも授業に参加できそうね?」


 「はははは。冗談キツイですよ先生」


 「ふふ。そんなに褒めても課題しかでないわよ」


 やっぱりいい先生だなと思いながら、三時間目の授業を先生との雑談で潰した俺だった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いいと思いますよ?神崎&林のカップルも……。

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