第36話

 昼休み。


 俺は約束通りに生徒会室に向かうべく、前回同様に購買に行き適当にパンを二つ買う。昨日は焼きそばパンとチョコの入った菓子パンだったから、それを避けて購入する。


 四時限目が終わった瞬間に出てきているだけあって、周りに俺以外の人がまだいない。けれど天野さんは弁当だから、そのまま生徒会室に向かうのでどうしても俺のほうが遅くなってしまう。


 そう思うと、進む足が少しだけ速くなった気がした。……気がしただけである。


 


 生徒会室につながる廊下に来ると、天野さんとばったり会った。


 「早いですね、神崎君」


 「俺なりに急いだつもりだからな」


 「つもりですか。……とはいえ、それで時間のほうも余裕が出来ましたし、まずは昼食にしましょう」


 天野さんにジト目を向けられるが、どうやら許してもらえたようで切り替えたように生徒会室の戸に手を掛ける。


 生徒会室に入り、昨日と同じ位置に腰掛ける俺と天野さん。


 「昨日とは違うパンなんですね」


 「普段購買を使わないからな。試しに色々と買ってみてるんだ」


 「普段は学食ですか?」


 「そうだよ」


 すると天野さんが考え込むように、「うーん」と唸っている。


 いきなりどうしたんだろか?


 「提案です。神崎君」


 いきなり敬語を使う天野さん。少し真剣な提案かなと思い、何故か姿勢を整える俺。


 「何かな?」


 「月曜日と火曜日は、私が神崎君の弁当も作りましょう。条件としては……」


 「条件としては?」


 「神崎君の家の食材を使わせて貰います」


 それは、俺からしたら無条件で弁当を作ってもらえるということに他ならない。


 「じゃあ、取り敢えずは無条件で作ってくれるってこと?」


 「神崎君にとって、食材を使うことが無条件に入るんだ?」


 「ああ、俺一人では使われることのない食材達だからな。使ってくれるなら、むしろ嬉しいよ」


 「そっか。なら遠慮なく使っちゃうね?」


 「そうしてくれ」


 その話をしたあとは、昼食に戻る俺達。


 俺はパン二つだけなので、すぐに食べ終わってしまう。食べ終わって手持ち沙汰の俺は、天野さんの小さな口に食べ物が入っていくところを見て、背徳的な気持ちに一人でなっている。


 そんな気持ちになる、あまりにも変態的な自分の感性を俺は自分自身で疑う。


 これでは、林のことを言えないな。生徒会ハーレムを築くという林の夢と、俺の天野さんに対する変態的な思考。


 うーん……ギリギリ俺のほうがヤバイ奴だな。


 「あの、神崎君?そんなに、ジッと見られてると食べにくいというか……」


 口元を隠しなから、少し赤くなった顔でこちらに訴えてくる天野さん。


 「あ、ああ。ごめんごめん」


 可愛すぎないか?!天野さん。あの口元を隠しながらの照れ顔………クッソ!写真撮っときゃよかった。


 少し沈黙が続くかと思ったら。


 「そ、そういえば神崎君。林君ってどんな人?」


 ……はっ?なんで天野さんが林のことを聞いてくるんだ?何だ?好きなのか?あの変態が。


 「林?何でそんな事を?」


 直球に探りをいれる俺。


 「うん。葵ちゃんと話してたときに少し話題に上がって……。それで気になったから」


 「うーん。一言で言うなら、頭の回る問題児」


 「問題児なの?」


 「問題児だな。別に俺みたいに遅刻魔とかそういうわけじゃないけど、日頃の行いのせいで先生と他生徒からの信頼がほとんどない男」


 「………そっか。でも、優秀なんでしょ?」


 「うん。頭の回転は早いからな……。問題に対する対応力は高いよ、あいつ」


 「そうなんだ。ありがとう、教えてくれて」


 「全然いいよ」


 天野さんと話してるうちに時間は、どんどんと過ぎていく。残った休み時間は今日の練習に向けて話し合いをする。


 そろそろ休み時間も終わりそうなときに、生徒会室の戸が勢いよく開いた。


 そして、そこに立っていたのは一先輩だった。



 

 

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 熱が出ました。(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)

 明日の更新は未定です。よろしくお願いします。

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