第35話

 急いだ結果、何とか間に合った俺たちは昼休みに生徒会室で会う約束をして別れた。


 天野さんは普段は時間に余裕をもって登校しているからか、校門で立っている先生に驚かれていた。

 俺はというと、最近遅刻していないから何故か怪訝な目で見られていた気がする。


 そう思うと、今まで俺は相当先生からやばい奴認定されていたようだ。まぁ、そう思われて当然の行動をしている自覚はある。それを再認識するいい機会だったのかもしれない。


 そんな風に思考にふけっていると。


 「神崎。しっかり聞いてるか?」


 「はい」


 やっべ。つい反射で返事をしたけど、何も聞いてなかった。質問されたら答えられないんだけど…。


 「そうか。なら、答えてみろ」


 先生が黒板に書かれた問題を指す。授業を聞いていなかった俺にとって、それを解けるはずもなく、素直に認めることにした。


 「すみません、本当は聞いてませんでした。許してください」


 「はぁ。いいか、神崎。日ごろの授業を聞くだけでも、それなりに内容を覚えられるものだ。補習があるとは言えな、全てをカバーできるわけじゃないんだ。……他の奴らもだぞ?毎日を大切にしろよ?遊ぶことも大切だが、大人になってから、学ぶという行為は今この時の倍以上に大変だぞ。今ある時間を有効に使えよ」


 先生が珍しく全員に諭すようなことを言う。皆それを理解はしているだろう。でも、大人である先生が直接言うとやはり重さがある。俺たちは知っているだけで、体験はしていない。だからこそ先生の言葉が心に響くのだろう。


 「さて、しんみりした話は終わりだ。授業を再開するぞ」


 そう言って切り替え、授業を再開する先生。


 


 「珍しく、まともな話をしてたな。佐藤先生」


 「ああ、心を打たれたよ」


 「どうだか……。それより順調か?選挙の準備は」


 「あとは俺の原稿が完成すれば完璧だな。今日の練習で聞く天野さんの演説内容も加味して、土日で完成予定だ」


 「そうかそうか。でも、そうなると練習は二日しかないぞ?」


 「問題ないよ。今は少しやる気が出てるんだ」


 「そりゃ、相手にとってはお気の毒な事だな。お前がちゃんとすれば、天野さんに敵はいない」


 初めは乗り気ではなかった代理人だが、天野さんの人となりをそれなりに知ってきて、そこに先生のあの言葉だ。感化されるに決まってる。

 だから、このやる気が続く限りは……。


 「林のほうはどうなんだ?」


 「ああ、正直に言えば良くはない。まず先生からの票が貰えるかどうか……」


 「林の素行はいいとは言えないからな。そこが難所か。厳しいな」


 生徒からだけでなく先生からの票も入る以上、日ごろの授業態度なども大切になってくるのが、今の林にとっては高い壁になっている。


 しかし、それを乗り越えなければ林の道は絶たれる。厳しいだろうが、生徒会ハーレムを築くにはやるしかない。


 「頑張れとしか、俺に言えることはないな」


 「はは、受け取っておくよ。その応援」


 おそらくだが、現生徒会メンバーはほぼ確実に選ばれるだろう。そして、会長が抜けた枠をその他の候補者で取り合う形になるだろうから、やっぱり林が当選する可能性は限りなく低い。


 それに……あの会長がタダで引退するとは思えない。


 ま、それは考えても仕方ないか。あんな超人の考えを俺が理解できるはずがない。だから俺は天野さんを、当選させることに尽力すればいいだけだ。



 


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 佐藤先生は未婚者です!

 年齢は二十代後半とだけ……。

 明日は投稿休みます。m(_ _)m

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