第26話

 昨日の約束もあり、今日から俺は生徒会選挙に向けて天野さんと協力して色々とやらなけらばいけない。


 だがその前に……。


 俺は今、超大急ぎで制服に着替えている。その速度はアニメや特撮の変身並みの速さだ。


 早く起きれた昨日が奇跡だったんだ。まぁ、宮野さんが居たからだけど……。


 自分一人だとどうも気が抜けているのか、起きることができない。


 やっぱり宮野さんと結婚して毎日起こしてもらうしか…………。

 考えがキモいな。まだ、頭が寝ぼけてやがる。


 「あー、くそ。ギリギリ間に合うかどうかだな」


 時計を確認して、焦るがこういう時こそ冷静にだ。


 その結果として


 無事遅刻…………せずに済んだ。


 「助かったぁぁぁ」


 「朝からお疲れだな。神崎」


 「遅刻するかと思って急いできたからな」


 林と駄弁りながら、俺は演説内容として使えそうなものをノートに書いていく。


 一限目が始まるまで、あと五分ある。そういった隙間時間を使っていかないと間に合わない。


 「さっきから何書いてるんだ?」


 「演説内容」


 「おまえ……。俺のライバルか?今ここで潰せば……」


 「違う。天野さんに頼まれたんだ。推薦人の代行」


 「代行だぁ?」


 「ああ。天野さんの推薦人が流行り病で一週間休むみたいでな」


 「なるほど。でもそれって、ライバルってことに変わりないんじゃないか?」


 …………そうだな。天野さんだって林から見たら、ライバルの一人か。

 でも、確か林って……。


 「でも、お前書記にいくんだろ?」


 「そのつもりだ。というか、そこしかない」


 「なら関係ないよ。天野さんは部活と生徒会の仲介人みたいな役割だから」


 「なぁ、神崎」


 「なんだよ……」


 「その役割、一人か?」

 

 「一人だ、狙ってきてもいいがお前の勝ち目は薄いぞ?」


 「なぁーんだ、やっぱり一人かよ。俺じゃ天野さんに勝てる見込みはないし諦めて書記だな」


 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。

 

 先生が入ってきて、一時限目が始まった。




 昼休み。


 いつもなら林と食堂で昼飯を食べるが今日は違った。昼休みになった瞬間に購買に行き惣菜パンを買って、ダッシュで生徒会室に向かった。


 生徒会室の戸をノックしてから開ける。


 既に天野さんは来ており、テーブルに弁当箱を置いて、水を飲んでいた。


 「ず、ずいぶんと早いんですね……」


 水を飲んでいる所を見られたからなのか、少し上ずっている声を気にせずに本題に入る。


 「ああ。打ち合わせがしたいって昨日言っていたからな。それに時間がない」


 「そうです。時間はあまりないので、出来る限りここで詰めちゃいましょう」


 残された時間は、あと四日しかない。正直足りない。演説の練習もそうだが、圧倒的に俺の天野さんへの理解が足りないのだ。


 天野さんはそれを承知で頼んだのだろうが……このままだと天野さんを良く知っている者からしたら薄っぺらい演説にしかならない。


 そこまで競う相手がいるわけではないだろうが念には念をだ。


 昨日の帰りに決めた事がある。それは天野さんを知るために、話す時間・共にいる時間を増やすということだった。


 


 


 


 


 

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