第24話

三人並んで歩く帰り道。

男は俺だけ、隣には美少女二人。

傍から見れば最高の空間だと思うだろう。


しかし……。


俺からすれば最高とは程遠い空間だ。


「黙っているということは、肯定と思っていいですか?」


何故なら……。


「あの、天野さん。神崎君が困ってますよ?」


何故なら……。


「そうでしょう。でも、どうしても聞きたいんです。先生や生徒達から信頼されて、評価されていた彼が何故一年生の冬休み明けに変わっていたのか」


「確かにそう言われると気になりますけど……」


チラッとこちらを見てくる一ノ瀬さん。

俺に質問攻めしてくる天野さん。

敬語女子二人の眼差しが俺に突き刺さる。


そう……とっても、居心地が悪いのだ。


「聞きたいって言われても、特に理由なんかないよ。ただ、面倒になったんだ」


「面倒?何がですか?」


天野さんがその理由では満足できなかったようで、さらに聞いてくる。


「全部だよ。先生からの期待も、生徒からの信頼も、模範生でいる自分も、全部!」


……しまったな、知らず声に怒気がこもっていた。

慌てて、隣を見ると天野さんが気まずそうにしている。


「悪い。ちょっと動揺して……」


「いえ、無理に聞いたこちらが悪いので。すみませんでした」


シュンとする天野さんを見て俺の心が痛む。

謝らせるつもりはなかったんだけどなぁ……。


「意外でした、理由をすんなり話すなんて」


一ノ瀬さんが空気を変えるためか明るく話す。


「そこまで忌避してるつもりはなかったんだけど、だからこそ自分でも何で少しイラついたのか分からないんだ」


そう、過去の事と割り切るのが俺の性格のはずなのに。

どうして、頭にきたんだろうか。


「自分のことなんて分からない事のほうが多いですから。いつか時が来たときに、その理由が分かるかもしれませんね」


「そうかもな」


けど、それがいい事だとはあまり思わない。


少し和らいだ空気になり、天野さんが話題を変える。


「話は変わりますけど、神崎君」


「何かな、天野さん」


「生徒会選挙には出ないんですか?」


何を当たり前のことを聞いてくるんだ、天野さん。


「愚問だな。出ないに決まっているだろう!」


「ですよね」


えっ……


「神崎君にお願いがあります」


天野さんが足を止める。それに合わせて俺たちも歩くのをやめた。


「面倒ごとはお断りで。雑用もちょっとお腹いっぱいだから、遠慮したいかな」


こちとら、色々手伝わされて休みが足りないんだ。


「面倒ごとと言えば面倒ごとです」


「じゃあ、お断りします」


「私からもお願いしたいです」


えぇ、一ノ瀬さんも?


「はぁ……わかった。ここで止まってるのも迷惑だし、歩きながら聞くよ」


歩くのを再開して、天野さんの話に耳を傾ける。


「生徒会選挙が来週なのに、推薦者が流行り病で寝込んでしまって、一週間お休みなんです。お願いです……」


あーあ。……わかった、わかってしまった。

何を頼まれるのかを、言われるまでもなく俺は理解してしまった。


「私の推薦代理人になってくれませんか?」 

 


 












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