第23話

 「お疲れ様です、皆さん」


 一ノ瀬さんが皆に労いをかける。二人では多く見えていた紙束が、七人で作業したことによりみるみるうちに減っていく様は結構スカッとした。


 「お〜つかれ、いや~多かったね〜」


 生徒会長が机に体を倒し、やりきったような声を上げる。


 「会長、殆ど一クラス分しかやってないですけど」


 「……神崎君、それは言わない約束だ」


 横から会田さんが、小声で注意してくる。ゲームに出てきそうなセリフだな、それ。


 「一応言うけど……聞こえてるからね〜?」


 おっと……。

 会長から目を逸らし隣を見ると、会田さんがバツが悪そうな顔をしている。


 「さて、作業は終わったことですし、時間も遅いので今日は解散です。かなり暗いので気を付けて下さいね」


 その声のあと、皆が帰り支度を始める。俺は特にすることがないので、カーテンを閉める。


 「それじゃ、帰るね葵。また明日」


 「バイバイ、葵ちゃん」


 会田さんと倉田さんが並んで生徒会室から出て行く。……二人ならいいか。


 「わたしも〜、おっさき〜」


 「雫会長、一緒に帰りましょう。……じゃ、また明日」


 会長と瀬戸さんが次に出て行く。ここも二人。


 「……最後までありがとうございます。神崎君」


 「なにが?」


 「一人で帰る子がいたら、送ろうとしていたでしょう?」


 鋭いね、一ノ瀬さん。流石にこの暗さで一人で帰るのを見ると不安になるからな、俺が。


 「そうだよ。一ノ瀬さんは、今日は天野さんと帰るの?」


 「はい、同じ方向なので。……神崎君もでしょう?」


 そうだけど、この二人と帰るの?俺、明日死なない?

 死にたくないから一人で帰ろう、そうしよう。


 「いや、一人で帰っ……」


 「話したいことがあるので、一緒に帰りましょう、神崎君」


 天野さんに遮られた?!

 俺話すこと遮られること多すぎない?


 というか天野さん、笑ってるのに目が据わってるんだけど……。


 「…………わかった」


 俺のバカッ。折れるの早すぎ、意志弱過ぎ!!


 「ふふっ、仲が良いようで何よりです」


 一ノ瀬さん??俺今脅されてるんです。天野さんの見えないオーラに!「来い」って彼女、脅してきてるんです!!


 「空気が読めるようで助かります。元神童君、貴方には聞きたいことが沢山あるので」


 「知らないことは話せないんだけど?」


 「いえいえ、貴方が知っていることを聞くので問題ないです」


 面倒だ、やっぱり一人で帰るべきだった。


 「お二人共、まだですか?……鍵を締めたいので、出て頂けると助かります」


 一ノ瀬さんが待っている、逃げることは出来ない……か。


 「今行く」


 俺達二人が生徒会室から出たあと、一ノ瀬さんが鍵を閉めて職員室に返しに行く。


 「失礼しました。……それでは、帰りましょう」


 一ノ瀬さんが鍵を返し職員室から出て来た。


 その後、下駄箱に行き靴を履き替え、三人で校門を出た。


 

 

 

 


 


 






 

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