第22話

 「あれ、葵だけじゃないんだ」


 「この人が先生が言っていた助っ人?」


 「そうです、神崎弘人君です」


 生徒会メンバーの会話の流れの速さに俺は付いて行けない。これはただの言い訳で、実際は緊張で話せないだけだ。


 「じゃあ、今日から選挙まではこの七人体制ってことかな?」


 「そうなります」


 おろおろすることしかできないと思った俺は、大人しく仕事の続きをしながら話が終わるのを待った。


 「さて、神崎君。少しだけ自己紹介をお願いします」

 

 「しないとダメかな?」


 「はい、親睦を深めるためです」


 自己紹介くらいで親睦は深まらないと思うけど……。これから一緒に仕事するにあたって、名前くらいは知っておいてもらったほうがいいのは確かか、仕方ない。


 「神崎弘人です。田中先生の命を受けてここに来ました。以後よろしく」


 とても無難な自己紹介だ、しかしこれでいい……はず。


 「思ったより普通?」「というか真面目だね」


 んん??とっても失礼なことを言われている気がする。というか事前に了承は得ていると先生は言っていたが、その時にどこまで話したんだ?


 「神崎の事は事前に聞いていたんだけど……その時は不真面目でどうしようもない奴だと聞いていたから。なんというか……話と違っていて驚いたというか……」


 「そういうことね、先生はひどいことを言うなぁ」


 「あながち間違いではないでしょう。神崎君は今日も逃げようとしましたし」


 「コホン、それは置いといてさ。自己紹介俺だけってのはないでしょ?」


 話を逸らすというより戻し、どうにか俺に都合の悪い話題から逃げる。


 「ふふ、そうですね。皆さんも軽い自己紹介をしましょう」


 一ノ瀬さんがそう言うと、順に自己紹介をしてくれる。


 「まずは、わたしね~。わたしは生徒会長の一雫。短い間だけどよ~ろしく♪、新入り君?」


 にのまえ、珍しい苗字だ。あと、この気さくな感じ……絶対に勘違い製造機だな!


 「はい、お願いします」


 「な~んか、堅苦しいな~。敬語いらないからね♪」


 体をこちらに寄せながら、そう言う一先輩。

 ウーン、これは……勘違いしてもいいかも。


 「次は私、会計の瀬戸です。よろしく」


 眼鏡をかけた三つ編みの二年生だ。…………眼鏡似合いすぎだろ!!


 「よろしく。というか……三年生は一人なんだな」


 俺が全員の制服を見てから言うと、一先輩がニマニマしながら得意げな顔をする。


 「そうだよ~。いいでしょ~」


 いいのかは分からんが、選挙の当選時は二人いたと思うんだけど……。


 「あたしの番だね、書記の倉田ですっ。よろしく神崎君」


 「よろしく」


 倉田さんはインターネットで有名であちこちで噂を聞く人だ。


 「会田紗季。同じく書記。よろしく」


 おお、この人が話に聞いたゲームの話が出来る会田さんか。なるほど、全然そうは見えないな。


 「よろしく」


 「最後に私」


 あれ?さっきまで気にしてなかったけど、なんで六人?五人で役職としては十分だと思うけど……。


 「天野奏、私は部活関連の事が主な仕事です」


 一人は部活関連の事を持っているのか。


 「……よろしく、元神童君」


 腰を折り、長い茶髪を揺らして、蠱惑的に微笑む天野さん。


 なるほどね、赤石の言っていたことは間違っていないみたいだ。視線を巡らせるが、他の人も驚いた様子を見せていない……ってことは知っているんだろう。


 「ああ、よろしく」


 平静を装い、最後の自己紹介を聞き終える。


 その後、生徒会フルメンバーと俺で残っている紙束を分ける作業を再開した。






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 久しぶりの朝投稿……。

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