第20話

 昼休み、いつもように林と食堂に来ていた。


 「「じゃんけん…ポン」」


 これまた、いつものようにどちらが昼飯を買いに行くかを決めて、今日は俺が買いに行くことになった。


 「うし、俺の勝ちだな!頼んだぞ~」

 

 「負けたか、仕方ない。席は頼んだぞ」


 俺は列に並びに行き、林は席を確保しに行く。


 結構並んでるな、早めに来たはずなんだが……。

 時間が掛かりそうだなと思いながら列に並ぶ。


 ポケットからスマホを取り出し、ゲームを開く。待っている間にログインボーナスとデイリーミッションを終らせておこう。


 「上手ですね、神崎さん」


 「一ノ瀬さん、なんで後ろに?」


 「お弁当を作り忘れてしまって」


 てへへ、と可愛い笑顔で照れている。一ノ瀬さんでも忘れることがあるんだなと思う。ま、後ろに立たないでと言ったことも忘れているし……そんなものか。


 「だから、学食を?」


 「はい、こういう時にしか利用しませんし、食べてみたいメニューがあるんです」


 今度はキラキラした笑顔だ。表情豊かだな、やっぱり。


 「神崎さんは、いつも学食ですよね?」


 「そうだよ。弁当持ってくるの面倒だからさ」


 作るのもそうだが、持ってきて持って帰る、そして洗うという行為が面倒なんだ。

 その点学食は安いし、食べた後食器を返したら、それ以上はない。


 「意外に面倒くさがりなんですね、これは一緒に仕事をするときの参考にしましょうか……」


 「やめてくれよ。出来れば楽したいって考えなだけなんだ」


 「それは神崎君次第です。神崎君が逃げたりしなければ、そこまでの重労働は強いたりしません」


 「助かるよ。今日から生徒会室に行くけど、こき使われるようなら逃げようかと思っていたんだ」


 実際先生たちは何かと面倒な仕事を振ってくるからな。毎回逃走を試みているけど、そのたびに失敗するしなぁ……。

 生徒会メンバー相手なら逃げれると踏んでいるけど、ちょっと一ノ瀬さんが厄介すぎるけど面倒な仕事が来ないと分かったのは大きい。

 つまり逃げる必要がないってことだ。


 「さて、次ですよ?神崎君」


 「ああ」


 そういって俺は財布を取り出し、注文を決める。


 「はい、次の人~」


 おばちゃんの良く通る声が聞こえ、俺は一つ奥の受付に行きカレーを二つ頼む。


 「カレーを二つ、一つ大盛りで」


 「あいよ」


 注文を終え、会計を済ます。おばちゃんから札を受け取り列を抜ける。あとは受け取るだけだ。


 呼ばれるのを待っていると、一ノ瀬さんがこちらに来る。


 「何頼んだんだ?」


 「カレーです。本当は唐揚げ定食が気になっていたのですが、神崎君が頼んでいるのを聞いてつい……」


 「つられたと」


 「はい、唐揚げ定食は次の機会にします」


 「また、忘れたときにか?」


 少し揶揄うつもりで言ってみる。


 「うーー。あまり揶揄わないでください」


 顔を赤らめて、手で顔を隠している。

 いいね、美少女の照れ顔。くっっそかわいい。


 「冗談だ、半分は。っと呼ばれたから行くわ」


 「は、はい。それではまた放課後に」


 一ノ瀬さんから離れ、札を渡しカレーを二つ受け取り、林の待つ席を探す。


 「あそこか、遠いなぁ」


 見つけて、つい呟いてしまう。結構遠い。


 

 「買ってきたよっと」


 「カレーか。いいね、丁度食いたかった」


 チッ、外したか……。

 

 「おい、なんてこと言いやがる。食いたくないもん買って来ようとしてたのかよ?!」


 忘れてた、エスパーだったわこいつ。

 一ノ瀬さんのこと言えないな、これは。


 「そんなことはいいだろ?早く食べようぜ、冷める前にさ」


 「逃げたな。ま、今はいい」


 手を合わせ


 「「いただきます」」


 そう言って、昼飯を食べ始めた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 次回から生徒会メンバー登場予定です。

 

 


 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る