第19話
「宮野、神崎、林、五分遅刻だ」
「「「すみません」」」
ドアを開けて、教室に入った俺達は先生に怒られていた。
悪いのは大体林だが、ここでそれを言っても状況は変わらない。
「遅刻の理由は?」
はぁ、仕方ない。
二人に余計なことを言われても困るし……
「僕が二人を呼び出しました。理由は少し手伝ってほしいことがありまして……」
二人がこちらを見てくるが、気にせず続ける。
「なので、二人に罪はないです」
「そうか、わかった。神崎は反省文宿題な。二人も反省しろよ?」
先生としても授業をしなくてはいけないので、これ以上長引かせたりはしないだろうと踏み、この展開に持っていった。
あくまで、自分の身を他の男子生徒から守るためである。
とりあえず席に着き、授業の用意をする。
あとで二人に色々言われるだろうが、今は考えずに授業に集中する。
「お前なんであんなこと言ったんだ?」
休み時間、林から俺は先ほどの事を問い詰められていた。
「なんだ、林。お前も反省文書きたいのか?」
「茶化すな。理由を聞いてるんだ」
「単純なことだ。あそこで色々話されると、俺の命が危ないからな。自分の身を守るための行動だ」
「なるほどね。でも助かったよ、ありがとな」
「感謝なんかいらん」
「私からもありがとう」
「宮野さん、だから感謝はいらないって」
「その割には嬉しそうだけどぉ?」
宮野さんが俺の顔を覗き込みながら言う。
自分の手で顔を触るが、喜んでいる顔はしてないと思った。
「素直じゃないねぇ、神ちゃんはさ」
そう言った後、女子生徒達のほうに宮野さんは戻っていった。
「いっつも思うけど、いつ仲良くなってんだ?」
「少し前だ」
「少し前って……」
あまり細かいことを話すと、こいつはすぐ勘づくからな。はぐらかすくらいが丁度いい。
「それよりさ、選挙どうなんだよ。推薦貰えそうか?」
「貰えはする。その後がキツイけどな」
「当選するかどうかってことか?」
「そうだ。それがなきゃここまでの努力は無駄になるからな」
目的が不純だと言いたいが、崇高な目的をもって今の生徒会に立候補する男子のほうが少ないだろう……。
「五分もないからな、多分。それに、今期は周りが強すぎるし、多すぎる」
現生徒会の彼女たちの立候補。通常、生徒会選挙なんて十人立候補すれば多いほうだ。実際去年がそうだった。が、今年は例外だ。
今年は立候補が増えるだろう。なんて言ったって学園の美少女たちが生徒会に揃っているのだから。こいつのように、男子生徒が多数立候補するだろう。
「だなぁ。そこが一番の問題なんだ。空いているというか、可能性があるのが書記しかない」
「そこすら怪しいけどな、会田紗季も書記候補だろうし」
「けど、もう一枠あるだろ?書記は」
「そこしか狙えないけど、他の男子生徒も狙ってくるぞ?」
「どうにか勝ち残るさ」
「そうか、頑張れよ」
「チッ、お前に激励を送られると腹が立つな!」
なんでだよ。応援してるのに。
「選挙に参加せずとも、生徒会の美少女たちと仲良く出来ますよってか?!か~、ムカつく」
「そんなこと言ってないぞ」
「顔が言ってる」
また、顔かよ。どうしたらいいんだよ、それ。
顔の事で悩んでいると
キーンコーンカーンコーン
とチャイムが鳴る。
林のほうに向けていた体を前に向ける。
教科書を取り出したところで先生が入ってきて、「起立」と声が教室に響いた。
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