第14話
緊急事態だ。
宮野さんの特性手作りご飯を食べたあと、宮野さんはお風呂に行ってしまった。
俺は皿洗いを済ませたあと、手持ち沙汰になりテレビを見ている。意識をお風呂場から逸らすために。
たが、一人暮らしの男子高校生の部屋が広いはずもなく、お風呂場の水音が聞こえてくるのだ。
そう。とっても……エッチなんです。
「はー」
何を考えているんだ俺は。
覗くなんて馬鹿なこと、考えるな……。
宮野さんの信頼を裏切るな………。
あ~やばい、このままだと駄目だ。
……よし。コンビニに行こう。
ここにいたら、精神が持たん。
少し距離があるけど、歩いて十分位の距離だ。
往復二十分もあれば煩悩も消えるだろう。
宮野さん宛てに書き置きを残しておく。
連絡先持ってないし。
鍵と財布、スマホを持って家を出る。
外は街頭の明かりと月明かりに照らされている。
「失敗した、もっと厚着してくるべきだった」
結構冷えている。夕方ほど風はないが、気温そのものが低い。
手をズボンのポケットに突っ込んで、少し速歩きでコンビニに行く。
人一人いない道には虫の鳴き声と、俺の足音が響いている。
ん?後ろから人が来たか……。
自分以外の足音が聞こえてきたので、道の端によって歩く。
タッタッタと軽快な足音がなっている。どうやら、ランニングしている人のようだ。
当然ランニングしている方が速いので、歩いている俺を追い抜いていく。
……が、通りすぎて少ししたら戻ってきた。
なんだ??
「こんな時間に散歩か?神崎」
話しかけてきたのはクラスの人気者、赤石だ。
サッカー部に所属している爽やかイケメン。
「そっちこそ、わざわざ警察の仕事を増やすつもりか?」
「まだ、そんな時間じゃないだろ」
確かに、時間は8時を過ぎたばかりだ。
「だな、ランニングは日課か?」
「ああ。選挙後に試合があるからな。体力を落とすわけにはいかないんだ」
運動部は大変だなぁ。
「そうか。頑張れよ大会」
「まだ先だけどな、応援は貰っておくよ。……それよりも神崎」
「ん?」
「逃さんよ?俺も」
「は?」
「どうやって、一ノ瀬さんの連絡先を手に入れたんだ?」
「………向こうから勝手に」
「カー。羨ましいな」
「嫌味かよ。それにお前なら一ノ瀬さんにこだわらなければ、彼女くらい簡単にできるだろ?」
「それが、なかなか難しいんだよ。それと俺は一ノ瀬さんが好きなんでね」
こいつの場合、一ノ瀬さんに固執しなければ簡単に彼女くらいできるだろうけど……。
一途なやつだ。
「苦労するな、赤石」
「神崎よりマシだと思うけどな。君は男女問わず人気じゃないか」
「不本意なことにな」
「羨ましい限りだよ。俺にはないものだ」
「ハッ、バレンタインにチョコ貰いまくってた奴から言われるとイライラするな」
「あれはあれで大変だぞ?」
「見てたらわかる。言ってるだけだ」
というか、歩いてるけどいいのか?
「なぁ、ランニングはもういいのか?」
「神崎と話してるほうが楽しいからな」
……こいつも宮野さんと同じで、勘違いする子を大量生産してそうだな。
「コンビニに行くだけだぞ?俺」
「ちょうどいい。喉乾いてるんだ」
気も遣えると……。さすがモテ男。
これは明日俺が刺されるかな?
「神崎は何買うんだ?」
「明日の朝飯」
「へぇ~。朝はパン派か?」
「気分次第かな。パンのときも米のときもある」
「気分次第か、如何にも神崎らしい」
「何だ?俺らしいって」
「気分で全部を投げ捨てただろ?」
「おいおい。誰だよそれ」
「しらばっくれても意味ないって……。校内で知らない人のほうが少ないぞ」
「……人違いだ」
「なら、そういうことにしておこう」
全く……どいつもこいつも人の過去ばっかり話しやがって。
その後も雑談をしながら歩く。
話に区切りがついた頃
「おっ、着いたな」
赤石と話していたからか、いつもより早く着いた気がする。
暖房の効いたコンビニに入り、明日の朝ごはん用の食パンと、飲み物を数本買う。
コンビニを出ると赤石が飲み終えたお茶のパックを潰して、ゴミ箱に捨てているところだった。
「じゃあな、神崎。また明日」
赤石はそう言って手を挙げ、去っていった。
俺は先程歩いた道を戻る。
やっぱり寒いな。
コンビニが暖かったから、よけいに寒く感じる。
帰った頃には宮野さんはお風呂から出ているだろうし、早く帰って風呂に入ろう。
そう決心し歩くペースを上げた。
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登場人物が増えてきました。
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