第8話
「死ね!神崎、お前は全男子生徒の敵だ」
おかしい。
昼飯を食べるために林と食堂に行って、のんびりと食べるつもりが……。
何でこうなった?
首を振る。そう、理由ははっきりしている。
俺が今、全男子生徒の夢(一ノ瀬さんの連絡先)を持っているからだ。
「林、待て誤解だ」
「誤解などない。……A班、B班回り込んで挟み込むぞ!」
こいつ、走りながら的確に指示を飛ばしてやがる。
くそっ、ルート変更。
「C班、行け。D班構えろ」
屈強な男五人組が突撃してくる。
それをかわすために、廊下を曲がる。
が、それが罠だった。
「確保、神崎確保」
俺は待ち受けていた八人組にあっさりと捕まった。
「よし、逃がすなよ」
「逃げられるかよ、この状態で」
八人全員で四肢を抑えられている。
さらに、先ほどの五人組に囲まれ、その他仲間が続々と人が集まってくる。しかも、全員男だ。
林が屈んで、大の字で拘束されている俺に近づく。
「おい、神崎。お前には選択肢がある」
「チッ。言ってみろよ」
「一。ここにいる全員に一発ずつ殴られる。
二。一ノ瀬さんの連絡先を消す。
三。お前のスマホを破壊する。……さぁ選べ」
まともな選択肢が二しかない。一を選べば死ぬし、三を選ぶと一ノ瀬さん以外にも迷惑を掛けることになる。
「二だ。消すから……解放してくれ」
「おい」
「はっ!」
こいつら……即興のチームのくせに連携が上手すぎる。
会話を最低限で意思疎通をこなしてやがる。
俺は腕を解放され上半身を起こされる。
「ここで消せ。今すぐにな……」
ここで俺は心中で嗤う。
林、お前の指揮能力の高さには驚いたが、ちと詰めが甘い。
ここはお前が俺のスマホを取り上げ操作するべきだった。
あるいはここに全員を集めず、誰も通さないように閉鎖するべきだった。
そうすれば、この先の事態に多少は対応出来ていただろう。
だがもう遅い!!
「神崎君?こんなところに呼び出して何の……」
一ノ瀬さんが、周りにいた男子たちが、林も含めて全員が固まる。
ただ一人、俺を除いて。
俺に勝つために熱くなりすぎたな。
もっと冷静な普段のお前であればこうはならなかった。
「神崎……お前何をした?」
「助けを呼んだだけさ。そうだろ?……田中せんせ♪」
俺の追い打ちの言葉に男子たち全員が青ざめる。
一ノ瀬さんだけでも効果はあるが、念のために先生を連れてくるように一ノ瀬さんに頼んでおいたのだ。
「そうだな……この状況はさすがに悪戯が過ぎるぞ。お前ら!!」
田中先生の登場で両足も解放された俺は起き上がり、林の近くで囁く。
「お前の負けだ。林」
「ふぅ、やられたよ。まさか逃げながら連絡していたなんて……」
潔く負けを認める林。
「余裕のない盤面を作れたと思い込んでいた、俺の失態だ」
田中先生に連行される大勢の男子生徒たちの背を、林はゆっくりと歩いて追っていく。
「林、さっさと来い。残りの休み時間で体育館の掃除をしてもらう」
先生に連れられ、体育館のほうへ林たちは消えていった……。
ふぅ。何とかなったな。
「あの……大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、別に何かされたわけじゃないから」
「そうですか。ご無事で何よりです」
ホッと胸を撫でおろす一ノ瀬さん。
どんな仕草も様になるな、この人。
……さて、飯食わないと。
「ありがとね。来てくれなきゃ、ちょっとやばかったし」
「いえ、でもまさかいきなり役立つとは思いませんでした」
「だな。じゃっ、俺食堂に戻るから」
「はい、それではまた」
一ノ瀬さんに礼を言って、食堂へ。
あれほど賑わっていた食堂は、人がほとんどおらず閑散としている。
先ほどのテーブルを探して戻る。
テーブルの上にはもうとっくに冷めてしまったラーメンが二つ置かれていた。
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これホントにラブコメ?
次話 草むしり!
明日から一話投稿で許してください!!
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