第5話
はい、どうも神崎弘人です。大寝坊をかまして、急いで学校に向かっています。
どれだけ速度を出しても学校に到着するのは、三時間目の終わりになるでしょう。
決して田中先生に迷惑を掛けたいわけじゃないんです。もしかしたら、無意識のうちにそう思って行動しているのかもしれませんが……。
はぁ~。とっても疲れます。
急いで自転車を漕ぐという行為は、体への負荷が凄いです。
さぁ見えてきました。目的地・校門!
いつものように自転車を止めて、何度も押した記憶があるインターホンを押す。
ピンポーンという音が鳴る。
「…………。」ブツッ
あれれ?おっかしいぞぉ~。
とうとう返事すらなくなってしまった。
しかも毎度の如くおばちゃんと田中先生が出てくるかと思いきや、まさかの高崎先生の登場である。
ヤダ///近い!!デカい!!
「神崎ぃ、昨日も遅刻したらしいな?」
体がでかいから、近くに立たれるとマジこえぇ。
「お前は何故二年になった途端に腑抜けてしまったんだ……。」
「それは……。志藤先生に振られたからです!」
「冗談はいい。はぁ、とりあえず生徒指導室な」
「うす」
門を開けてもらい駐輪場に自転車を停め、高崎先生が待っている生徒指導室に向かう。ドアを開け、先生の前の開いている席に座る。
「昨日よりも一時間遅いな。理由を言ってみろ」
うーん。座っていても溢れる威圧感、これが強者のオーラってやつか。
冗談を言えば命はない……か。
「昨日、布団を干したんです」
「そうか。快眠だったか?」
「それはもう!」
「よし、生徒会メンバーにはこちらから説明をしておく」
「へっ?」
「お前は放課後、校庭の草むしりだ」
馬鹿なっ!俺は今日生徒会で美少女たちとキャッキャウフフするつもりだったのに……。
高崎先生許すまじ!
「俺を怨めしそうに見るな。遅刻したお前が悪い」
……先生、正論は時に人を傷つけるんですよ!
ふぅ、喚いても仕方ない。クールにいこう。
肘を置いて、手を組み、甲の上に顎をのせる。
「わかりました。その仕事……請けましょう」
「そうか、体操服のジャージで働けよ。もちろん上着はズボンにインするんだ」
ダサい奴や!先生それ、ダサい奴や!
「それはちょっと……」
「文句は受け付けん!恥をかきながら働け。以後恥をかきたくないなら、遅刻するな!!……さぁ、これ持って教室に行け」
いつもの紙だ。それを受け取って生徒指導室を出る。
説教を食らっているうちに、すでに三時間目は終わっている。
休み時間で騒がしい教室に入る。
教卓に紙を置いて、自分の席に座る。
「遅い登校だな、神崎」
「布団を干したせいなんだ……。さすがに気持ち良すぎた」
「見てたぜ、高崎先生に連行されるとこ」
助けてくれよ、見てたなら。
親友だろ?
「嫌だね。昨日俺を巻き添えにした奴を助けるかよ」
「なんで、分かるんだよ。何も言ってないのに」
昨日からそうだが、こいつエスパーか?
「同じクズだからな、考えていることは大体わかる」
なるほどね。納得したくないな、こいつと同じなんて。
「草むしりの刑だそうだ、どうにか逃げたい。協力してほしい」
「嫌だと言ったはずだ。俺は、俺に不利益なことはしない」
「対価は払う。俺が推薦人になってやる」
林の顔が変わる。そうだ、お前は乗るしかない。このふざけたギャンブルに。
「作戦会議といこう。相手は高崎先生だ。簡単には逃げられん」
「今回の相手は強敵だ。逃げるには、どうにかしてお前が学校から脱出する時間を稼がなくてはならない」
「そうだ。そのためには、デコイが必要だ」
「まさか俺にやれと?」
「はっ、お前に任せるくらいなら、蟻に任せたほうが良いデコイになるさ」
「スー。なら、どうするんだ。誰かあてがあるのか?」
「ああ。完璧美少女の次期生徒会長に任せる」
林は次期生徒会長を呼び出すために使う。
フハハハ!完璧な作戦だ。先生からの信頼が厚い次期生徒会長なら確実に先生を止められる。
「…………神崎」
「ん?なんだ」
横を見ると林がこわばった表情をしている。
「それを本人がいるところで話すべきじゃなかったな。……本作戦は現時点をもって失敗。撤退!!撤退!!」
本人だと?
彼女はクラスが違う。ここにいるはずが……。
「神崎君?」
背後から凛とした声が鳴る。俺は振り返ることが出来ない。
これはまずい。
「逃げてもいいかな?」
「駄目です!」
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一人目の美少女やっと登場です。
アブネェ。林と神崎のBL になるところだった…
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