第4話
「「く〜〜。終わっったァァ」」
林と二人ほぼ同時に同じセリフを言う。
あの後一時間くらい林と頑張った結果、何とか林の隣に置いてあった大量の紙束の入力は、終えることができた。
ひたすら集中してパソコンと向き合っていたからか、背中やら肩やらが痛い。
椅子から立ち上がり、グーッと全身を伸ばして固まった体を解す。
「ありがとね、神崎君と林君。おかげ先生少し楽ができるわ」
先生が圧のないにこやかな笑顔で、そう労ってくれた。
「いえいえ。こんなの全然……」
「そう?なら明日も……」
「嘘言ってすみませんでした!」
無理だ……。この作業を明日もするって思うだけで吐き気がしてくる。
「よろしい!じゃあ、神崎君は明日以降遅刻しないように!それと……仲が良いのは良いことだけど、授業中ははしゃぎすぎないようにね?」
ここで授業中は話すなって言わないあたり、ちゃんと生徒が自身の判断で、自制出来ると信じているのだろう。
「先生ィ゙、オデご褒美ほしいィ゙……」
また壊れてるよ林が。
ていうか図々しいなこいつ。何がご褒美だ!
この作業は俺達の罰だぞ……。
「林、おめぇ恥ってものがねぇのか?!」
「神崎ィ゙、お前は生徒会ハーレムを俺より先に堪能すんだろう?だから、お前にはご褒美など必要ないィ゙!!」
「まぁまぁ、二人共予想以上に頑張ってくれたしね……ご褒美くらいはあげるわ。」
バッと、恥を忘れた俺と恥を知らない林は、顔を先生の方へ向ける。
そして、すぐさま林と俺は、テレパシーとアイコンタクトによる脳内会議を開催!!
(先生からのご褒美、何か案は無いか?)
脳内林君が手を挙げる。俺はすぐに指名した。
(一つ。先生の胸を触らせてもらう!二つ。先生にヨシヨシと頭を撫でてもらう!三つ。先生と交際する権利をもらう!)
(林ィ゙、見損なったぞ。生徒会ハーレムを築くと言いながら本命は志藤先生か!)
(眼の前に転がっている大金のようなものだぞ?このチャンスは!!)
クソっ、そんな非紳士的なお願いを心やさしい俺ができるわけがない!!
第一、俺は高一のときに先生に告って振られている!!
(何っ?貴様ここでも抜け駆けしていたとは…。)
おい!脳内会議で俺は黙っているのに……思考の中にまで入ってくるな!
林の奇行に困惑しながら考える。どうすれば、最大限利益を得られるお願いができる?
ここで俺達が勘違いというより忘れているのは、お願いではなくご褒美であり、あくまで選択するのは志藤先生であるということだ。
(クソっ。決まらないぞ)
(やはり俺の案でいこう)
(ソウダナ。チャンスを逃すよりはいい)
俺達の脳内会議が結論を出したとき……
「はいっ!神崎君と林君のね?」
いつの間に買いに行っていたんだろうか。目の前に先生からのお恵みもの(自販機のジュース)が置かれた。
俺達は絶望した。
「先生ィ゙。あ゙りがどうございます」
「はい、どういたしまして。それじゃあここまででいいから。気をつけて帰りなさいね」
先生からご褒美を貰い、血の涙を流す林と並んで明日遅刻せずに学校に来れるか心配になりながら、教室を後にしようとドアの方へ。
ドアを開けたところで先生から声がかかる。
「あっ、神崎君。明日の放課後は生徒会室に行ってね」
「りょーかいでーす。」
いよいよか、明日から俺の放課後奉仕活動が始まる。
「ズリーな神崎。遅刻ばかりしてる癖に、いい思い出来るんだろう?」
嫉妬の言葉が飛んでくる。
そういえば「俺より先に堪能できる」って言ってたよなこいつ。
「林。辞めとけ。」
「止めるな相棒!俺はハーレムを築くんだ」
おそらくこいつは、次に行われる生徒会選挙に参加するんだろう。
だが、アレは先生からの評価と生徒からの評判が良くないと当選しない……。
林の周りからの大体の評判は、手のひらドリルのクソ野郎だ。
「もう一度言うぞ。辞めとけ!」
「止めるなって……。一足先に行って待ってな生徒会でさ」
無理とわかっていても挑戦するのか……。ならこれ以上俺に止める権利はない。
「そうか、わかった。潔く逝ってこい!」
「あぁ。ありがとう友よ。」
生徒会選挙の後でこいつの姿を見ることはないだろう……。
駐輪場で自転車のロックを解除して、門まで押して歩く。
「じゃあ俺こっちだから、また明日な」
「明日は遅刻するなよ?」
いつものように校門の前で別れる。俺は自転車通学で、林は電車通学だ。
明日は生徒会に行くのか……。少し億劫だな。
ウチの生徒会は校内だけでなく、他校でも有名になるほど人気だ。
何故ならメンバー全員が美少女だからだ。
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