最終話 新たな道を歩む二人 2
お互いに体調も良くなってきたので二人でデートをすることも増え、今までのことを完全に忘れられはしないが、心の傷も少しは塞がってきたとお互いに感じられるようになった。
気分転換にドライブをしたり、食べ歩きやショッピングなど、休日になれば二人で外に出掛け、より前に近い生活を送れるようにもなってきた。
「シュウ、見て…… もうすぐ桜が咲くんじゃない?」
「暖かくなってきたもんなー」
「次はお花見なんかもいいかもね?」
「そうだな、でも旅行も行きたいな…… また温泉でも行ってのんびりするか?」
「いいの? ……うふふっ、私も行きたい」
ああ…… やっぱり愛梨が隣で笑ってくれているだけで…… 幸せなんだよ。
肝心な所で俺達は間違い続けたかもしれない。
でも、あの時諦めていたら、こうして笑う愛梨は見れなかったかもしれないと思うと、俺は自分が決めたことが間違ってなかったと今なら思えるまでになってきた。
「……なぁに?」
「いいや…… ありがとな、愛梨……」
「うふふっ…… 私の方こそありがとね? ……間違えたけど、諦めなくて良かった」
同じようなことを考えてるんだな、俺達は…… ははっ、お互いに同じように悩み、すれ違い、道を踏み外した。
でも踏み外した先にも愛梨が居て…… やっぱり俺達は離れられないんだな。
そして更に一年後…… 思い出の公園でやり直すと決めてから二年が経過して、俺達は二十七歳になった。
それを記念して行った旅行先で…… 久しぶりに…… 本当に久しぶりに愛梨と結ばれた。
今まで残っていた不信感が薄れてきたのか、旅行先で一緒に就寝前に抱き合っている時に反応があって……
そして試してみることしたら…… 何とか、ようやく愛梨と再び身体を重ねることができた……
終わった後、愛梨は号泣して過呼吸気味になってしまい焦ったが、俺達は更に一歩前に進むことが出来た。
……やっぱりと言うべきか、何なのかは分からないが、より深くお互いが触れ合えたことで、よりお互いへの想いが強くなったような気がした。
それと…… 本当にお互い久しぶりということもあり、まるで高校時代に戻ったかのように……
「愛梨、大丈夫か?」
「はぁっ、はぁっ…… 大丈夫だよ、うふふっ、凄く…… 幸せ……」
……旅行から帰ってからは頻繁に仲良くしてしまっている。
愛梨を汚いと思うことはないし、あの男の事も…… 回数を重ねているうちに何とも思わなくなってきた。
最初に愛梨の不倫を知った時に見て見ぬふりをすると決めた時に覚悟していたのもあるのだろうが…… 愛梨の反応を見る限り…… 俺とのは演技ではなさそうだから余計にそう思うんだろうな。
いつもの…… 数え切れないほど見た、少し恥じらいながらも嬉しそうに、そして、時には大胆に……
あんな大袈裟で…… まるで演じているような感じではないからな……
……いや、終わったことで、すべてを受け入れると決めたんだ、比べるのは止めよう。
「ねぇ…… まだできる?」
「ははっ、いいぞ…… それなら高校の時みたいに試してみるか?」
「えぇっ!? ……あの、何回出来るかやってみようって言った時の? ……ダメだよぉ、あんなの知ったせいで私…… 敏感になっちゃって、シュウじゃなきゃ満足できなくなっちゃったんだから、うふふっ」
「あの頃は元気だったからな、お互い…… よし、とりあえず……」
「キャッ! ……うふふっ」
「愛梨、愛してるよ」
「私も…… 愛してるよ、シュウ」
◇
シュウと再び愛し合うことが出来た。
嬉しくて嬉しくて…… 涙が止まらなくて大変だった。
そして毎日のように求めてくれて、汚れていると感じていた身体は、隅々までシュウが綺麗にしてくれた…… そんな風に感じ、私は今…… 幸せな気持ちで心が満たされている。
ああ、やっぱり…… 凄いなぁ、シュウは。
私がどこに触れて欲しいのか分かるのかな? それにとてもとても大事に扱ってくれて…… しかもそれなのに凄くて、いつも何度も私を気持ち良く、満たしてくれて…… うふふっ。
あんな自分勝手で乱暴にするんじゃなくて……
……ダメだよ私、あんなのと比べちゃダメ。
シュウ…… ごめんね?
私はずっとシュウのしか欲しくなかったの。
あの時は弱さでおかしくなってたんだと今なら分かる。
だから…… もし、求めてくれるなら私はいつだって、何度だって……
シュウ…… 愛してる……
ありがとう、私を見捨てないでくれて……
一生をかけて償うから……
だから…… ずっとそばに…… 居させて欲しいな。
ああっ! うふふっ、うん、いいよ……
シュウの好きなだけ……
◇
「ねぇねぇ!」
「なぁに?」
「パパとママっていっつもラブラブだよね!」
「うふふっ…… そう…… かなぁ?」
「うん! いっつもイチャイチャしてる! 娘の私が見ていても恥ずかしいくらい! ねぇ、パパとママって昔からずっとラブラブなの?」
「…………」
「ああ、パパとママはずーっとラブラブだったんだぞ!」
「あっ! パパ! おかえり! やっぱりそうだったんだ!」
「うふふっ…… おかえりなさい」
「ただいま! 腹減ったー! ママ、今日の晩御飯は?」
「うふふっ、今日はオムライスだよ、
「うん! ママがパパはオムライスが好きだって言ってたから、ママと頑張って作ったの! しかも大盛りだよ!」
「そうか! それは楽しみだなー! ありがとな、梨々華、ママ」
「うふふっ、どういたしまして」
「えへへっ! 早く食べよー?」
…………
「……おっ、梨々華はもう寝たのか?」
「うん、今日は遠足だったから疲れたんじゃないかなぁ?」
「そうか…… なあ、愛梨」
「……なぁに? シュウ」
「久しぶりに愛梨の作ったあの動画…… 見たいな」
「あれ? 恥ずかしいなぁ…… うん、ちょっと待ってて」
そして二人で寄り添いながらパソコンの画面を眺め…… 動画が再生された。
久しぶりに見たな、愛梨の作った動画…… やっぱり…… 綺麗だな。
桜の花びらが綺麗に舞い、ピンクの花びらが徐々に黄色に変わりひまわりへ、そして眩しいギラギラとした夏の太陽がやがて赤く染まり紅葉へと、その紅葉はヒラヒラと空へ舞い上がって消えていくと、やがて空から白い雪が降ってきて…… また最初に戻る。
この映像に合わせるように、愛梨との様々な思い出が頭の中を駆け巡る。
「愛梨……」
「シュウ…… うふふっ」
この動画のように…… 何度も移り変わる季節を……
これからもずっと…… 愛梨と共に見て乗り越えて生きていきたい。
何度生まれ変わっても…… 愛梨と一緒に。
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