再び恋人~結婚、そして…… 2

 プロポーズをして、お互いの親に報告してから入籍した。


 愛梨の母親は泣いて喜んで『娘をよろしくお願いします』と言ってくれて、俺の両親は何故か愛梨に感謝していた。

『シュウを選んでくれてありがとう』と言われ、愛梨が返事に困っていたのは少し面白かったな。


 もちろんリキや小吉達にも結婚を報告し、再び集まる約束もした。


「……一生大事にするね! ペンダントと一緒に」


 愛梨と一緒に結婚指輪を買いに行き、お揃いの物がまた一つ増えた。


 本当なら俺が一人で結婚指輪を買ってプレゼントしようと思ったのだが、さすがは愛梨というか……


『結婚指輪を買うつもりなら一緒に行くからね! これからの生活にお金がかかるんだから、きっとシュウのことだから無駄に高い物を選ぶつもりだったんでしょ?』


 と、ジュエリーショップで商売上手な店員のお姉さんに少し高めな指輪をおすすめされていたのを見抜かれてしまった。


 結果、愛梨が気に入った物を買えてよかったんだが、やっぱり愛梨にサプライズはできそうにないと改めて思った。


 結婚式は…… 小さな教会で家族だけで挙げ、その後リキ達と合同で結婚を祝うパーティーをした。


「……美鳥ちゃん、大丈夫かな?」


「体調不良でお休みしてるんでしょ? 心配だね」


 リキと小葉紅さん、小吉と大沢さん以外にもう一人、仲の良かった高校の同級生がいたのだが、連絡を取れそうになかったので今回は諦めたのだが、みんなでお互いを祝い、成人式とは違い、俺と愛梨は心から楽しめたパーティーになったと思う。


 そして結婚による色々な手続きも終わらせて、俺達はようやく落ち着いて夫婦生活を始められるようになった。


 あと、とりあえず収入が安定するまでは子供を作らないと決め、仲良くする時はちゃんと避妊をするようにしていた。


『それに…… シュウとの新婚生活も楽しみたいしね! うふふっ』


 新婚旅行は夢の国で楽しみ、ちょっとお高いホテルに泊まって夜も楽しんだ。


 それからお互いに支え合いながら協力し、時に喧嘩しては仲直りして、またイチャイチャしながら楽しく暮らしていた。




 そして三年……



「シューウっ! うふふっ」


「どうした? ご機嫌だな!」


「ちょっとね? うふふっ、大きな仕事を依頼されちゃった!」


「大きな仕事?」


「うん! あの有名な配信者さんのMV《ミュージックビデオ》の動画製作を頼まれちゃったの! うふふっ、有名だから受ければ次の仕事にも繋がるかもしれないよ」


「凄いな! さすが愛梨、天才! ブラボー!」


「もう! 止めてよー、うふふっ、何だか懐かしいやりとりだね」


 ははっ、覚えていたのか、映像の事はよく分からないけど、愛梨がこんなに興奮してるんだ、本当に凄い事なんだろう。


「それでね? 来週の木曜日、担当の人が打ち合わせをしたいって言うから、ちょっと出掛けてくるね!」


「ああ、分かった、頑張れよ」


「うん! うふふっ、ねぇ、シュウ…… 生活も安定してきたし、そろそろいいかなぁーって思うんだけど」


 俺も個人だが工務店の社長として収入も安定してきたし、愛梨の稼ぎもあってだいぶ貯金も作れている。


 そうか、そろそろ…… いいよな?


「じゃあ、愛梨が良いなら頑張ってみるか? 愛梨が一番大変だろうしな」


「やった! じゃあこの仕事が終わったら…… うふふっ」


 そう言って愛梨は俺に抱き着いてきて……


「その前に…… 練習しない?」


 練習って…… まあ、可愛いお嫁さんに誘われたら断る訳はないんだがな。


「……きゃっ!」


「じゃあ早速練習だ!」


 そして愛梨をお姫さま抱っこして、寝室へと向かった。



 …………



「おかえり! 打ち合わせどうだった?」


「……うん、良い感じ、だったよ」


「……何かあったのか?」


「……ううん、慣れない事をしたからちょっと疲れちゃって、うふふっ」


 打ち合わせに行った後から、愛梨は何となく元気がないように感じていた。


「ちょっと…… やっぱり有名な人だからプレッシャーが……」


 そう言いながら髪を触る愛梨……


「疲れたから今日は先に寝るね?」


 たまに見せるぎこちない笑顔……


「打ち合わせが長引いて…… ご飯食べてきちゃった」


 そして……


「シュウ…… 愛してる……」


 打ち合わせがあった週末はいつも以上に求められることが増え……



『大沢探偵事務所』


 気付けば浮気調査を依頼していて……



「奥様のお相手は澤田冬矢さわだとうやさん、二十四歳、映像クリエイターとしてテレビ局の映像製作やアーティストのMV《ミュージックビデオ》などを手掛けていて、それで専門学校に在学中、奥様とお付き合いしていたみたいです」


 疑惑は確信に変わり、更に知らない情報によりショックを受け、調査資料を受け取ってから…… 記憶が曖昧になっていた。


 ずっとペンダントをしていたと聞いていたから、てっきり…… いや、愛梨は専門学校時代の話をあまりしたがらないのは気になっていたが、そういうことだったのか。


 そして後日、追加の調査結果があると呼び出され……


「これはご主人に言っていいものか分かりませんが、奥様の行動の原因かもしれないですので…… 一応伝えておきます」


 …………


「うちの調査員が映像製作会社の社員に聞き込みをして調査した結果、奥様のお相手の澤田さん…… 実は四ヶ月前にその会社を退職されたみたいなんです、それでその退職理由が……」


 …………


「シュウ? 実は高校時代の同級生と旅行したいんだけど…… あっ、女の子だよ? 美鳥みどりちゃんって覚えてる? あの子に誘われて、あと美鳥ちゃんの友達二人とあわせて四人で三泊四日の旅行なんだけど…… 良い?」


 …………


『…………愛してるっ!! ……愛してるぅぅっ!!』


 ……愛 ……梨


 ……愛、梨


 ……愛梨 ……愛梨


「え…… り……」


「……シュウ!? シュウ!」


 目を開けると、そこには愛梨がいた。

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