恋人時代 (シュウ 高校生) 1

「あっ、おはよ!」


「悪い、待たせたな、じゃあ行くか」


「うん! あのね、昨日の夜……」


 学校がある日はほぼ毎日待ち合わせをして、手を繋ぎ登校していた。


 付き合い始めてもうすぐ一年、俺達は高校生二年生になっていた。


 お互いの呼び方も名前に変わり、自分で言うのも恥ずかしいが当時はかなりバカップルっぽかったと思う。


 元々クラスは別だったが、一年の時に色々あり、一クラス減ったことにより、愛梨と一緒のクラスになれた。


 なのでクラスでも常に一緒。

 愛梨とは他愛のない話をして二人で盛り上がったり、軽くスキンシップを取ったりと、クラス公認のバカップルだった。


 そして夏休みが終わり、二学期になったある日……


「シュウ…… 今日ね、お母さんおでかけするんだって」


 周囲を見渡しを誰もいないことを確認してから、俺に耳打ちをする愛梨……


 付き合って一年以上経ち、思春期真っ只中の俺達だ…… そういう事だってもう済ませている。


 あの時のことははっきりと覚えている。

 一年生の冬休み、俺の家で遊んでいた時にお互いの初めてを捧げ合った。


 まあ、それからは…… 一度知ってしまった欲って抑えるのは難しいよな? ……うん、ハマってしまったと言っていいくらい…… 仲良くしていたな。


 それだけじゃなく、週末はデートしたり、一緒に勉強したりと健全な恋人らしい事だってしてたからな?


 それに愛梨はどんどん可愛くなって、中学時代の地味で暗そうな感じも無くなり、特にセミロングのちょっと目元が隠れた地味な髪型から、セミロングのサイドが少しフワッとして前髪が短めの目元がハッキリ見える髪型に変えたことにより、かなり印象が変わったと思う。


 とにかく、愛梨と毎日のように一緒に居るのが楽しかった。


「じゃあ…… 遊びに行ってもいいか?」


「うん…… ふふっ」


 放課後の秘密の約束をした俺達は、誰にも見られないよう、こっそりと机の下で手を繋いで…… 愛梨のおかげで毎日が充実して楽しい高校生活を送っていた。


 俺はそんな愛梨のために、夏休みに親父の手伝いをしてコツコツ貯めたお金でプレゼントを買おうとしていた。


 今年の夏休みは毎日のように親父が経営する工務店で雑用、仕事終わりに愛梨と遊んではいたがあまり時間を作れず、遠出したりも出来なかった。


 だから今度の休みには愛梨とデートして…… プレゼントの目星は付けているのであとは愛梨を連れていくだけ。


「……どうしたの、シュウ?」


 俺が考え事をしている様子を繋いでいる手をニギニギとしながら不思議そうな顔で見つめる愛梨。


 あまりの可愛さに抱き締めてしまいたくなるが、教室なので我慢……


「いや、愛梨は可愛いなぁーって思ってたんだよ」


 うん、間違いではないよな? 


「やだぁー、ふふっ、ありがと! シュウもカッコいいよ」


 そして見つめ合う二人はそのまま顔を近付けて……


「……またやってるぞ、アイツら」


りき、ほっといてやれよ、いつものことだろ?」


小吉しょうきち…… はぁ、お前も人のこと言えないもんな」


 ……友達に見られている! 危ない、ついキスをしてしまう所だった。


「んーっ…… シュウ……」


 コラッ、続けようとするな! ……続きは後で、な?


「ふふっ、楽しみにしてるね」


 そんな感じで、俺達はごく普通のバカップルだった。




 ◇



 週末のデート、俺は愛梨の家まで迎えに行き、電車に乗ってとある場所に来ていた。


「ねぇ、どこに連れて行ってくれるの?」


 電車を降り、手を繋いで街を歩いていると、愛梨が不安そうな顔で聞いてきた。


 今日の愛梨は襟が袖の先にかけて少し膨らんでいる、レースが付いた白いシャツを膝くらいまでの長さの黒いスカートの中に入れた服装で、小さなベージュのショルダーバッグを斜め掛けしている。


 可愛いけど、シャツをインして斜め掛け…… 立派なお胸様が強調されてけしからんな! うん、立派だ……


「……こっちの方って、大人のホテル街がある方だよね ……駄目だよ、私達高校生なんだから」


 歩いている場所と俺の視線の先にあるものに警戒したのか、お胸様を隠すように背を向ける仕草をする。


「あははっ、違うから安心して」


 行ってはみたいけど行けないし、目的地も紛らわしい場所にあるから仕方ないんだよ。


「……シュウはエッチだから信用できませーん、うふふっ」


「……いやぁ、愛梨ほどではないよ、あははっ」


「もう! シュウのバカ! ……シュウのせいだもん」


 確かに最初の頃はあまりだったけど、段々慣れてきたのか最近は積極的で…… お互いに凝り性というかハマったらとことんってタイプだから、色々話し合って試したりと、お互いを高め合うように…… って何を言ってるんだ、俺! 

 ……あっ、確かあそこの店って言ってたよな。


「アクセサリーショップ『アンバー』? 今日の目的地ってここ?」


「ああ、そうだよ、もしかして愛梨はあっちの方を期待していたのか?」


「ち、違うよ! ……あっちは大人になってから!」


 大人になったら行きたいと…… 覚えておこう。


「この店、リキから紹介されたんだよ、ほら、リキが付き合ってる年上の彼女の……」


「ああっ! そういえば大庭竹おおばたけくんの彼女さんがお店を開いたって言ってたね」


「そうそう、それでせっかくだから俺達でお揃いのアクセサリーをオーダーメイドで作って貰おうかなって思ってさ」


「えぇっ!? で、でも、オーダーメイドだと高いんじゃ……」


「だから夏休みに親父の手伝いをしてたんだよ、愛梨にプレゼントするために」


「シュウ……」


「とにかく、約束の時間になるから入ろう」


「う、うん……」


 

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